「み」は2020/4/25の「ミクロの決死圏」から「ミスティック・リバー」「水の声を聞く」「水の中のナイフ」「道」「未知との遭遇」「ミッション」「ミッドナイト・イン・パリ」「宮本武蔵 一乗寺の決斗」「ミリオンダラー・ベイビー」に続いて、
2021/12/3の「ミシシッピー・バーニング」から「味園ユニバース」「乱れ雲」「乱れる」「ミッシング」「ミッドナイト・ラン」「蜜蜂と遠雷」「緑の光線」「ミニヴァー夫人」「身代金」「ミュンヘン」「ミンボーの女」まででした。
今回はそれ以外の作品を紹介します。
「ミケランジェロの暗号」 2010年 オーストリア
監督 ヴォルフガング・ムルンベルガー
出演 モーリッツ・ブライブトロイ ゲオルク・フリードリヒ
ウーズラ・シュトラウス マルト・ケラー ウーヴェ・ボーム
ウド・ザメル ライナー・ボック メラーブ・ニニッゼ
カール・フィッシャー クリストフ・ルーザー
ストーリー
ドイツのポーランド侵攻を翌年に控えた1938年、オーストリアのウィーン。
画廊を営むユダヤ人一族のカウフマン家は、ムッソリーニも欲しがるという国宝級の逸品、ミケランジェロの素描を隠し持っていた。
ある日、息子のヴィクトル・カウフマン(モーリッツ・ブライブトロイ)は、兄弟同然に育った使用人の息子ルディ・スメカル(ゲオルク・フリードリヒ)と久々の再会を果した際、その絵の隠し場所を教えてしまう。
しかし、ナチスに傾倒していたスメカルは昇進を狙ってそのことを密告、一家は絵を奪われ収容所へと送られる。
一方、ナチスは絵を取引の材料にイタリアと優位な条約を結ぼうとするが、奪った絵が贋作であることが発覚。
本物の絵をどこかに隠した一家の父ヤーコブ(ウド・ザメル)はすでに収容所で死亡、だが彼は息子に謎のメッセージを残していた。
ヴィクトルは絵の在りかも分からぬまま、母ハンナ(マルト・ケラー)の命を救うためナチスを相手に危険な駆け引きに出る。
恋人レナ(ウーズラ・シュトラウス)を巻き込んだ彼の作戦は成功するのか、そしてミケランジェロの絵はどこにあるのか…。
寸評
実によくできた脚本で、立場がころころ変わる展開をテンポよく見せるサスペンス映画でありながら、どこか喜劇的な滑稽さを兼ね備え、よくあるナチス映画と違ってナチスを小馬鹿にしたような作りが、肩をこらさず観客を画面に引きずり込んでいく。
本物のありかは容易に想像がつくが、それをものともしない切れ味のよさがあった。
サスペンス映画の常套とはいえ、間一髪のところで何度も局面が展開したり、とっさの判断でピンチを切り抜けるなどの処理も無駄がなく息つかせない。
その間の会話も小気味良かった。
ルディ・スメカルはカウフマン家の使用人の息子であるが、亡くなっている使用人もルディも家族同様に過ごしていたらしく、二人は幼なじみである。
しかし、戦争と人種の違いが二人を対決へと向かわせてしまう。
それなのに、全編を通じてヴィクトルとルディは憎み合っていないという雰囲気を映し出し、父も母もルディを許しているように思えるのがこの映画に可笑しさと同時に余韻を醸し出している。
ラストシーンはその象徴で、こちらも思わずニコリとしてしまった。
したたかな父ヤーコブのウド・ザメルも適役だったが、母ハンナのマルト・ケラーが凛とした姿を見せてカウフマン家の女主人としての貫録を醸し出していた。
ナチスの非道さや人間の愚かさもあったが、家族愛、友情、恋人への愛などの人の持つ素晴らしい一面を感じた映画でもあった。
「ヒトラーの贋札」のスタッフが・・・と宣伝文句にあるが、僕の感性はこちらの作品のほうがマッチする。
ドイツ軍を小馬鹿にした作風のせいか、ふと昔見た「サンタ・ビットリアの秘密」を思い出していた。
もっともこちらはもっとコメディ・タッチだったけれど。