おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

サイコ

2021-02-24 08:32:00 | 映画
今日から第1弾が2019年6月19日だった「さ」になります。
「さ」の追加シリーズです。

「サイコ」 1960年


監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 アンソニー・パーキンス
   ジャネット・リー
   ジョン・ギャヴィン
   ヴェラ・マイルズ
   マーティン・バルサム
   サイモン・オークランド

ストーリー
アリゾナ州の小さな町ファーベルの不動産会社に勤めているマリオン・クレーンは隣町で雑貨屋をひらいているサム・ルーミスと婚約していたが、サムが別れた妻に多額の慰謝料を支払っているために結婚できないでいた。
土曜の午後、銀行に会社の金4万ドルを収めに行ったマリオンは、この金があればサムと結婚できるという考えに負けて隣町へ車で逃げた。
夜になって雨が降って来たので郊外の旧街道にあるモーテルに宿を求めたマリオンは、モーテルを経営するノーマン・ベイツに食事を誘われた。
ノーマンは母親と2人でモーテルに接続している古めかしい邸宅に住んでいて、頭が良く神経質で母親の影響を強くうけていた。
ノーマンが1号室にマリオンを訪れた時、彼女は浴槽の中で血まみれになって死んでいた。
ノーマンは殺人狂の母親の仕業と見て4万ドルともどもに裏の沼に沈めた。
銀行に4万ドルが入ってないのを知った会社は、私立探偵アポガストにマリオンの足取りを洗わせていた。
マリオンの妹ライラは姉がサムの家に行ったと思いサムを尋ねてきたところ、探偵のミルトンもやってきて、2人ともサムの家にマリオンがやってきていないことを知った。
アポガストはファーベル町とサムの家の間にモーテルがあることを知り、それを調べに出た。
そこでマリオンが確かにモーテルに寄ったということを知った。
これから母親と会うという電話がアポガストからサムにかけられてきたが、アポガストは消息を絶ってしまった。
アポガストの連絡を待つサムとライラの2人は町のシェリフのチェンバースを訪れ意外なことを聞かされた。
ノーマンの母親は10年前に死んでこの世にはいないというのだ。
そうすると、マリオンが見た母親、アポガストが電話で伝えた母親とは――2人はモーテルに馳けつけた。
サムがノーマンをフロントに引き寄せておく作戦に、ライラはモーテルから屋敷へと忍び込んだ。


寸評
この映画は記念碑的な作品である。
作品の質以上にサイコ作品の原型となったからである。
この映画によって「サイコ」という言葉は日本を含む世界中に広まり、「精神異常」「多重人格」という意味を持つようになったのだ。
その異常精神を題材に各種の作品が制作され、時にサイコスリラーと呼ばれたり、時にサイコサスペンスと呼ばれる作品が存在したし、サイコホラーとうたわれた作品もあった。
反社会的な性格で、猟奇殺人もしくは快楽殺人を繰り返す殺人者であるサイコキラーを描いたものもある。
いずれにせよ、この作品によってサイコという言葉は一般的なものになった。

アンソニー・パーキンスが二重人格者であるノーマン・ベイツを演じているのだが、その演技力でというより、この作品でノーマン・ベイツを演じたということで、アンソニー・パーキンスは映画史の中にも、僕の中にも名を留めることになったのだと思う。
『友情ある説得』や『さよならをもう一度』もかれの代表作なのだろうが、作品的に劣る本作の印象の方が強い。

前半はマリオン(ジャネット・リー)という女性の逃避行が描かれる。
彼女は4万ドルという大金を横領しているため、途中で警官に不審がられる経緯もスリリングに描かれている。
警官は横領事件のことを知らないが、マリオンの挙動に疑問を抱き後をつけてくるのだが、特に強権的な尋問をするわけではない。
無言で不信感を表しているのだが、そのスタンスがサスペンス性を高めていたので、この警官の描き方は上手いと感じた。
やがてマリオンはモーテルに宿泊するが、そこで窓に映る女性の影を見、言い争いを聞く。
ノーマン(アンソニー・パーキンス)は一見好青年に見えたのだが、事務所の壁穴から1号室に案内したマリオンの姿をのぞき見する様子が描かれ、彼は普通の男ではなく、何かやらかしそうなことが分かる。
マリオンは過ちを犯したことを反省していて、「フェニックスに取り戻しに行く」という表現で会社に金を返す決意をしたことがうかがえるが、そこで事件が起きてしまう。
しかし、事件を起こしたのは母親の方で、ノーマンはそれを隠ぺいして調べに来た者たちをごまかすという展開になる。
ここからは登場人物が多様化して、妹のライラ(ヴェラ・マイルズ)や、探偵のアポガスト(マーティン・バルサム)などが登場し、マリオンの恋人であるサム(ジョン・ギャビン)も再登場してくる。
彼らが登場してくるテンポもよく、ストーリーが小気味よく運ばれていくので飽きることのない作品になっている。
モーテルのオーナーであるノーマンは隣接する古めかしい屋敷に住んでいるのだが、その屋敷が暗闇に浮かび作品の神秘性を出していた。
ライラはマリオンの滞在を彼女が記した計算メモで確信するが、内容からしてあのメモの大きさは小さすぎていないか? メモ内容をアップで出しても良かったと思う。
ヒッチコックはサスペンスを題材にした娯楽作品を数多く送り出した監督で、本作も記憶に残る一遍となっているが、二度見るとその評価が下がってしまう作品のように思う。