ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

G20 公平という概念

2019-06-30 10:31:41 | 日記
G20大阪サミットの首脳宣言はどういうものになるのか。きのうの本ブログで、私は次のように書いた。「自由貿易を促進する立場から、保護主義を糾弾しようとすれば、これには米中の両大国が強硬に反対するに違いない。」

こう書いたとき、私の脳裏にあったのは、(「トランプのポチ」に甘んじる)我がアベ首相の、あの人を食ったような薄笑いである。きょうのネット記事によれば、発表された首脳宣言は、貿易問題について「自由、公平、無差別で透明性があり、予測可能な安定した貿易と投資環境を実現し、市場を開放的に保つよう努力する」と謳っている。

たしかに、この首脳宣言には、自由貿易を促進する立場が打ち出されている。しかし案の定と言うべきか、ここには保護主義を糾弾する文言は見られない。代わりに「公平」という言葉が盛り込まれている。う〜む、「公平」ときたか。なるほどねえ。

公平。この言葉が私の注意を引いたのは、以下の記事が頭の片隅にあったからである。
「トランプ米大統領は29日、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)閉幕後に大阪市内で記者会見を開き、日米安全保障条約について『不公平な条約だ』と不満を表明した。また、安倍晋三首相に対し、条約の『片務性』を『我々は変える必要がある』と伝えたことを明らかにした。日米同盟の根幹である同条約のあり方について、米国大統領が公式に不満を表明するのは極めて異例だ。」(朝日新聞DIGITAL5月29日配信)

トランプ米大統領は安保問題でも、貿易問題でも、国家間の関係が「公平か、不公平か」にひどく拘っている。「公平」という概念はアイマイで多義的であり、鵺のように漠然としているが、トランプ大統領が「同盟関係の公平性」と同時に、「貿易関係の公平性」を要求していることは間違いない。

G20の首脳宣言が「公平な貿易と投資環境を実現するよう努力する」旨を謳うのを見て、トランプ大統領はさぞ満足したことだろう。数日前にトランプの安保条約破棄発言を知り、「これはヤバい!」と焦ったに違いない我がアベ首相は、(トランプのこだわる)「公平性」を逆手にとり、サミット議長としての急場・窮地をしのいだことになる。この知恵をアベ議長に授けた事務局のメンバーが、今回の大阪サミットの最大の功労者ということになるだろうか。
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G20 会議は踊る、されど

2019-06-29 10:45:45 | 日記
G20大阪サミットはきょう閉幕する。サミットの事務局は「首脳宣言」の採択に向けて、大わらわといったところだろう。「首脳宣言」がどんなものになるのか、私は大いに関心がある。というのも、「首脳宣言」の採択自体が危ぶまれる困難な事情があるからである。

日刊ゲンダイDIGITAL(6月28日配信《G20開幕 安倍首相は“首脳宣言できない”初の議長になるのか》)が言うように、まずはパリ協定の問題がある。マクロン仏大統領は、「もしG20の宣言にパリ協定が言及されていなければ、フランスは受け入れない」と明言した。このマクロン大統領の意向を汲み、「宣言」にパリ協定への言及を盛り込もうとすれば、これにはトランプ米大統領が黙っていないだろう。トランプ政権が(温暖化対策の国際ルールを定めた)このパリ協定からの離脱を宣言したことは、まだ記憶に新しい。

また、貿易問題をめぐっては、米中の熾烈な貿易戦争があり、そのベースには、両国のあからさまな(自国ファーストの)保護主義的姿勢がある。この保護主義、自国第一主義にG20としてどう対処すべきかも、大きな難問である。自由貿易を促進する立場から、保護主義を糾弾しようとすれば、これには米中の両大国が強硬に反対するに違いない。

会議は踊る、されど進まず。各国の利害が複雑にからみあって対立する中、最大公約数を求めようとすれば、答えは火を見るよりも明らかである。答えは、すなわちゼロ。サミットの事務局は、その〈ゼロ〉を〈1〉にも〈2〉にも見せるレトリックを探して、目下奮闘中といったところだろうか。
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諫早湾判決とG20サミット

2019-06-28 11:33:30 | 日記
諫早湾干拓問題について、やっと国の最終決定が示された。長崎、佐賀両県の漁業者は「潮受け堤防の排水門を閉められて、漁業不振になった」として国に開門を求めたが、最高裁はこの漁業者側の上告を棄却する決定をしたのである。開門を求める漁業者と、開門に反対する営農者と、この両者の利害は真っ向から対立するが、国は結局、営農者側の利益を重視したことになる。原告の漁業者たちは「俺たちに死ねというのか!」と怒りの声を上げ、開門反対の営農者たちは「これで一安心だ」と歓迎する。

この最高裁の判決には、農民の利益を重視する国の姿勢が表れていると考えるとしたら、それは早計である。きょうからG20大阪サミットが開催されるが、ここで予想される日本政府のスタンスを考えてみればよい。政府は自由貿易促進の立場から、TPP(環太平洋経済連携協定)を重視し、アメリカの保護主義に異を唱えるが、TPPが尊重される限り、カナダへの乗用車輸出の関税は撤廃され、輸出量は増大が見込まれる。一方、米や牛肉といった農林畜産物の輸入にかけられる関税も撤廃されるから、その結果、日本の農林畜産業者は大きな打撃を受けることになる。日本政府は、農林畜産業者の不利益を顧みず、自動車業界の利益を守ろうとしているのである。

国による尊重の度合いからすれば、諫早湾干拓判決が示すのは、農民>漁業者。G20サミットが示すのは、自動車業界>農民、なのである。自由とともに平等をも謳う現代の我が日本で、これってどうなのだろうなあ・・・。
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トランプの日米安保発言に

2019-06-27 10:45:14 | 日記
トランプ米大統領が日米安保条約を破棄する考えを口にしたという。これは側近との「個人的な会話」の中での発言だったようだが、この話題は日本の政界を大きく揺すぶった。「日米同盟は、わが国の外交・安全保障の基軸であり、日米安保条約に基づく日米安保体制は、日米関係の中核だ」とする菅官房長官の見解は、与野党を問わず、日本の大方の政治家が持っている。日米安保条約が破棄され、日本が米軍の庇護を受けられなくなったら、一体どうするのだ!?これはえらいこっちゃ・・・。

だが、この成り行きを逆に歓迎する向きもある。たとえば小林よしのり氏は「トランプ大統領、ありがとう」と題して、次のように述べている。「それが本当ならやっと日本も自主防衛体制に持っていけるし、沖縄の米軍基地を撤去させて、沖縄県民を騒音と墜落危機と米兵の犯罪から解放することができる。」つまり、これによって日本は「やっと主権を回復して、民主主義が完成する」というのである(BLOGOS6月26日配信)。

この発言には、ラディカルな自主防衛論者としての小林氏の主張が端的に表れている。面目躍如といった感じだが、しかし、これでイケイケドンドンとならないのが、この種の議論世界の難しさである。ロシアや中国、北朝鮮の核の脅威が無視できない情勢の中、この主張を貫こうとすれば、「日本も核武装すべし」というE.トッドのような見解が現実味を増すことだろう。実際に日本が核武装を始めたら、トランプ大統領はどんな反応を示すのだろうか。日本を自分の「ポチ」にしておきたいアメリカの保守派は、どういう反応を示すだろうか。
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戦争の未来と我々

2019-06-26 13:32:27 | 日記
未来の戦争は、AI兵器同士の潰し合いとして戦われる。それによっては人的被害は生じない。無人偵察機が撃墜されても、それにより死傷者が出ることはない。軍のコンピュータ・システムがサイバー攻撃によって撹乱されても、同じことである。

これは素晴らしいこと、歓迎すべきことのように思えるが、そうとばかりも言っていられない。AI兵器の製造や維持・管理には莫大な費用がかかるからである。たとえば、先ごろイランが撃墜したアメリカの無人偵察機は、当初はネット記事で「ドローン」などと表記されていた。だから私は、これは自動運転自動車と同じくらいの値段の代物かと思っていたが、とんでもない、何と!!2億2,000万ドル(236億円)もするのだという。日本に配備が検討されているイージス・アショアの場合には、関連施設を含めると、総額で6,000億円もするというから、軍備品の世界は、常識を超えたトンデモ価格の世界なのだろう。軍のコンピュータ・システムにしても、また、それを攻撃するサイバー・システムにしても、推して知るべしである。

そういうことを考えると、軍備品と我々との関係も、考え直さなければいけないのではないか。そう思えてくる。我々は自分の国を守り、自分の生活を守るために軍備をととのえ、そのためになにがしかの金銭を税金として支払っているのだと思っている。
だが未来の戦争の、その主役になるAI兵器は、人間に変わって自己判断ができる自立的存在として、己を維持するために、我々から税金という形で莫大な金銭を収奪する、なんとも恐るべき存在になる可能性がある。

未来の戦争は、AI兵器同士の潰し合いとして戦われる。それは人的被害をもたらさず、我々がそれによって命を落とすことはない。そのことだけを見れば、それは賀すべきことには違いない。だが、AI兵器の製造、維持・管理のために我々が莫大な出費を強いられ、そのための重税によって、食うや食わずの奴隷のような、牛馬のような生活に投げ込まれるのだとしたら、そこには皮肉な、本末転倒の未来が待ち受けていると言わなければならない。何だかなあ・・・。
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