宇宙はなぜこんなにうまくできているのか

2012-02-18 15:43:27 | 日記

村山 斉著  集英社インターナショナル刊

宇宙物理学に関して、今まで読んだ本の中では一番分かり易い本かもしれない。逆説的に言うと、私がこれまで読んだ本の混乱状態を、大まかな粗筋で整理してくれた本だと言ってもいい。
勿論、ニュートンの万有引力の法則も、アインシュタインの一般相対性理論や特殊相対性理論、ケプラーの法則も避けることは出来ないが、小難しい数式も理論も出て来ない。「要するに、こういうことなんです」と言った調子。しかし、近年話題になっている暗黒物質「ブラックマター」についても、ちゃんと説明されている。
ビビらないで読んだほうがいい。宇宙物理学の全体像を知るには恰好の本。
一筆啓上。著者は例え話がもの凄く上手い。銀河の中心から我々の太陽系の位置を表現するのに、「人口過密都市から遠く離れた郊外にある新興住宅地」という具合。こんな喩えには、お目にかかった事がない。

 

 

 

 

 

 


われ敗れたり

2012-02-18 08:42:52 | 日記

米長邦雄著  中央公論社刊

永世棋聖・米長邦雄が将棋コンピュータソフト「ボンクラーズ」と対戦した、対戦録。対戦したのは今年の1月14日、本書が発売されたのが2月10日。異例の早さだと言っていい。それだけに生々しい、臨場感に溢れた内容になっている。
本書を読んで、私は二つのことに気がついた。但し、将棋戦の中味をコメントするのは私の手に余るので詳しくは触れない。
米長氏は、初手でコンピュータを混乱させる作戦を採った。これは、多少でもコンピュータを知っている私には納得出来た。初手のパターンはそれほど多くはない筈だからだ。素人の私は角道を開けるか、飛車先の歩を一手進めるかくらいしか知らない。パターンが少ない(それに持駒がない)ということは、コンピュータにインプットされていない、つまり定跡ではない一手を指すとコンピュータはどう反応するか。無視するか、相手が間違っていて自分が有利になったと判断するかではないか? 
後手の米長氏の初手は、6二玉だつた。このような手はこれまでの手合いではなかつたそうだ。但し、これが奇手なのか、妙手なのかは私には分からない。ただ、このことは、過去の日定跡の集合体であるコンピュータソフトでは対応できなかった、ということを意味しているのではないだろうか。
もうひとつ。ソフトの開発者の話によると、コンピュータに「構想力(想像力?)」を持たせるのはたいへん難しいそうだ。つまり、米長氏は「序盤で混乱させて、相手を自分の陣地に誘う」という戦略(構想)を立てていた。一方、コンピュータはその場その場で最善の手を考えていた。ここに、将棋ソフトの弱点がありそうだ。
将棋好きの人にはとても面白い本だと思う。巻末に「自戦解説」が載っているので、棋譜を参考に実践してみることも出来る。