おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

恋するシャンソン

2021-02-06 11:15:57 | 映画
「こ」の第1弾として2019年5月20日から6月14日まで掲載しました。
今日から第2弾となります。

「恋するシャンソン」 1997年 フランス / スイス / イギリス


監督 アラン・レネ
出演 アンドレ・デュソリエ
   アニエス・ジャウィ
   サビーヌ・アゼマ
   ランベール・ウィルソン
   ジャン=ピエール・バクリ
   ピエール・アルディティ

ストーリー
不動産会社に勤めているシモンは、ツアー・ガイドのカミーユをひそかに愛している。
それで彼女に、自分はラジオドラマ作家をしていると嘘をついてしまった。
中世の農民騎士に関する論文を書いているカミーユは、不動産仲介業者のマルクに夢中である。
マルクはシモンの上司であり、カミーユの姉オディールにアパルトマンを売り付けようとしている。
オディールは夫クロードの無言の反対にもかかわらず、そのアパルトマンを買う決意をしている。
そんなオディールの前に、何年も音沙汰のなかった友人ニコラが現れる。
クロードは若い女性と浮気しているが、ニコラの存在に妻の心が揺れ動いていることに我慢できなかった。
ニコラは実はシモンの客で、近ごろは体の調子がおかしく毎日病院通い。
妻のジェーンともうまくいっていないが、見栄っ張りで、表向きは幸せな家族生活を装っている。
そしてオディールの新居での引っ越しパーティーの日、初めて全員が顔を合わせた。
クロードは来る前に愛人と別れており、妻オディールにも別れを告げるつもりだった。
そんな時、マルクとカミーユの仲に嫉妬するシモンが、マルクに彼は不良物件を売り付けたのだと非難した。
クロードがマルクを問い詰めると、言い逃れしながら退散するマルク。
クロードはオディールを慰め、ふたりの仲は戻った。
ニコラは携帯電話でイギリスの妻ジェーンとヨリを戻す。
シモンは鬱病に悩まされているカミーユを励まし、皆から嫌われてしまったマルクはひとり自分を嘆くのだった。


寸評
映画の冒頭でドイツ将校がいきなり女性歌手の声で歌い出すのを聴いたとき、なんておかしなミュージカルなんだと思ったのだが、正確に言えばこれはミュージカルではない。
普通の会話の途中で曲のフレーズに合わせて俳優たちが口パクするのだが、採用されている曲がブツ切り状態で終わってしまうので戸惑いが生じてしまう。
俳優自身の声が採用された曲のフレーズそのものに入れ代わってしまうため、男の声が女の声に、女の声が男の声に代わってしまうことも有るのだが、この唐突な歌のフレーズの挿入と消滅の ギクシャクしたリズムに乗れるかどうかが観客の支持と直結している。
多分フランス人には馴染みのある曲だったり、聞き覚えのあるメロディなのだろうが僕はほとんど初めて聞く曲で、シルビー・バルタンの歌う「アイドルを探せ」しか分からなかった。
それでもシャンソンが好きな僕は1フレーズだけでも結構楽しめた。
こういう形式で歌を使った映画は今までなかったように思う。
アラン・レネ75歳での作品だが、この新たな挑戦には驚かされたし、僕は受け入れることが出来た。

話を誰か一人に絞っているわけではないので少々まどろっこしいところがある。
オディールと愛人のいるクロードの夫婦には隙間風が吹いていて、クロードは妻が新居を買おうとしている事に対し、そんなに急いで決めなくても良いとアドバイスしている。
オディールは窓からの眺めが良いことで購入を決めているのだが、そのこととクロードの忠告がラストにつながる伏線となっている。
マルクとシモンが思いを寄せるのがオディールの妹であるカミーユだ。
マルクは父親から引き継いだ不動産会社の社長で、シモンはそこの社員で若くはない。
オディールの前に妻と上手くいっていない友人のニコラが現れ、オディールはニコラに気があるようだがカミーユは嫌悪感を抱く。
カミーユもニコラもシモンもうつ病を患っているらしい。
この人間関係が入り乱れていて、僕は状況把握に時間がかかってしまった。

オディールとクロードにカミーユ、マルクとシモン、ニコラとニコラの妻と7人の男女がそれぞれ男女間に生じる問題を繰り広げているのだが、アラン・レネの男女を見る目は時には厳しく、時には優しい。
最終的には男女を温かく見守っている。
クロードは夫婦関係を清算するつもりだったが、悲嘆にくれる自分を優しく慰めてくれたことでクロードを見直し、クロードも離婚を思いとどまっている。
カミーユはマルクの偽善に気付きシモンの優しさを感じている。
ニコラはイギリスにいる妻とヨリを戻しそうだ。
メデタシメデタシの結末なのだが、そこにはアラン・レネの登場人物への愛情を感じる。
ところで、ニコラがマルクから借りた携帯電話は一体どうなったのだろう。
借りっぱなしになってしまわないか?
そう言えば、クロードの愛人との一悶着は出てこなかったなあ。