東大夢教授

2011-08-15 15:09:36 | 日記
遠藤秀紀著  リトルモア刊

著者は東京大学総合研究博物館教授。専門は遺体解剖学。難しいことは何も書いていない。多少専門的な部分もあるが、素人にもわかり易い説明が付されているから大丈夫。その部分は、それなりに初めて聞く話なので面白く、私としてはもう少し書き込んで欲しかったとさえ思っている。
むしろ、本文はユーモアに満ちており、話も専門分野だけでなく、著者が鉄道マニアであり、第二次世界大戦中の日本の戦闘機マニアであり、映画・アニメのマニアであることもあって、話の展開は目まぐるしくとても楽しい。
ただ、この饒舌な文章に託された著者の真意を読み取るのが、読者の務めであろう。
大学はどうあるべきなのか、博物館は本来どういう存在であればいいのか(最近読んだ大英博物館の話を思い出してしまった)、教師とは本来どういう態度で学生に接するべきなのか、学生は大学にどんな目的で入学したのか。腰巻のコピー「拝金の大学も洟垂れの学生も、知の鉄槌を食らうがよい!」こそ、著者の本音に違いない。
今の大学が法人になった悪影響が、諧謔を交えてつぶさに紹介され、読んでいて腹が立つ。かつての大学の良さを沁々と有り難く思えた次第。
著者の饒舌は照れ隠しなのだ。というか、こういう書き方しか真意を表す手段がなかったのだろう。著者は最近の大学の先生に比べて、恐らく真面目で誠実な先生なのだろう。研究室に所属する大学院生は幸せだと思う。どうか、自棄を起こさず踏み止まってほしいと心から思う。