なぜヒトは旅をするのか  -人類だけにそなわった冒険心ー

2011-08-13 15:06:29 | 日記
榎本知郎著  DOJIN SENSHO刊

本書をを読むには前提条件がある。「人」ではない。「ヒト科ヒト」あくまでも生物学から見た「ヒト」であること。そして「旅」。タンチョウヅルやガンも数千キロを旅するが、これはA地点からB地点への渡りであり、しかも行く先も戻る地点も決まっている。サケやウナギも同じように長距離を回遊するが、鳥と同じ。
つまり、ヒトだけが、自分の生活圏から他のヒトの生活圏へと旅し、再び元の生活圏に戻り、しかも違和感なく受け入れられる。ここでの大きなポイントは他の生活圏を訪れても「殺されず」に、しかも「食事の提供を受け、宿を提供され、時に恵みを与えられる」。他の生き物ではどうだろうか。縄張りに侵入したものはまず間違いなく殺される。
要するに「殺される危険性の心配」することなしに旅をするのは、ヒト科ヒトだけにしか見られない行動なのである。こうした行動がヒトの進化のどの段階で生まれたのか?これが本書の主題。面白い。
著者はキーワードは「許容」だと言う。見知らぬ土地でも中立的で対等にコミュニケーションできる能力(私にはちょっと茫漠すぎてしっくり来ないが、かと言ってそれ以外のキーワードも思いつかないのだが)。
おそらく、常に飢えにさらされ、危険と背中合わせだったグレートジャニー(人類の大移動)のプロセスの中で刷り込まれた「脅怖」と「敢えて敵対しない有利さ」を身に付けた結果だと思うのだが、どうだろうか?
かなり端折ったが、詳しくは本書を。しかし、「ヒトだけが旅をする。どうしてか?」と言うのがテーマになるとは思ってもいなかった。