あるニヒリストの思考

日々の思いを綴る

愛国心が高じると戦争になる(自我その38)

2019-02-21 15:22:52 | 思想
人間が何かになるということは、他者からそれが認められ、自分自身も自分はそれだと自覚した時に、初めて成立する。それが自我の誕生である。例えば、山田一郎が歌手になったということは、世間から歌手だと認められ、自分自身も自分が歌手だと思うようになったということである。つまり、彼が歌手という自我を持ったということである。人間は、何かにならなければ、感動もせず、希望も懐かず、行動もできない動物である。逆に言えば、人間は、何かにならなければ、心が傷付くこともなく、絶望することもなく、常軌を逸したことを行うこともないのである。山田一郎は歌手になったから、脚光を浴びるという歌手としての感動を味わい、レコード大賞を受賞するという希望を懐き、舞台で歌うことができるのである。そして、歌手になったから、CDが売れないと傷心し、歌手としてやっていけないと絶望し、マネージャーに深夜に電話し泣き言を言ったりするのである。これが人間の「対他存在」の現象である。つまり、「対他存在」とは、人間が、何かになっている時、その何かになっている自分に対して、他者から高く評価されたいという思いが存在し、その思いが叶うように行動する、人間のあり方である。だから、逆に、他者から低く評価されたり、罵倒されたりすると、心が傷付き、どのように行動して良いかわからなくなるのである。「対他存在」は主体は他者にある。他者の思いに一喜一憂し、他者の視線を気にして行動するからである。この時、人間に自制心があり、自らの常軌を逸した行動を抑圧する。人間は、本質的に欲望の動物である、深層心理が、いろいろな欲望を生み出してくる。今すぐ寝たい、テレビを見たい、ケーキを食べたい、仲間と話したいから、罵倒したい、殴りたい、抱きたい、殺したいまで生み出してくる。我々は、他者の思いや視線を考慮して、その欲望の中から取捨選択して、自らの行動を決定しているのである。つまり、「対他存在」の監視の下で、欲望の選択をし、行動を決定しているのである。しかし、時には、人間は「対他存在の」抑圧が外れることがある。それは、他者の思いや視線が気にならなくなった状態にある時である。今の安倍政権は、大衆の支持率が高いということで、大衆の思いや視線が気にならなくなり、自らの深層心理の言う欲望のままに、韓国や中国や北朝鮮に対して、喧嘩腰の外交を行っているのである。また、日本人という自我を持っている人は、皆、日本人として、他者である世界中の人から高く評価されたいという思いがある。だから、日本人は、皆、ワールドカップやオリンピックで、日本チームや日本人選手を応援するのである。これぐらいならば、「対他存在」の抑圧は働く必要の無い行為であり、どの国民も行っていることである。しかし、ネット右翼や読売新聞や産経新聞が、韓国や中国や北朝鮮に対して集中攻撃を浴びせているとなると見過ごすことはでない。確かに、日本人であるから、韓国や中国や北朝鮮より高く評価されたいという気持ちは理解できる。しかし、彼らは、譲歩無く、一方的に、韓国や中国や北朝鮮を非難しているばかりなのである。韓国人、中国人、朝鮮人の思いや視線を一顧だに考慮していないのである。確かに、私も、決して、韓国や中国や北朝鮮の政治体制は良いとは思わない。しかし、現在の安倍政権やをネット右翼や読売新聞や産経新聞を聞いていると、韓国や中国や北朝鮮と戦火を交えても構わないと言っているように聞こえてくるのである。彼らが頼りにしているのは、日米安保条約を基点としてのアメリカである。彼らは、日米同盟とよく言う。しかし、日米関係は同盟ではない。主従関係である。言うまでもなく、アメリカが主人で、日本は家来である。アメリカ軍は、日本に無許可で入ることができ、日本のどこでも基地を作ることができ、どこでもいつでも軍用機を飛ばすことができ、どこでもいつでも軍事訓練ができ、どの基地でも核兵器を保管でき、どの港でもいつでも核兵器を持ち込め、日本のどの基地からでもいつでも外国へ攻撃機を飛ばすことができる。日本におけるアメリカ軍の軍事費の七割を日本が負担している。毎月二回、アメリカ軍幹部と日本の高級官僚が、日米合同会議を開いて、アメリカ軍の要望を日本側が聞いて、後に日本が実行している。そして、この会議の内容を国会に報告する義務もなく、国民に報告すする義務もない。このような一国に圧倒的に不利な条約は世界に存在しない。もしも、日本人としての自我を満足させたいのならば、アメリカ支配から脱することではないのか。日米安保条約でも、どちらかの国が条約を破棄すると通告すれば、一年後には、この条約は効力を失うと記してある。日本人の覚悟次第である。韓国や中国や北朝鮮と対抗するためのアメリカとの隷従関係を解消すべきである。日米安保条約を破棄し、真に対等な条約を結ぶべきである。それであれば、日米同盟と言えるだろう。また、韓国や中国や北朝鮮には、日本に侵略された苦しい過去がある。国土を失い、何百万もの国民が殺された。従軍慰安婦や徴用工はその氷山の一角に過ぎない。韓国人、中国人、朝鮮人の深層心理には、常に、日本への復讐の欲望があるはずである。それを起こしてはならない。それを蘇らせてはいけない。いざ戦争となると、韓国人、朝鮮人は、国を失っても、最後まで戦うだろう。中国人は、戦局が不利になると、核兵器を使うだろう。日本人の多くは、戦争になると、アメリカが助けてくれると信じている。しかし、日米安保条約には、日本が侵略されたら、アメリカは、国会の議題に上げるが、決して、助けると記していない。考えてみれば良い。どこの国の民衆や大統領や首相や国会議員が、自国の利益にならないのに、大切な自国の兵士の命を危険にさらすようなことをするか。日本人はお人好しなのである。世間知らずなのである。太平洋戦争中、大人でも多くは、戦局が不利になると神風が吹いて日本を助けてくれると本気で思っていたのである。戦後はアメリカである。神風は吹かず、アメリカは助けてくれない。よく、韓国や中国や北朝鮮に理解を示した政治家が現れると、土下座外交と言って、ネット右翼や読売新聞や産経新聞や週刊文春や週刊新潮が非難する。土下座外交、良いではないか。首相や国会議員が、膝を折って対話して、自国民を戦火にさらさないようにすることは最高の外交戦略ではないか。