バイユー ゲイト 不定期日刊『南風』

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長谷川vsモンティエル、まさに歴史的な一夜でした!!

2010-05-06 | ボクシング

いささか旧聞に属するのかもしれませんが…僕の中ではまだまだ昨日のことのように色あせません。
日本プロボクシングの歴史上最も重要な試合のひとつであったWBC世界バンタム級チャンピオン長谷川穂積vsWBO世界バンタム級チャンピオンフェルナンド・モンティエル戦。

あの日僕は緊張感で空気が薄く感じられるような武道館の最上段に座っていました。

とにかく凄いものを観た!というそのひと言に尽きると思います。

100430vs

試合前、武道館の外に掲げられた看板を写真に収める人並みから滲み出る緊張感とも高揚感とも言い難い熱気。そしてあの満員の武道館。すべてが世の少数派とも言われる熱心なボクシングファン、そして関係者にとって夢に思い描いた光景でした。あの息詰るような緊張感。アメリカ、ラスベガス等衛星中継の向こう側にしかなかった世界が目の前に広がっていました。
100430vs_2 特別にラスベガスに負けないような装飾やセットがあったわけでも、凄い演出があったわけでもありません。日本ボクシング界が世界に誇れるようなレベルのチャンピオンを2名揃えられたこと、そして来日した世界的ビッグネームの強豪選手。彼らの存在だけで、あの海の向こうの光景が武道館に出現したのです。長谷川選手と西岡選手に感謝、そしてこの2王者が同時に君臨する偶然に感謝せずにはおれませんでした。

試合、どのくらいの人が観たのでしょう…。観た方は明らかにボクシングの世界トップレベルの攻防というものに衝撃を受けたことだと思います。スピードと距離感で試合を支配しつつあった長谷川選手。その相手に傾きつつあった均衡から僅か数秒で試合を終らせたモンティエル選手。武道館のお客さんは文句なく堪能しました。探り合い、つばぜり合いを息を呑んで見守り。ラウンド終了ごとに感嘆の溜め息を漏らし、そして割れんばかりの拍手で応える。激しい打ち合いが見られないとすぐにブーブー唸るラスベガスのギャンブル客よりもずっと純度の高いボクシング会場だったと思います。

一瞬で長谷川選手が敗れるという衝撃的な結末に静まりかえった場内でしたが、暫くするとなんとも言えない充足感が漂ってきました。顎の骨折という深いダメージにも拘らずコーナー下でリングに礼をして去って行く、潔い長谷川陣営。ショックの中でもモンティエルを称える観客。。。そしてビッグマッチ直後の武道館の余韻に深い感動を覚えました。
ここ数年、素晴らしいチャンピオンが存在しながら(徳山、長谷川、西岡)わけのわからないボクシングモドキとその周辺の諸々にばかり注目が集まり、正直暗澹たる気分になったりもしていましたがこの日ばかりはボクシングファンは(長谷川選手が敗れたとはいえ)幸せな時間を過ごしました。

長谷川選手、身体のダメージが大事なければ…是非ここから、日本のボクサーが足を踏み入れたことのない更なる高みを目指して頂きたいと思います。通常なら、命を落とす恐れもあるボクシングゆえ、ひと区切りついたばかりのボクサーに次を期待したりはしないのですが、長谷川選手にはせずにはおれません。それくらいに可能性のある選手だと思います。

そして西岡選手。かっこいいところを見せてくれてありがとう。
隣に座っていた男性二人組が試合前に「西岡はルックスがいいんでなんとなく好きじゃないんだよなー」「そうそうなんかかっこつけだしな」「長谷川の方が男としては応援したくなるよ」などと話していたのですが…。
KO勝ち後のインタヴューの最後、今後は?と聞かれて「ここで満足せず(国外のファンでも知っているような)世界のニシオカを目指してやっていきます!」と応えるとふたりは大拍手。最後に、風邪で会場に来られなかった娘さんに向け「治ったら一緒にボラ公園行こな!」と笑顔で語りかけて勝利者インタヴューを締めくくったら「かっこいい。。。」と唸っていました。確かにカッコよかった!
でも僕はそんな格好良さに以前から気づいていました♪
あれは長谷川選手が名王者ウィラポンを倒して世界王者となった翌日の西岡選手のHP。ウィラポンに4度挑戦して4度失敗。引退すら囁かれていた西岡選手が、旧知の後輩にあっさりと目標を倒されてどんなコメントをと思ったのですが…日頃のクールな態度とビッグマウス(世界チャンピオンになんかなって当然、等)と一転。
「長谷川、凄い!おめでとう!まいりました。しかし!俺の立場はどうなんねん(笑)~中略~でもまだまだやる。俺には俺の道があるー」
文章はうろ覚えですがこんな感じ。
西岡カッコイイな!と思ったものでした。しかし直後にHPも閉鎖され試合も少なくなり、限界説をいろいろなところで目にするようになりました。
…あれから5年。この日長谷川選手とビッグマッチの舞台を作り上げ、そして見事な勝利を納めたことは本当に感慨深いことです。凄い男ですね。

Vs_2 日本のプロボクシングがこれを機会に良い方向に向かっていきますように…。