おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

みんなのいえ

2023-04-21 08:16:03 | 映画
「みんなのいえ」 2001年 日本


監督 三谷幸喜
出演 唐沢寿明 田中邦衛 田中直樹 八木亜希子 伊原剛志 白井晃
   八名信夫 江幡高志 井上昭文 榎木兵衛 松山照夫 松本幸次郎
   野際陽子 吉村実子 清水ミチコ 山寺宏一 中井貴一 布施明
   近藤芳正 梶原善 戸田恵子 梅野康靖 小日向文世 松重豊
   佐藤仁美 明石家さんま

ストーリー
飯島直介(田中直樹)はバラエティ番組を手がける放送作家である。
妻民子(八木亜希子)との仲は睦まじく、二人は新居を建てることにした。
民子の提案で、設計を彼女の後輩で建築デザイナーの柳沢(唐沢寿明)に依頼する。
そして、施工を大工の棟梁である父長一郎(田中邦衛)に頼むことにした。
しかし、フランク・ロイド・ライトなどモダニズム建築を志向する新進気鋭のインテリア・デザイナー柳沢に対し、日本の在来工法でしか家を建てられないと言い張る長一郎。
おしゃれで開放感溢れるアメリカ建築をデザインする柳沢と、とにかく頑丈な和風建築を建てようとする長一郎は対立を始めてしまう。
ドアを外開きか内開きにするかでさえ、激しく対立する。
直介はどちらかの依頼を取り下げようと試みるが、柳沢の腕力の強さに怖がり、舅には面子をつぶさないように言われ、失敗する。
結局、柳沢が匙を投げる形で建築が進められるが両者の対立は解消したわけではない。
そんな中、大嵐が発生し、長一郎が念のため建築現場を見に行くと、柳沢も見に来る。
そこで直介も現場に行くことにするが、帰り道の柳沢の車と鉢合わせとなり、柳沢の車が横転。
積んでいた200万円相当のバロック式の家具が壊れてしまい、依頼主から修復を頼まれていた家具が完全に壊れて途方にくれる柳沢。
直介は長一郎に家具の修理を懇願。
壊れた家具を見た長一郎は家具の修復を決意し「昔も今も職人の考えることは同じだ」と言い、修復してしまう。
完成するころには両者は和解していたのだった。
飯島夫妻の家は無事完成するが、はたしてその出来映えは…。


寸評
脇役人がスゴイ。
しかもそれぞれがいい味を出している。
いわゆる芸達者な役者の面々にたいして、新築の家を建てる主人公の夫婦がお笑いコンビ、ココリコの田中直紀と元アナウンサーの八木亜希子の言わばその道の素人である。
実際、彼らの芝居は上手いとはいえず素人芝居の域を出ていない。
ところがその素人さが、新進気鋭らしく論理を振りまく唐沢寿明と、頑固な職人集団の棟梁である田中邦衛の間で右往左往する様子にピタリとはまっている。
特に八木亜希子は中々のものであった。

脇役たちを列挙すると、両家の母親が野際陽子と吉村実子で、野際陽子はキャバレーのマダムらしいのだが風水に凝っていて、これがひと悶着に一役買っている。
オープニングは何かよくわからないシーン。
中井貴一が中井貴一として登場しているのだが、どうやら直介が書いている作品の主演俳優の様だ。
彼の住むマンションの通路で繰り広げられるドタバタ劇は大した意味はなく宙に浮いている。
堀ノ内の布施明は「ラヂオの時間」に続いて同じ役で登場。
バーの客では常連の戸田恵子や梅野康靖に交じってイラストレイターの和田誠もいた。
バーテンダーはなんと真田広之。
棟梁の取り巻き大工には八名信夫などのバイプレイヤーがずらりと並ぶ。
その他にも、ココリコの遠藤章造、明石家さんま、香取慎吾、小日向文世、松重豊、清水ミチコなどなどがちょっとしたエピソードに登場していて、その存在を発見するのも楽しみ方の一つかもしれない。

ただ話はマイホーム建設にあたって設計者と大工が対立するというだけのもので、そこに特段の目新しさの様なものは見受けられず、映画的な興奮は生じなかった。
テレビドラマで十分な内容で物足りなさを感じる。
真田広之のバーテンが気に入らないカクテルを「自分の問題ですから」と言って何回も作り直す姿を見て、柳沢は塗料を壁にぶちまけるが、そこからの展開がないから一体あれは何だったのかと思ってしまう。
玄関のドアが外開きか内開きかに始まって、寸法がインチか寸かでもめたり、家の間取りや使用する照明器具のことでもめたりするのだが、それもなんだか迫力不足。
前作「ラヂオの時間」のハチャメチャぶりを見ているだけにちょっとガッカリ。

直介は義父の長一郎と柳沢が仲良くなっていくことに嫉妬を覚えるが、いっそ民子が柳沢と出来てしまって、彼を新しい婿養子に迎えるぐらいのぶっ壊しがあっても良かったのでは…。
それに切れた直介が、出来上がった新築の家に火をつけるとか…。
それだと喜劇がシリアスドラマになってしまうか……。
やはり喜劇はシリアスドラマより難しいのかもしれない。