訪看さんのお世話になったあとで、私は昼食のテーブルに向かい、テレビをつけた。ワイドショーの画面が、興味深い出来事を伝えていた。オランダ元首相夫妻がともに手を取り合い(安楽死によって!)安らかに息をひきとったという。オランダでは、安楽死が合法的なものとして認められているのだ。日本ではあり得ないことで、私は心底、うらやましいと思った。
「あたしたちも、そろそろ死に方を考えないといけないわね。思い通りの死に方ができれば良いのだけれど」
テレビを見ながら、妻が言った。どこか他人事のようなけろっとした言い方である。私より7歳年下の妻は健康そのもの、70代のおばあさんたちに混じって週に2回、テニスをしているほどだから、それもまあ当然だろう。
私の場合はもっと深刻である。安楽死を選ばざるを得なかったオランダ元首相夫妻の気持ちがよく解る。二人とも非常に重い病気を患っていたという。具体的な病名は判らないが、ともに93歳、重い病気に罹っていなくても、生きるのはさぞしんどかっただろう。
もうすぐ74歳をむかえる私の場合も、身体のあちこちにガタがきて、ベッドから起き上がるなど、生活のための日常の動作がことごとくつらくなってきた。ベッドで寝返りをうったり、咳き込んだりすると、背中あたりに激痛が走ることもある。そうした苦痛を取り去ることができるのなら、手段なんてどうでもいい、ーーそう思ったりすることもしばしばなのである。
長寿が幸せとは限らない。充実した短い人生と、苦痛に充ちた長い人生と、そのどちらをとるかと聞かれたら、後者をとると答える人は、ごく少数だろう。
ところが日本では、法を犯さずに生きようとすれば、残念ながら後者をとらざるを得ないのが現状である。(安楽死が合法化されている!)オランダが羨ましいと思うゆえんである。
「あたしたちも、そろそろ死に方を考えないといけないわね。思い通りの死に方ができれば良いのだけれど」
テレビを見ながら、妻が言った。どこか他人事のようなけろっとした言い方である。私より7歳年下の妻は健康そのもの、70代のおばあさんたちに混じって週に2回、テニスをしているほどだから、それもまあ当然だろう。
私の場合はもっと深刻である。安楽死を選ばざるを得なかったオランダ元首相夫妻の気持ちがよく解る。二人とも非常に重い病気を患っていたという。具体的な病名は判らないが、ともに93歳、重い病気に罹っていなくても、生きるのはさぞしんどかっただろう。
もうすぐ74歳をむかえる私の場合も、身体のあちこちにガタがきて、ベッドから起き上がるなど、生活のための日常の動作がことごとくつらくなってきた。ベッドで寝返りをうったり、咳き込んだりすると、背中あたりに激痛が走ることもある。そうした苦痛を取り去ることができるのなら、手段なんてどうでもいい、ーーそう思ったりすることもしばしばなのである。
長寿が幸せとは限らない。充実した短い人生と、苦痛に充ちた長い人生と、そのどちらをとるかと聞かれたら、後者をとると答える人は、ごく少数だろう。
ところが日本では、法を犯さずに生きようとすれば、残念ながら後者をとらざるを得ないのが現状である。(安楽死が合法化されている!)オランダが羨ましいと思うゆえんである。