ネアンデルタール人 奇跡の再発見

2012-08-15 08:12:39 | 日記

小野 昭著  朝日新聞出版刊

ちょっと興奮する本。ネアンデルタール人の骨が発見されたのは1856年。しかし、その出土地点は産業革命期石灰岩採掘でまった真っ平され、正確な位置は失われてしまった。それから143年後、ふたりのドイツ人科学者によって再発見されたのである。しかも、そこから発見された人骨3点が、1856年に発見された人骨の欠けた部分にピッタリと接合したのである。そう、正に奇跡と言うしかない。
ところで、ふたりがこれほど苦労して出土地点を探したのか(本書を読んでください)、それは例の日本人の「神の手」を持つとかいう似非考古学者の偽装事件が原因になっている。化石はどの地層から発見されたか、付随して発見された石器や植物の種子によって正確な時代を特定するものである。これがないと、所謂「伝……」となってしまう。
成果はこればかりではない。ほかに二体分のネアンデルタール人の骨も発見したのである。これでネアンデルタール人が集団で暮らしていたことも分かったのだ。
いずれ二人の著書が翻訳されると思うが、ぜひ読みたい。
この過程で、思わぬ成果もあった。当然人骨の特定にはDNA分析も行われたのだが、1997年のミトコンドリアDNAの塩基配列分析では、ネアンデルタール人と現生人類は遺伝的には無関係、つまりネアンデルタール人は現生人類への遺伝に寄与することなく絶滅したという結果だった。ところが、2010年にクロアチアで発見されたネアンデルタール人の人骨の核DNA分析では、全ゲノム配列によればアフリカを除く現代人のゲノムの1~4パーセントはネアンデルタール人との交雑の結果を示しているという。
つまり、また新しい問題が提起されたのである。ネッ、かなり熱くなる話でしょう! 久しぶりで興味深々でページを捲りましたよ!