「お金のことは心配しなくていいから、とにかくカードをすぐキャンセルした方がいい。カードの連絡先分かる?」と言われ、「分からない」、と泣きそうになって言った。どうやって連絡先を見つければいいのか?小野さんに「保険には入ってないの?」と言われ、ひらめいた。 いつもは入らない海外旅行者保険だが、今回はスキーをするし、HISの担当者が熱心に勧めるので5千円払って入っておいたのだった。保険会社の緊急連絡先だったらある。
小野さんの携帯電話を借りて祈るような気持ちでかけてみた。お願いかかって(祈)。 かかったー、日本人のオペレーターだ。事情を説明したら、すぐにニュージーランドからアクセスできるカード会社のフリーダイヤルを教えてくれた。あー、すばらしい。保険に入っておいて良かった。小野さんが居てくれて携帯を持っていてくれて良かった。少し光が見えてきたぞ。
ここでようやく頼んだチキンサンドイッチとワインに気がついた。いつ運ばれてきたのかも気づかなかった。あまりにも喉が渇いていたので、とりあえずワインを飲んで少し落ち着くことにした。
まずセゾンカードに電話した。日本人のオペレーターにすぐつながり、慣れた口調で名前、生年月日、住所、電話番号を確認して、本人であることを確認。この間約30秒ぐらい。早い!その後、意外なことをオペレーターが言った。
「お客様はカードを5枚持っていらっしゃいますが、どのカードを失くされたのですか?」
「はっ、5枚?5枚も持っているんですか?」
「はい、5枚持っていらっしゃいます。」 全く検討がつかずきつねにつままれている私。
「ちなみに何を持っているか教えてもらえますか?」
「はい、まず西友カード」 あー、三軒茶屋に住んでいた時に駅前の西友で作ったカードだ。
「それからパルコカード」 思い出した、十年以上前にパルコで買い物した時に勧められてそう言えば作ったっけ。
「無印良品カード」 これもセゾングループなんだ。
「東宝シネマカード」 はいはい、六本木ヒルズで働いていた時に映画館のカードを確かに作りましたよ。
「それからセゾンカード」
はぁー、感服しました。まさかクライストチャーチで自分が作ったカードの履歴を教えられるとは思わなかった。すごいな、セゾンカード。完璧です。日本の国民年金もカード会社に管理させれば世界に自慢できるシステムが作れるんじゃないかと思うのですが、社会保険庁の皆様どうでしょうか?
「最後に使ったのは成田空港のDuty Free になっていますが間違いないでしょうか?」
「はい、間違いございません」
「それ以降の利用はありませんので、では解約します。はい、解約しました。」 とりあえず一安心の私。
「再発行は希望されますか?」と続けて言われ、もはやセゾンカードの魔力に取りつかれ信奉者となった私は言われるがまま。
「はい、お願いします。」
「それでは、再発行して新しいカードをご自宅に1週間以内に送らせていただきます。カード番号が新しくなりますので、カード引き落としされている、スカパーとファイバービットへは新しいカード番号を知らせてください。では引き続き楽しいご旅行をお続けください。」
完璧です。文句のつけようがありません。電話を切ってからも、ボーっと感動している私に、小野さんも「すごいね」と賞賛の声。日本のカード会社の実力の高さって、世界にも誇れるんじゃないかと思いました。帰国してポストの中で発見したのは郵便局の再配達のお知らせ。もう既に再発行されたカードが届けられていて、私のお財布の中には新しいカードが収まっています。これからもよろしく、セゾンカード様。
次に電話したもう一つのカード会社で私はますますセゾンカードの実力の高さを知ることになる。
つづく
クライストチャーチに着き、Baggage Claim に向かって歩いていたら、ふいに小野さんが目の前に現れた。「キャー、小野さん、小野さん、元気だった!会えて嬉しい!来ちゃったよ、クライストチャーチ!」とすっかり興奮気味の私に対し、ちょっと引き気味の小野さん。クライストチャーチで見る小野さんは、以前と同じ黒髪ロングヘアーでキリリと引き締まった顔立ち。カッコイイ!小野さんに会えてすっかり気を許している私を諭すように、「荷物はどこ?」と冷静に言われ、我に返った。
もう既に12時を回っていたため、空港のバーでランチを食べようと言うことになり、2階のバーに向かった。壁に掛かっているメニューは結構ヘビーなものが多く、食べたいものがなかなか決められない。サラダにしようかチキンサンドイッチにしようか、悩みながらもチキンサンドイッチを頼んだ。合わせてワインも飲んじゃおうっと。
「お金持っている?」と小野さんに言われ、「成田で両替したから大丈夫」と言って、カバンの中のお財布を探した。荷物が満載のリュックの中に手を突っ込んでみるがお財布が見つからない。えっ、そんなはずはない。大丈夫、冷静にちゃんと探せばあるはず、あるはず、あるはず、あるはず。。。。。えっ、まじ、ない!だんだん顔が青ざめてきた。小野さんが様子を察して「どうしたの?」と聞いてきた。「えー、あのー、お財布がー、まさかー、えー、ない?」もはやしどろもどろ状態。頭の中が真っ白でパニック。そんなはずは、そんなはずは、と頭の中で繰り返しながら、荷物を全部テーブルの上に出してみた。ない!もはや疑いようのない事実。ないものはない。呼吸が苦しくなってきて、どうしよう、どうしようが頭の中でグルグル巻きになって何も考えられなくなった。
小野さんに「とりあえず落ち着いて。お財布には何が入っていたの?」と言われ、「キャッシュとクレジットカードが2枚」。その時気づいた、オークランドのCafeで旅行用のお財布にキャッシュとカードを移したことを。あそこだ、あそこに置いてきてしまったんだ。何たる失態!やってしまった。茫然自失になり、喉がカラカラになってきた。この先どうしよう。。。。
つづく
今の会社に転職してから、一人で海外出張することが増えたので、行ったことのない空港に一人で降り立つのは慣れてはいるが、やはりいつも緊張するもの。回りの人と足並み揃えてさも知っているかのようにスタスタ歩きながらもサインの確認に余念がない。
入国審査を受け、Baggage Claim でスーツケースをPick Up して、クライストチャーチ行きの国内線に再度チェックインして、ようやく一安心。オークランドの空港は国際線と国内線のターミナルが分かれているのでシャトルバスに乗れと言われ、外のバス停に行ってみた。寒い!ようやくニュージーランドが冬であることを実感。
一台が来たが、inter transfer ではなさそうだったのでとりあえず見送ってみた。だがそれからさっぱりバスが来なくなってしまい、だんだん不安に。あれっ、さっきのバス?それとも待っている場所が違う?もう一回聞いてこようかなと思っていたら、「日本の人ですか?」と日本人に声掛けられた。「はい、日本人です」って言いながら変な会話をしている自分に苦笑。彼女もバスが来ないことを不安に思っていたようで「ここでいいんですよね?」と私に確認してどうすると思ったけど、「多分いいと思うんですけど」って知らない二人が不安を慰めあうような会話をしていたらやっとバスが来た。inter transfer bus なのに20分間隔でしか運行しないなんて不便極まりない。羽田だったら5分間隔ぐらいなのにと思ったけど、ここで日本と比べても仕方ない。ここはニュージーランド!
Boarding Time まで1時間弱あることが分かり、空港内の本屋をのぞいてみた。げっ、本が高い。普通のPaperback が30$以上する。入り口のビジネス書のコーナーにロバートキヨサキのRich Dad Poor Dad が平置きされているのを発見。金持ちになりたいという思想は世界共通の言語なんだなと思ったのと同時に、ロバートキヨサキって一体どれだけ儲けているんだ。すごい。
海外の空港に行くとなぜか必ずサングラス屋があるような気がする。これってサングラスを「あっ、うっかり忘れてきちゃった」っていう人のためのものなのか、それとも旅行に行く時は空港でサングラスを買うっていう文化があるのか、私にとっては謎。誰か教えてください。
まだ時間があるのでCafe に入ってカプチーノをオーダーして初めてのNZ$使ってみた。日本円にして350円ぐらい。空いているCafeで、みんな静かに飲んだり食事
したりしている。冬なので着ているものも黒っぽい感じで、どことなーくローカルな雰囲気。ビジネススーツを着た人が居ない。朝だから静かなのかなぁ、それともニュージーランドの人っておとなしいのかななんて思いながら、そうだNZ$を別のお財布に入れ替えよう、クレジットカードも移しておこう、せっかく時間があるから気づいたことをノートに書いて、なんて事をしながら電光掲示板を見たらまだ時間がある。でももうそろそろ行こうかなと思ってはたと気づいた。あれっ、まだセキュリティー通ってない。混んでいたらどうしよう、ゲートが遠かったらどうしよう。急に気がそぞろになってCafe を出てセキュリティーに一目散したものの、ガラガラであっという間に通過。搭乗ゲートも目の前。なんだ、こんな小さな空港だったのか。あせって損した。
空港の待合室から見える空は今にも泣き出しそうな空模様。でも遠くの方は晴れ間が見えるから回復するかなと思いながら、トイレに行き戻ってきたらドシャ降りになっていた。そうか、これがニュージーランドの天候なんだ。
飛行機に乗ったら隣が日本人の女性だった。名古屋から一人で来てツアーに参加するらしい。もう既に寂しいと言っていて、なんだか本当に寂しそうだった。飲み物のサービスが来たので、「オレンジジュース」って言ったら、「水かコーヒー、紅茶しかない」って言われた。えっまじ。随分コスト抑えてるなぁ。
そうこうしながら1時間半のフライトを終え、クライストチャーチに無事着陸。小野さん迎えに来てくれてるかな。
この時私はまだトラブルに気づいてない。
つづく
今日からニュージーランド旅行記を毎日少しづつUPしていきます!
6月29日(土)東京は曇り空の中、NZに向かって意気揚揚と私の旅が始まりました。
夕方のフライトだったため、12時までにパッキングを済ませ、それから日用品の買い物に出かけ、戻ってきて2時20分にはタクシーを拾って品川駅に行けば余裕で成田エクスプレスに乗れるとゆるーい計画を立てたのですが、いつものようにパッキングしながら掃除したり、洋服の整理を始めたりと余計な事をいろいろやってしまったため、パッキング終了12時の予定が、あれっもう1時。でもまだ余裕があるから大丈夫と買い物に出かけ、戻ってきたらもう2時過ぎ。だんだんヤバくなってきたぞと焦りながら、忘れ物がないか確認して、戸締りして、路上に出たらタクシーがなかなか来ない。タクシーに乗ったら今度は道が混んでいる。あー、マーフィーの法則だ。ここで慌てても仕方ないと妙に冷静を保った声でドライバーに「2時45分までに品川駅に着きますか?」と聞いたら「まぁ何とかなるでしょう」と言われたが全然安心できない状況。でもきっと大丈夫と声を押し殺して冷静にしてたら、その緊迫感が伝わったのだと思うけど、ドライバーのおっちゃんが頑張ってくれて、無事45分に到着。あー、間に合った。ほらね、やっぱり日頃の行いがいいからちゃんと到着できたと、自分の無計画さは反省せずに常にポジティブ。No Problem at all !!
成田エクスプレスに久しぶりに乗ってみて、あれっ、いつの間に向かい合わせの4人掛けシートから2人掛けに変わったの?座ってみて実感、最初から2人掛けにしておくべきだったよ。全くの赤の他人と向かい合っての1時間、居心地がいいと思った人は果たして居たのでしょうか?
久し振りの第2ターミナルでやっぱりどうしても寄ってしまう免税店。魅力的ですよねぇ、Duty Freeの赤と黒のロゴ。香水と化粧品の匂いにむせ返りながらも、どうしても必要なわけじゃないけど、「せっかくだし」っていう訳のわからない理由をつけてちょっとだけお買いもの。
さぁ、もうゲートに行った方がいいなと向かった先に何やら行列を見つけてしまい、一瞬見なかったことにしようと思ったが、えっまさか、この女子高生集団、もしかしてニュージーランドに行くの?瞬きを数回して振り払おうとしたけど、200名ぐらいの女子高生が私のゲートの前に並んでいるのは紛れもない事実。この集団とこの先10時間一緒!と思っただけでどっと疲れが押し寄せてきた。それにしても今時の高校生って修学旅行にニュージーランド!?信じられない。私なんて会津磐梯山だったのに。
New Zealand Airline は予想外に快適、シートもいいし、映画も充実している。女子高生もちゃんとおとなしくしている。うん、いい感じ。でも期待していた機内ショッピングがなかった。というか行く前から何が買いたいの、私?
見たかったBuckets list が見れた。お涙頂戴ものではなく、コミカルだけど人間の心理をついている描写があってちょっと考えちゃった。奥さんに「行かないで」と言われても、「最後ぐらい自分のために生きさせてくれ」という気持ち、人間は生きていく上ではいろんなことを我慢しなきゃいけないけど、最後は我慢できないというのはきっとそうなんだろうなと思った。それから邦画「チーム・バチスタ」を見た。これ結構面白い。吉川晃司ってミュージシャンより俳優の方がいいんじゃないの?
10時間半の長時間フライトは案外快適に過ごすことが出来たが、私はこのあと訪れるトラブルをまだ知らない。
つづく