ヒューマン  なぜヒトは人間になれたのか

2012-02-14 14:53:22 | 日記

NHKスペシャル取材班  角川書店刊

ユニークな企画である。いわゆる人類史ではなく「人類の『心』の進化史」を辿ろうというのである。原始共同体を営んでいた紀元前の人々と、現代に生きる我々の「心」では進化があったのか? という視点は面白い。
しかし、である。「心は化石としては残っていない」。心の進化を、考古学のように人骨や遺跡から実証することは出来ない。ここにアプローチの難しさがある。
ひとつだけ例を挙げる。弓矢(飛び道具全般と考えてもいい)の発明である。遠くから忍び寄って獲物を狩るには、画期的な武器だった。槍で獲物を倒す危険性から退避し、共同体を養い、人口を増やすのに成功した。しかし、何時からかその矢は同胞である人間に向けられ、殺人の道具になった。ココに人間の「心」のどんな飛躍があったのだろうか? 人類は様々な発明をしてきた。しかし、この例のようにどのような発明にも功罪二面性があった。
例えば、貨幣。貨幣は人種や国境を飛び越え、世界的な価値観の共通性を創出した。しかし、一方で金を貯めるということが第一義となり、かつて共同体に普遍的に存在した「助け合い」という観念を破壊した。「地球温暖化」問題。依然としてアメリカや中国は批准していない。
本書に結論はない。結論は、我々自身が出すものなのだ。
「人間とは?」「人間の心とは?」「人間の心は『進化』したのか?」 深遠で大きなテーマが答えを出せずに漂っている。どうすればいい?