江戸の天才数学者 ー世界を驚かせた和算家たちー

2012-08-10 08:13:46 | 日記

鳴海 風著  新潮選書

ここに挙げられた八人の和算家、吉田光由・渋川春海・関 孝和・建部賢弘・有馬頼ゆき・会田安明・山口 和・小野友五郎の内、何人知っているだろうか? 私が初めて聞く遊歴算家という和算家の山口 和だった。小野友五郎は良く知っていた積もりだったが、勝海舟の海援隊絡みであって、和算家としての前半生は初めて知った。
それにしても、である。200年余に及ぶ鎖国時代にあったにも拘らず和算の世界ではベルヌーイ数の発見(関 孝和)、円周率自乗の公式(オイラーより15年早い。しかも小数点以下、下41桁の正しい結果)などを解明していたのだ。使える道具は筆と墨、定規、そして算盤だけである。考えてもみて欲しい。円周率を出すために円に内接する正多角形を描く作業を。どれほどの時間がかかったことか(江戸初期の和算家・村松重清は正38、2768角形を描き、小数点以下21桁まで計算した。実際は小数点以下7桁まで正確だった)。
こうしたことが実現したのは、専門家だけでなく素人も和算に興味を持っていたからだ。それを可能にしたのが、「読み・書き・算盤」を広めた寺子屋の存在であった。
翻って現代を考えると、算盤塾が廃れたのと、電卓の蔓延が問題なのかも知れない。端的に言って、今の子供達の数学力の低下はここにあるのではないか。歴史に学ぶべきかもしれない。