ファインマンさんの流儀

2012-02-01 15:18:22 | 日記

ローレンス・M・クラウス著  早川書房刊

リチャード・ファインマンについて邦訳された本は何冊かあるが、多くはエピソードが中心の人物論だった。本書は、ファインマンの物理学の進展を、発表された理論を中心に彼の生涯を辿った本。著者は現役の宇宙物理学者(アリゾナ州立大学の<オリジン>プロジェクト長)で、学部学生時代にファインマンに二度ほど教えを乞うたことがあるそうだ(物理学者は一度ファインマンに面会しただけでも何らかの啓示を受けたそうで、二度も直接議論を交わしたのは実に幸運だつたと言っている。そして一種の自慢でもあるらしい)、その記述は非常に分かり易い。
「わかり易い」と書いたが、ファインマン物理がすんなりと分かったという意味ではない。ファインマンがひとつの理論から次から次へとジャンプしていくプロセスと動機が分かり易く書いてある、という意味である。
原書には注がまったくないそうである。それでも素人がなんとか読めたのは、訳者に負う所が多い。訳者の吉田三知世氏は京都大学物理系出身の人。素人に分かりにくい用語・理論には訳注を付けていてくれる。これに救われた。
読了した時、ファインマンが今日の物理学にどれほど大きな影響を与えたがよく分かる。彼の偉大な発見は、「信じ難いほどの勤勉と、尽きることのないエネルギーと、頑なまでに筋を通す態度が、抜群の頭脳と結びついた結果の産物だったのである」。
どうやら、天は場合によっては一人の人間に二物も三物も与えるらしい。