FBI秘録

2012-08-28 15:15:45 | 日記

ロナルド・ケスラー著  原書房刊

本書には、日本ではあまり知られていないエピソードがたくさん掲載されているが、読みどころは唯ひとつである。
犯罪を追う組織といえども、その長官が誰でも正義感に溢れた進取の気概に富む人物とは限らないということである。教養・思想・人格・女房(何故かアメリカにはこれが多い。大統領を筆頭に官邸や部下が女房に振り回された例は多い)、そして、官僚主義(FBIの存在理由とは無関係に、出世スゴロクの上がりだとしか思っていない)次第では、全く機能しないどころか組織の存続すら危ういことさえあった。
本書で一番驚かされるのは、9・11のテロ事件である。この時点でFBIのIT関連はお粗末極まり、インターネットですら使いこなせていなかったらしい。というか、コンピュータシステムそのものが民間のレベルから数世代も古いものだった。それもこれも、偏に長官の運営方針(というか、長官のIТ音痴)の結果だった。
本書は、組織の長たる人間はどのような資質を持っていなければならないかを教えてくれる。我々日本人も、ついこの間検察庁の偏見に満ちた組織運営を目の当たりしたばかりだ。対岸の火事と傍観しているわけにはいかない。