バスは丘を尾根伝いに港に向かって走っていった。結構なカーブの道を運転しながらも、おっちゃんはずっとしゃべり続けていた。アメリカ人のお母さんはおっちゃんの話し相手になっているが、高校生の娘さんは超おとなしくて、ほとんど何もしゃべらず、写真ばかり撮っていた。こんなシャイなアメリカ人もいるのね。小野さんが「フランスでワインの勉強がしたい」と言った時だけ、「私もフランスに行きたいの」と目を輝かせていた。可愛い!
ずっときれいな景色が続いていたのだが、バスの中から撮った写真はこんなのばっかりになってしまった。残念。小野さんが隣で、「天気が良ければね」とずっと言っていた。天気のいい時のクライストチャーチを見せたかったんだろうな。私も見たかった! 次回は夏がいいな。
天気はさえなかったけど、一応クライストチャーチの主要なポイントは見て回り、あちこちに普通に羊が群れている光景を自然に眺めながら、また元の大聖堂に戻って来た。おっちゃんに「ありがとう」と言い、アメリカ人母娘に「明日またクィーンズタウンで会うかもね」と言い、バンを降りた。
さあ、どうしようか。とりあえず目の前にある大聖堂の中に入ってみようという事になった。だってこれがクライストチャーチの目玉商品だしね。驚いたことに小野さんも今回が初めて中に入るらしい。えー!?
大聖堂の中では特に礼拝が行われているわけではなく、観光客がゆっくり展示物を見たり、写真を撮ったり、椅子に座って休憩したりしていた。天井は木組みが施されており、そのせいか質素なんだけどあったかい感じがした。
出口付近で塔へ登る入口を発見。好奇心旺盛な私は、乗り気じゃない小野さんを無理矢理説得して、チケットを買う事に成功。入口を管理しているおばさんにチケットを渡すと、塔に登る扉を開けてくれた。「行ってらっしゃい」という声とともに中に入って階段を目にしてすぐに後悔した。おばさんが扉を閉める前に、「ちょっと待って、何段あるの?」と聞いたら、「150段よ」と涼しい顔で言われ扉を閉められた。ヤラレタ!
螺旋階段というか塔の先端まで真っ直ぐ伸びた鉄柱の回りをグルグル回りながら、「今何段?」「まだ?」「あとどれぐらい?」とか意味のない事を言い続けてようやく展望室に到着!きっと素晴らしい景色が広がっているはず……
うーん、はっきり言って微妙。この労働が報われたと言う実感には程遠いなぁ。東西南北に出口があって一応全部チェックしたけど、どれもイマイチなんだよなぁ。高さが中途半端なのかなぁ。「登ったけど大した事ないってことを経験したことが大事だよね」と小野さんと納得し合って、「さっ、帰ろう」と、とっとと降りたのでした。あー、足が疲れた。
この後ショッピングに行き、私達の長い夜はまだまだ続くのである。
つづく