この厳寒の中に春のきざしを見つけた。1月24日にふきのとうを摘み、ふきのとう味噌を作った。作るのはたいがい2月下旬だが、ことしは一カ月も早かった。ふきのとう味噌は酒のつまみに、晩酌の締めの熱いご飯にもってこいだ。毎年作る。作るのを楽しみにしている。
わが家のふきのとうが地上に顔を出していた。膨らんでいた。今年はやけに早いなと思いながら、頭はすぐにふきのとう味噌を作れと命じている。しかし庭のふきのとうはほんのちょっとしかない。それならといつもの秘密の場所に行ってみることにした。ポケットにはビニールの袋をしのばせて。ここでもふきのとうがすでに顔を出していた。土の中に爪を立ててちぎり取った。爪は土だらけになった。すべて苞がかたく結んでいるものばかり。上等である。
ふきのとうは取ったらすぐに調理しなければならない。その夜に台所に立つ。洗って、次に傷んだ葉を除いて計量してみると130グラム。細かく刻み、油でさっと炒め、そこに清酒、みりん、味噌、砂糖を加えて水気を飛ばしていく。味を見ながら自分の好みに。
これを瓶に詰めて冷蔵庫に入れる。一日置いて味がなじむのを待つ。ちびちび食べる。できれば1週間ぐらいで食べ切るぐらいがいい。香りは新鮮なほうが立つ。いちどに多く作らないで、こまめに作る。しかしふきのとうが取れるのは短い期間だ。作れるのはせいぜい2、3回といったところか。どうしてもいうなら冷凍保存できる。でもやはり新しいほうがうまい、と私は思う。
ふきのとうはまだかと、ふだんから意識していないとその存在なんて気がつかない。気をつけていないと口に入らないままま季節はあっというまに通り過ぎてしまう。ほん一瞬の季節の贈りものだ。ふきのとう味噌を食べながら、その香りが春の到来の間もないことを知らせてくれる。そんな思いにさせてくるのがなんともうれしいのである。