おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

コンタクト

2021-02-23 09:02:00 | 映画
「コンタクト」 1997年 アメリカ


監督 ロバート・ゼメキス
出演 ジョディ・フォスター
   マシュー・マコノヒー
   ジョン・ハート
   ジェームズ・ウッズ
   トム・スケリット
   デヴィッド・モース

ストーリー
電波天文学者のエリーは、砂漠の電波天文台で観測中に、恒星ベガ付近から地球に向けて電波信号が発せられているのに気づく。
彼女は地球外生命体からのメッセージの探究をテーマに選び、大多数の科学者からの嘲笑や成功の確率の圧倒的な低さにも関わらず、何年も宇宙からの電波の観測を続けていた。
エリーが送られてくる電波信号を数字に変換すると、どこまでも続く素数の羅列になった。
これは、素数を理解するまでの水準に達した生物の住む惑星を探すため、何らかの知的存在が発したメッセージに違いなく、信号は単に素数を表しているだけでなく、複数の読み取り方ができることがわかった。
さらに世界中の国々が協力して解読を進めるうちに、驚くべき事実が判明。
メッセージには、乗員を宇宙へ運ぶことのできる宇宙間移動装置=ポッドの設計図が含まれていたのだ。
最初にメッセージを発見し、その後も解読の中心となってきたエリーだったが、彼女の功績を妬む科学者ドラムリンによって、科学調査班のリーダーの地位に彼女が適任かどうかを巡る争いが起こった。
彼女は国際的な影響力を持つ宗教学者で、政府の宗教顧問でもあるパーマー・ジョスに援護を求めた。
2人は、かつて愛し合った仲だったが、仕事第一のエリーのせいで、彼らの恋は短命に終わっていた。
宇宙に目を向けてきた科学者と、人間の内面に深く分け入ろうとする宗教学者、まったく異なる信念を持って生きてきた2人だが、メッセージを理解しようとする共通の情熱から新しい絆で結ばれ、改めて愛し合うようになる。


寸評
SF映画らしい綺麗な映像を随所に見せながら、現代を生きる我々に色々な問題提起をしていて、このような作品を撮らせると流石にアメリカ映画は上手い。
最初の方は宇宙人からのメッセージを捕らえようとする科学者たちの姿が描かれ、能書きの多い映画だなとの印象を持つが、話が進むにつれて徐々に面白さを増して引き込まれていく。

科学の発展は金銭的にも多くの無駄を発生させながら成し遂げてきていることが分かる。
エリー達が行っている研究は地球外の知的生物との交信というSF的なテーマである。
多くの研究がそうであるように莫大な資金と時間が費やされていく。
当然のように成果の見えない研究予算はカットされていく。
企業などのスポンサーがつく研究は恵まれた方なのだろうが、ここでも救世主的な人物が登場する。
ちょっとスーパンマン的であるが、功成り名遂げた人が死期を悟った時に思うことを示唆していたのかもしれない。
さらに組織における権力争い、功名心争いが加わって話が複雑な様相を見せてくる展開も飽きさせない。
アメリカ映画が時々用いる手法であるが、本物のクリントン大統領の映像をかぶせてリアル感をだしていく。
架空物語だと分かってはいるが、エイリアンや地球外生物が登場するわけではなく、ひたすらベガからの電波を解析する科学者たちの姿と、その情報をコントロールしようとする政府の思惑がぶつかって面白い展開を見せる。
その中心になるのがエリー・アロウェイ教授を演じるジョディ・フォスターで、証明できることしか信じない科学者が徐々に変化していく姿を好演していてキャスティングの妙が見える。
彼女は父親を愛していた事を問われ肯定すると、「証明できるのか」と問われる。
父を愛していたことは紛れもない事実だが、心の問題は証明することが出来ない。

そのことを提起するように科学と宗教の関係も観念的にならないように描かれている。
マシュー・マコノヒー演じる政府の宗教顧問は科学も宗教も真実を追求することでは一致していると答えている。
宗教の真実とは心の真実だろう。
科学と宗教は対立する言葉ではないのだと思う。
このテーマは重すぎて、十分に描き切れていたとは言い難い。
また、ベガから送られてきたメッセージを解読するくだりも少しあっけなく感じる。
エリーが見る海辺のシーンは美しい光景だが、ここでの盛り上がりは登場人物の割には欠けていたと思う。
登場させるのがあの人物でよかったのだろうか。
日本人にとっては、北海道が登場することは親近感をもたらせるが、人を出さないで下請け企業として貢献するという描き方は、カール・セーガンあるいはロバート・ゼメキスの日本観なのかもしれないが苦笑するしかない。
アニーが経験したと言い張ることは幻覚だと調査委員会で問い詰められるが、この場面はなかなか面白い。
これは人類への夢と警告を語ったスーパーマンの戯れだったのだとしても、随分と面白かったと思うのだが、大統領補佐官のような女性が漏らす言葉が余韻を残す。
宇宙における人類をしのぐ高等生物の存在を肯定しているようでもある。
宇宙の始まりはビッグ・バンだと言われても、その前はどうだったのかと思っている僕なのだが、無能で根性なしの僕はアニーにはなれない。