江戸という幻景

2011-08-05 15:18:01 | 日記
渡辺京二著  弦書房刊

本書で、著者は何かを主張したり、正そうとしている訳ではない。ただ「江戸時代って、今まで言われているような社会ではなく、人間味に溢れていて、少々変人・奇人でも面白がって許している社会」だったんだと、言ってみれば礼賛しているかのように思える。
勿論、正すところは正している。例えば「三行半」。これまでは意に染まない女房をおっ放り出す亭主の特権かのように思われていたが、実は「この女人は、もう私とは関係ありません。今後の彼女の行動にいちゃもんはつけません」という証明書のようなもので、離婚した女房が再婚する自由を保障する意味を持っていた。当然、夫を見限った女房が他人を介して「三行半」を夫に要請することもあったらしい。
理屈なし、偏見なしで江戸時代を楽しむ本。できればこの夏、冷酒をそばにおいて「へぇー、そうだったんだ! そんなことありだったの?」と、独り言を呟きながら読んでみたい本。