おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ゲッタウェイ

2021-02-03 07:54:04 | 映画
「ゲッタウェイ」 1972年 アメリカ


監督 サム・ペキンパー
出演 スティーヴ・マックィーン
   アリ・マッグロー
   ベン・ジョンソン
   アル・レッティエリ
   サリー・ストラザース
   スリム・ピケンズ

ストーリー
テキサスのサンダースン刑務所からドク・マッコイが出所した。
銀行強盗の罪で10年の刑に服していたのだが、4年間服役したところで突然釈放になったのだ。
彼は地方政界の実力者ベニヨンと取引を行い、出所と引き換えに町銀行を襲って奪った金を山分けすることになっていたのだ。
ドクを、愛する妻キャロルが待っていた。
やがて銀行襲撃の綿密な計画が立てられ、ベニヨンは2人の殺し屋、ルディとジャクソンを送り込んできた。
襲撃計画は成功したかのように思えたとき、ジャクソンが守衛の1人を射殺してしまった。
ドクの仕掛けた時限爆弾が爆発し、混乱に乗じてドクとキャロル、ルディとジャクソンは別々に逃走した。
その途中、ルディは足手まといのジャクソンを射殺し、車から放り出すと、落ち合いの場所に急行した。
ドクは、ルディが金を1人じめしようとしていることを知り、一瞬早く彼の胸板をぶち抜いた。
ドクはルディが動かなくなったのを見届けると、ベニヨンが待つ農場に向かった。
その場でベニヨンは、一介の囚人の出所にわざわざ手を貸したのは、魅力的なキャロルがいたればこそと言い、暗に彼女との情事をほのめかした。
その時、車で待っていたはずのキャロルがいつの間にか近づき、やにわにベニヨンを射殺したが、ベニヨンの言葉がドクに与えたショックは大きかった。
2人は駅のロッカーに金の入ったバッグを預けたが、鍵をすりかえられ、盗まれるというよきせぬアクシデントが起き、ドクの必死の探索で取り戻したものの、この1件でドクは指名手配の身となってしまう。
一方、ドクに撃たれたルディは命を取りとめ彼を追ってエル・パソに向かい、ベニヨン一味もエル・パソに迫った。


寸評
ドクはベニヨンの口利きで保釈されるのだが、その条件としてベニヨンが計画している銀行強盗を行い強奪金を山分けする約束がなされている。
その交渉をドクの妻であるキャロルが行うわけだが、その際に行われた行為が物語のバックボーンとして横たわっている。
服役中のドクの様子や、キャロルの行動などから二人は深く愛し合っていることが分かり、キャロルの行動も観客にとっては理解の内だ。
それをベニヨンを訪問した時のキャロルの服装や、ベニヨンの思わせぶりなセリフで我々に知らせている。
このことでギクシャクした関係を持ちながら、二人で逃亡を続けるのがメインのストーリーだ。

ドクが奪った金は50万ドルだったのに、報道では75万ドルと伝えられると言うカラクリが明らかになるのは一ひねり効いていた。
慎重なドクが防弾チョッキを身に着けて銀行強盗に出かけるのに対して、ルディはそんなものはいらないと言っていたことも伏線となっていた。
このルディのキャラクターは作品の中で目立っていて、医者夫婦を脅かして傷の治療を行うのだが、彼等に対する態度が可笑しく、医者の妻のバカぶりが輪をかける。

逃亡劇なので、思わぬ出来事が起きるのは必然の成り行きで、それが上手く描かれているかが作品の出来を左右するのは、この手の映画の宿命だ。
ペキンパーらしく上手く処理されていたと思う。
一つはジャクソンが守衛を殺してしまうことで、ジャクソンの軽薄さは事前に描かれていた。
さらに大きな出来事は、ベニヨンがキャロルによって射殺されることで、これが物語の大きな伏線だ。
そして奪った金の入ったバッグを詐欺師にだまし取られるくだりが続き飽きさせない。
指名されたドクの手配書が回り、身元がバレたドクが必死の逃亡劇を繰り広げるのは当然の成り行きとして観客を引き付け、ゴミ収集車の一件までの展開がスリリングだ。

最終局面は予想された通り、エル・パソのホテルでの銃撃戦だ。
ショットガンを手に入れたドクは警察との銃撃戦をくりぬけ、ホテルでルディやベニヨン一味と壮絶に撃ち合う。
「ワイルドバンチ」ほどの驚きはないが十分に堪能できる。
驚くのは銃撃戦よりも結末である。
銃撃戦を切り抜け、ドクとキャロルはトラックに乗り込んで逃亡するが、なぜかこのトラックの持ち主の老人はドク達に協力的だ。
生き生きとして「わしも警察は嫌いだ」との理由だけで逃亡を手助けしている。
ここで見せるキャロルの太っ腹も小気味いい。
その結果として、彼等の逃亡は成功するのだが、アメリカ映画で強盗犯の逃亡がかくも明確に成功するのは珍しく、悪事は成功裏に終わらないという鉄則が破られ、その結末は新鮮ですらある。
ペキンパーが「俺たちに明日はない」を描くとこうなるのかもしれない。