ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

佐伯啓思と真理相対主義

2024-03-31 11:36:54 | 日記
私は佐伯啓思なる論客を高く評価している。きのうの朝日新聞で、この人が「トランプ現象と民主主義」というタイトルの論考を書いていた。なかなか興味深い論考である。以下、この論考について書いてみたい。
彼は次のように述べている。


私が関心をもつのは、『フェイク』と民主主義の関係である。
『フェイク』とは捏造(ねつぞう)することだ。ある言説が『フェイク』か否かは、『事実』に照らせばわかるであろう。だが、何でも事実によって検証できるわけではない。(中略)
ここで問題となっているのは『事実』ではなく『価値』だからである。客観的事項ではなく、主観的意見の対立なのである。



たとえば、トランプ米元大統領は「中国からの輸入が米国経済に打撃を与えている」と主張し、「移民が米国労働者の仕事を奪っている」とも主張する。だが、このトランプの主張は「事実」によって容易に検証できるものではないし、そもそもここでは「事実」かどうかは問題ではない。
トランプやその支持者からすれば、重要なのは事実ではなく、「アメリカ・ファースト」や「米国を強くする」という価値なのである。この価値こそが彼らにとっては決定的に重要なのであり、「事実」は問題ではないのである。


以上のような佐伯氏の見解に私が感じたのは、ニーチェの思想、とくにそのパースペクティビズム(遠近法主義)との類縁性である。このパースペクティビズムの思想からすれば、どんな主張も主張者に固有の観点からする事物の「解釈」にほかならず、普遍的な「真理」などは存在しない。当然、客観的な「事実」などは存在しない、ということになるだろう。


こうした一種の真理相対主義からすれば、「何を言ってもOK!」ということになるから、これは不毛な喧々諤々の罵詈雑言を誘発する危険な思想と言えなくもない。
だが、「絶対的な真理は存在しない」ということになれば、我々は自分の意見に固執するのではなく、他者の意見にも謙虚に耳を傾けなければならないということになる。真理相対主義は一種の寛容主義に道を拓くものであり、その点で私はこれを評価したいのである。


議論の蒸し返しになるから、書きたくはないのだが、最後に一言だけ申し添えれば、上述したことは「ショーヘイと違法賭博問題」についても言えるのではないだろうか。

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コメントへのリプライ

2024-03-30 09:42:00 | 日記
枯葉さんへ


コメント欄に貴重なご意見、ありがとうございました。ご意見に対し、私なりのお答えをさせていただきたいと思います。
その前に、枯葉さんからのご意見を紹介させていただきます。


記事拝見しました。
アメリカでは、アジア人の大谷が活躍していることを快く思っていない、所謂人種差別感のようなものがあるそうです。
私は大谷の会見を大変良かったと思っています。
大谷の今までの行動や金銭感覚、生活態度などを見ていると、その類稀な人柄が見えます。
それに引き換え、水原は学歴詐称、交通違反、他問題行動のある自ら「ギャンブル依存症」と認めている、その水原本人の言を信じないという事でしょうか?
ギャンブル依存症の主だった症状に「嘘をつく」という項目があるそうです。
お金に頓着しないので有名な大谷選手、1,000億ものお金を「ドジャースの為に使ってくれ」と後払いをねがい、全額と言って断られ、少額を決めた大谷の、どこに賭博をする理由があるのか、また、野球のために充分な睡眠を取る事を優先して、会食を断り家に帰る大谷のどこに、入りもしない金の為の賭博をする時間があるのでしょうか。
しかも、当の水原は「大谷は賭博をとても悪いものと思っている」と発言していますが、それは大谷を庇って嘘をついているとでも?


真実が判明した時には、是非またこの件について書いてください。
よろしくお願いします。



以下、私からのリプライになります。


(a)「大谷の今までの行動や金銭感覚、生活態度などを見ていると、その類稀な人柄が見えます。」
←私も全く同感です。私は大谷の人柄や生活態度を直接は知りませんので、報道から推測するしかないのですが、数少ない報道から推測する限り、「質素で倹約家の大谷」という人柄は、故意にでっち上げられたフィクション(虚像)などではなく、かなり実像に近いと思います。
ですが、このことと、大谷がこれまでに違法賭博をおこなっていたこととは、全く別のことだと考えています。「謹厳実直な人」であることと、「ギャンブル依存症」であることとは、同時に起こり得ることだと思います。というより、「謹厳実直な人」ほどギャンブル沼にハマりやすいのではないでしょうか。「ギャンブル依存症」は病気ですから。
かの大文豪・ドストエフスキーがこの病気に罹っていたことは有名な話です。


(b)「水原は学歴詐称、交通違反、他問題行動のある自ら「ギャンブル依存症」と認めている」、「ギャンブル依存症の主だった症状に「嘘をつく」という項目があるそうです」
←私は先のブログで、次のように書きました。
「この2つの仮説のうち、(1)は、事が発覚した当初、イッペイ自身がおこなった説明である。だが、イッペイは自身のこの説明をすぐに撤回し、真相は(2)であると説明の修正をおこなった。」
(1)から(2)への修正は、嘘をつくという行為であり、これは水原が「ギャンブル依存症」であるがゆえにとった行動だと言えなくもありませんが、私は別の見方をしています。水原のこの行動は、大谷側からの強い働きかけによって(いわば強いられて)とられた行動だと私は考えています。


(c)「1,000億ものお金を「ドジャースの為に使ってくれ」と後払いをねがい、全額と言って断られ、少額を決めた大谷の、どこに賭博をする理由があるのか」
←大谷がドジャースとの契約の際、後払いを申し出た理由は、「税金対策のため」だ、という報道があります。この点については、2月4日の本ブログ《ショーヘイにスキャンダル?!》で詳しく書きましたので、そちらを読んでいただければ幸いです。


以上、ご意見に対し、私なりにいろいろお答えをさせていただきましたが、枯葉さんのお気持ちはよくわかります。私も大谷には大きな魅力を感じている人間だからです。
ただ、それと同時に、私には「大谷はホントにイノセントなのだろうか?」と疑念があり、この疑念から、本ブログでいろいろ書くことになりました。「可愛さあまって憎さ百倍」といったところでしょうか。


ともあれ、貴重なご意見、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

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かの党のジレンマ

2024-03-29 16:42:28 | 日記
裏金と利権なくせば党が消え

なんとも痛快な川柳ではないか。きょうの「朝日川柳」にのっていた一句である。何が痛快かといって、この川柳は、かの「党」がかかえこんだジレンマをみごとに言い当てている。

裏金と利権にまみれたこの党は、そのダークな腐りきった体質のために、国民からすっかり見放されている。積年の膿を出し切るために、この党の暗部をーー闇の部分をーー国民の前にさらけ出せ、と迫る声がかまびすしい。

だが、この声に押されて、この党の総裁たるキシダくんが党の暗部を明るみに出したら、一体どうなるのか。それによって党は裏金にも利権にもありつけなくなり、この党は資金源を断たれて、すぐにでも消滅するだろう。

かといってその暗部を隠しおおそうとすれば、この党はますます国民の支持を失い、政権の座から転落して、凋落と衰退・消滅の道をたどることになる。

つまり、どのみちこの党は消滅を免れないのである。

この党の闇の部分に、最近、やっと光が当てられはじめた。光のなかに浮かび上がったのは、モリ元首相である。浮かび上がったその名前を聞いて、「ああ、やっぱり」と思う人は少なくないだろう。モリ元首相が闇を作り上げた張本人ではないか、という声は以前からあったが、はっきりした確証は得られなかった。それをはっきりさせるために、モリ元首相を政倫審に呼び出すべきだ、という声が高まっている。

キシダ首相がこの声に従い、猫の首に鈴をつけるのを躊躇っているのは、このモリ猫が政倫審の場でどういう発言をするのか、それによってどういう影響が出るのか、イマイチ予測ができないからである。というより、「鈴を付けたモリ猫」がこの党の起死回生のきっかけになるとは、どうしても思えないからである。

このモリ猫は、保身のために猫をかぶり、のらりくらりと言を左右して、闇の部分での自分の言動を明らかにしようとしないかもしれない。そうなれば、この党はますますダークさの度合を深め、決定的に国民から見放されることになる。

あるいは、このモリ猫は窮鼠と化し、自棄(やけ)のやんぱちで、これまでの自己の行状を洗いざらいさらけ出し、その上で、「これはオレだけではない。他のだれもがやっていることだ」などと言い出すかもしれない。その場合でも、この党はやはり国民から見放されることになる。

つまり、どう足掻いてもこの党に生き残る道はないのだ。

にも関わらず、この党は選挙になると相変わらずしぶとい。現状では、この党が選挙に敗けて政権の座から転落し、代わりに野党が政権をとる可能性はないと言ってよい。なぜなのか。

党ではなく、これを選ぶ有権者の側に問題がありそうだ。かの党の代わりになる「政権の受け皿」がないのが一番の原因だが、「政権の受け皿」になり得る強力な野党の形成を阻んでいるのは、ひょっとしたら有権者ではないのか。
そうではないだろうか。

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ショーヘイのウソ⁉

2024-03-28 09:55:15 | 日記
ショーヘイの違法賭博問題。その真相をどう見るべきなのか。
おととい、ショーヘイは記者たちの前で事情説明をおこなったが、どうにも釈然としない思いが残る。私のなかに芽ばえた疑念は、この会見を聞いて却って大きくなったような気がする。

これまでの(私のなかでの)事の次第を整理しておこう。大きく2つの仮説があった。

)違法賭博にのめり込み、450億ドルの負債をかかえこんだ通訳のイッペイが、大金持ちのショーヘイに泣きつき、借金返済の肩代わりしてもらった。イッペイはブックメーカーへの送金の操作を、ショーヘイの承諾を得ておこなった。

)違法賭博にのめり込み、450億ドルの負債をかかえこんだ通訳のイッペイが、ショーヘイの資産に目をつけ、これをちょろまかして借金の返済に充てようとした。イッペイはブックメーカーへの送金の操作を、イッペイの目を盗み、自分一人で勝手におこなった。この操作にショーヘイは一切関与しておらず、ショーヘイの与り知らぬことだった。

この2つの仮説のうち、(1)は、事が発覚した当初、イッペイ自身がおこなった説明である。だが、イッペイは自身のこの説明をすぐに撤回し、真相は(2)であると説明の修正をおこなった。

なぜか。そこにはショーヘイ側から(おそらくショーヘイをサポートする弁護士から)、あるいは球団ドジャース側から、強い働きかけがあったのだろう。(1)の説明だと、ショーヘイは自ら違法賭博に関与したことになり、何らかの処分(一定期間の試合出場停止、あるいは球界からの永久追放)を免れないからである。

そこでショーヘイ側(あるいはドジャース側)は、(2)のストーリーを考え出し、これに真実味を持たせるため、これをイッペイの口から言わせようとした。おとといの記者会見でも、ショーヘイは(2)のストーリーをなぞるような発言をした。

私がおとといのショーヘイによる記者会見になぜ納得できなっかったのか、もうお分かりだろう。ショーヘイが記者会見で口にした(2)のストーリーは、事態の真相であるどころか、むしろこれを隠蔽するためにでっち上げた「おとぎ話」に過ぎないと考えるからである。

こうして、記者会見の映像を見ながら、私のなかでは「ウソこけ!」という怒りに似た疑念が膨れ上がった。(2)のストーリーでは、イッペイがどうやってショーヘイの口座にアクセスし、どうやってブックメーカーの口座に7億円近くの大金を送金することができたのか、という謎が出てしまう。

「ウソこけ!」という疑念とともに私のなかに芽ばえたのが、次の(3)の仮説である。

)ショーヘイ自身がイッペイをダミーにして、これまで違法賭博をおこなっていた。多額の借金を背負ったのも、これを返済する操作をおこなったのも、ショーヘイ自身である。

私はしばらくの間、この(3)の仮説を本ブログで書くのを躊躇っていた。なぜなら、それは今アメリカの社会で最も有力視されている仮説であり、日本のテレビでも、このところはこの仮説を本命視する見解が増えはじめたように思えるからである。仮説(3)は半ば「常識」となりつつあるのだ。

にもかかわらず、依然としてこの(3)を真実とは認めない輩(やから)がいる。この輩は、ショーヘイをイノセントなヒーローとして祭りあげたいと思っているのだろう。

今、テレビでは、「イッペイがショーヘイに知られずにブックメーカーに借金を送金することは可能かどうか」がしきりに議論され、「それは充分に可能だ」と主張するコメンテーターたちがいる。彼らはそれによって「仮説(2)は充分成り立つ」と主張し、ショーヘイをイノセントな存在に祭りあげようとしている。結局のところ彼らは、ショーヘイをイノセントと思いたがる一部の熱狂的なファンにおもねろうとしているのである。

では、私自身の意見はどうかといえば、私には「常識」に抗おうとするおかしな癖(へき)がある。私は、ショーヘイの熱狂的なファンに対してはーーショーヘイをイノセントな存在と思いたがるあの熱狂的なファンに対しては、「騙されるなよ、目を覚ませ!」と言いたいのだが、反面、「常識」への反発心から、仮説(3)を真実だと大声で言いたてる気にもなれない自分がいるのである。煮えきらない態度だ、とは我ながら思うのだが・・・。

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老いぼれ二階氏にエールを

2024-03-27 11:41:35 | 日記
二階俊博自民党元幹事長が政界引退の記者会見をおこなった。自らが会長を努める派閥(志帥会)の政治資金問題で、 政治不信を招いた責任をとり、次の衆議院選挙には出馬しないという。
これだけなら、何の変哲もない記者会見で、ことさらあげつらうまでもないが、私の印象に残ったのは、二階氏が記者の質問に突如色をなし、怒りにまかせて「ばかやろう」とつぶやいた場面である。
この場面をメディアは次のように伝えている。

不出馬の理由が裏金問題か、それとも年齢なのかを尋ねた記者に(二階氏は)『年齢の制限があるか? おまえもその歳が来るんだよ』と答えた後、小声で『バカ野郎』と吐き捨てた。
(YAHOO!ニュース3月25日配信)

二階氏といえば、もはや御年85歳。権勢を誇った幹事長時代の迫力はすでになく、死期が近づいた「老いぼれジジイ」の印象が強かった。質問をした記者は、二階氏のそんな姿を見て、「引退の理由は年齢なのか?」と、素朴にそう思ったのだろう。
これに対して、二階氏はなぜ熱(いき)り立ったのか。
この記者の質問が図星だったからではないかーー。

私はまだ85歳にはなっていない。だからそのお年のご老人のおシモの事情がどうなのかはよく分からないが、察するに、お漏らし用のパンツとか、紙おむつが欠かせなくなっているのかもしれない。二階氏が現れたときのおぼつかない足取りを見て、私はそう直感した。
二階氏のシモの事情がどうどうなのかは分からないが、人前に出るときには、辛さ・しんどさをを覚え、それを乗り越える自身の努力とともに、介助者や車イスや精力剤など、あれこれのサポートを要する厄介な身体であることは間違いないと思う。
そんな二階氏からすれば、「引退の理由は年齢なのか?」という質問は、「アレが欠かせない身体になったから引退するのか?」という問いを突きつけられたに等しい。
だからついギクリとして、「このバカタレ、おまえだっていずれはジジイになって、アレが欠かせない身体になるんだよ」と言い返したい気持ちになったのだろう。

この老いぼれ二階氏の態度が私の印象に残ったのは、実をいうと、かく言う私も(想像上の)二階氏と同じ心境になることが少なくないからである。
例えば恋愛もののテレビドラマを見ているとき、私は、「ああ、若い奴らは羨ましいなあ。自分もあの若さに戻れたらなあ・・・」と思う。だが、それが叶わぬ望みだと悟って、私はすぐにこう思い直すのである。
「なあに、あの若い奴らだって、あと50年もすれば老いぼれのジジイやババアになるのだ。恋愛なんかに現(うつつ)を抜かせない、よぼよぼの年寄りになるのだ」

老いは程度の差はあれ、平等に我々を見舞う。だれもそれを逃れることはできない。私は同じ老いぼれとして、二階氏の失態にエールを送りたいと思うのである。

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