ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

トランプ 「引きこもり」大作戦

2017-01-31 17:10:02 | 日記
トランプ新大統領がいよいよ「引きこもり」作戦を実行に移すべく、
「外国テロリストの入国からの米国の保護」というタイトルのお触れを
発した。対象となるのは、シリア、イラン、イラクなど、テロの懸念が
ある7カ国の人たちであり、今回のお触れは、これらの国の国民に当面
入国を禁じるものである。このお触れによって、米国の空港では入国で
きなかったり、中東などでは、米国行きの飛行機に乗れなかったりする
人が相次いだ。米国各地の空港で拘束された人々の中には、渡米目前の
難民家族もいて、彼らは渡米の道が閉ざされれば、迫害と苦難の中に取
り残されることになる。
このような非人道的な措置に対して、激しい抗議のデモが各地に広がっ
ている。
きょうの新聞各紙の社説も、このトランプ大統領の「引きこもり」問題
を取り上げ、一斉に非難の矢を放っている。

もっともこうした非難は、トランプ大統領にとってみれば覚悟の上のこ
とだろう。このたびのお触れは「テロの脅威からの米国国民の保護」を
目的とするものであり、この目的を実現するために多少の軋轢が生じて
も、それによって自らの支持基盤が揺るぐことはない、との固い確信が
ある。トランプ大統領の「嫌われる勇気」は、過信にも似た固い確信に
よって支えられている。

言論機関がトランプ大統領の「引きこもり」作戦を非難するのなら、そ
れはこの確信を穿(うが)ち、トランプ大統領に翻意を促すだけの強い
説得力を持った論理を提示するものでなければならない。

たとえば朝日の《米の入国規制 世界の分断を招く過ち》(1月31日
付)は、こう書いている。
「身勝手な「自国第一」が蔓延(まんえん)すれば、それこそ世界の安
全を脅かす。その流れを止める結束力が国際社会に問われている。」
この文章は、トランプ大統領に訴えることをせず、国際社会に向かって
発信されている。「トランプ大統領はどうせ我々の主張には耳を貸さな
いだろう。国際社会の良識ある人々なら、我々の主張を理解してくれる
はずだ」という前提が、ここにはある。

たしかに、「身勝手な「自国第一」が蔓延(まんえん)すれば、それこ
そ世界の安全を脅かす。」という朝日の主張は、トランプ大統領には説
得力を持たないだろう。トランプ大統領はこう切り返すに違いない。
「世界の安全のために我が国の安全が脅かされるとしたら、それこそ本
末転倒ではないか。自国第一主義の何がいけないのだ!」

毎日の社説《入国禁止令 米国の良心汚す暴挙だ》(1月31日付)はど
うだろうか。
「出身国で人を差別するのは論外だ。難民に関する命令にも人道上の疑
問がある。」
毎日のこの主張に対しては、トランプ大統領はこう切り返すだろう
「平等思想よりも、人権思想のほうが大切ではないか。人命と財産の安
全、これが人権思想の基本なのだ。この基本に従うことに、どんな問題
があるというのか!」
朝日でも毎日でもいいが、これらの新聞社の論説委員は、このトランプ
大統領の応答に、返す言葉を持っているだろうか。

トランプ大統領が耳を傾け、「そうだな、ちょっと考えてみるとしよう
」と言いそうなのは、日経の社説《「偉大な米国」にほど遠い入国制限
》(1月31日付)が提示する、以下のような言説である。すこし長い
が、その部分をコピペしておこう。

「前代未聞の入国制限にトランプ大統領を走らせるのは、米国内の治安
が揺らいでいるという危機感だろう。
 しかし、彼がやっていることはテロ対策上、まったく逆効果であるば
かりでなく、米国の長期的な国益も致命的に傷つける。
 米国が世界のリーダーとして振る舞ってこられたのは、強大な国力に
加えて、自由や人権といった価値を重視し、守ろうとしてきたからだ。
難民の受け入れは、その最たる証しのひとつである。
 米国が世界中から受け入れる多様な才能は、変革と飛躍の土台になっ
てきた。IT(情報技術)分野は代表例だ。(中略)入国制限を続けれ
ば、米国への世界の信頼は崩れ、トランプ大統領が目指す「偉大な米国
」の復活どころではなくなる。宗教や民族の分断が広がり、世界がさら
に危険になってしまう。」
この日経の見解に対して、トランプ大統領がどういう応答を示すのか、
知りたいものである。

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コンプレックスの乗り越え方

2017-01-29 14:07:35 | 日記
アドラー心理学の解説本ならぬ解説ドラマ「嫌われる勇気」に触発され
て、コンプレックスについて考えてみたくなった。私は青春時代もそれ
以降も、コンプレックスにはかなり悩まされた方だから、このテーマに
はなじみ深いものがある。

さてコンプレックスは、基本的に三つの項から成り立っていると言える
だろう。一つは(1)自分であり、もう一つは(2)ライバルである。もう一
つはといえば、(3)この両者を比較し、評価する第三者である。

例をあげよう。私が職場の同僚をライバル視し、彼に対してコンプレッ
クスをいだく場合、(1)は私であり、(2)は職場の同僚である。(3)は会社
の上司だったりするが、結婚を誓ったフィアンセである場合もある。会
社の上司であれ、フィアンセであれ、我々はそういう(3)の評価者の目を
意識し、評価者に(2)のライバルよりも高く評価してもらいたいとはかな
い望みをいだく。だから悩みにとらわれるのである。

では、このコンプレックスをどうすれば克服することができるのだろう
か。アドラーの答えは、(2)の項を消去するというものである。(2)のラ
イバルは自分自身の別の姿であり、私が投影した自分の(理想の)姿だ
と考える。そう考えれば、(2)は(1)の自分へと回収され、コンプレック
スを成り立たせる3項関係そのものが崩れ去ることになる。

コンプレックスを解消するもう一つのやり方は、老子に見ることができ
る。以前の本ブログの記事《老子――コンプレックスを乗り越えて》
(2016.1.27)を読んでいただきたい。

老子は言う。「曲則全。枉則直。」(曲なればすなわち全。枉(おう)
なればすなわち直(ちょく)。)
つまり「木は曲がっていると、材木にならないため伐採されずに完全さ
が保たれる」ということである。
人間であれば、運動神経に勝り、喧嘩が強い健康優良児は、優れた兵士
として前線に送り出され、敵の鉄砲に当たって早死する。一方、運動神
経に恵まれず、体力的にも劣る虚弱児は兵士の役に立たないと判定され
て、兵役を免れ、「細く長く」自分の寿命を全うすることができる。
身近なところに目を向けると、身体を伸ばすには、身体をかがめなけれ
ばならない。「枉(おう)なればすなわち直(ちょく)」。
だから、枉(おう)の状態にある自分の身体を何も恥じることはないと
いうことになる。

つまり、こういう考え方の転換によって、「劣った私」を「優れた私」
へ転換できれば、私はコンプレックスに悩むことがなくなるということ
である。この場合は、(3)の評価法を自分に都合の良いものに転換するこ
とによって、つまり自分自身へと回収することによって、(3)の項を消去
することが目論まれている。老子の試みは、(3)を消去することで、コン
プレックスを成り立たせる3項関係を崩そうとする企てなのである。

(3)を消去するには、他のやり方もある。「イケメンというだけで、あん
な男に熱を上げる女なんて、くだらない!箸にも棒にもかからない最低
の人種だ!」と思うことで、評価者の存在そのものを無意味化してしま
うのである。

コンプレックスを乗り越えるには、もう一つのやり方がある。それ
は、(1)の自分を消去するやり方である。色即是空。仏教の修業を積
んで悟りをひらく、といったやり方がそれに当たるだろう。

どのやり方を選ぶかは、あなた次第である。
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基地移設 そのゆくえと世界戦略

2017-01-28 14:36:29 | 日記
「米軍沖縄基地 台湾へ!?」の記事を書きながら、気になっていたこ
とがある。それは、トランプ新政権の発足後、ジョン・ボルトンが国務
省内でどの程度力を持つのか、ということである。

トランプが次期国務長官にエクソンモービルのレックス・ティラーソン
会長兼最高経営責任者(CEO)を指名したと発表したのは、去年の12月
のことだった。ティラーソンはロシアとの結びつきが深いことで知られ、
2013年には、プーチン大統領からロシア友好勲章を授与されている。

この報道に接したとき、私は、「ボルトンは潰されたのだ。彼は国務省
内で生き残れなかったのだなあ」とは思わなかった。彼については、こ
の時期、次のような報道もあったからである。

「ティラーソン氏は外交経験がないため、トランプ次期大統領は、外交
実務経験が豊富なボルトン元国連大使を副長官に起用し、ティラーソン
氏を補佐させる意向である。」

この報道に接して、私はこう思ったのである。ボルトンは「陰の国務長官」
になったのだ。陰の存在になることで、彼はその策士としての辣腕をます
ます振るえるようになるのではないか。

情報の収集能力に劣る私は、以後、きょうに至るまで、米国務副長官が
結局だれになったのか、ボルトンはそのポストに就けたのかどうか、と
いったことについての情報を、まったく手に入れていない。

私が得ただけの乏しい情報から判断する限り、トランプ新大統領はその
風貌や言動に似ず、なかなかの外交上手であり、慎重で賢明なやり手だ
と見なければならない。彼はボルトンを次期国務長官の座から退けるこ
とで、(中国との一触即発の事態を招きかねない)沖縄米軍基地の台湾
への移設計画という過激な作戦をボツにし、それと同時に、親ロシア派
のティラーソンを国務長官の座に据えることで、ロシアとの連携を強め
て、よりソフトな形で中国を包囲しようと目論んでいるのだと判断でき
るからである。

こうした情勢分析に、「プーチン大統領と安倍首相との親密な関係」と
いうもう一つのファクターを加味して考えれば、トランプ新大統領は、
「米‐日‐比」包囲網という、オバマの武力頼みの戦略を退け、「米‐
露‐日」という(武力に頼らない)新たな中国包囲網を築こうとしてい
るのだと見ることができる。

トランプ新大統領。この人物の威勢のいいアグレッシブな言動に惑わさ
れてはいけない。彼は単なる自己中の引きこもりではないのかも知れな
い。
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ライバル それは自分

2017-01-27 15:53:12 | 日記
昨夜のテレビ番組「嫌われる勇気」は、いろんな意味でビミョーだっ
た。殺人事件の真犯人が意外すぎて不自然であり、「作りすぎ」の感じ
がする。プロットに凝り、トリックに凝った玄人向けの推理小説を読ん
だ読後感に近い。

さてアドラーの心理学に事寄せた今回のメッセージは、「ライバルは自
分自身なのだ」というものである。このメッセージを聞いて、「なるほ
どなあ」と納得し、心が癒される思いを持った人は多いだろう。

この世は苛烈な競争社会である。その中で競争相手の同僚に、コンプ
レックスをいだいたり、ジェラシーをいだいたり、人は日々、おおきな
ストレスと闘いながら生きている。憎んで余りあるそのライバルが、イ
ケメンで、背が高く、足が長くて、若い、高学歴の「あいつ」ではなく、
平凡で短足の、低学歴オジサンの自分自身だとしたら、まだしも救いが
あるというものだ。それがイケメンで、足が長く、若い自分、――理想化
された自分だとしても、しょせん自分の別の姿であるからには、それは
自分にとっては決して乗り越えがたい高い壁ではなく、着実に一歩一歩
近づいていける到達目標だと思われるだろう。

「理想化された自分に対していだくコンプレックスは、健全なコンプ
レックスなのです」と解説役の心理学教授は述べるが、そう思えるな
ら、コンプレックスに思い悩む自分の姿を、人は醜いものではなく、
「健全な」ものとして受け入れることができ、多少は気が楽になるだ
ろう。

アドラー心理学という飲みにくい薬を、甘味の飲みやすい薬に調合し
て、一般患者に提供する優秀な薬剤師が、ここにはいる。ドラマのプ
ロットやトリックは、この調合薬を包むオブラートのようなものだが、
今回の「嫌われる勇気」の場合、このオブラートがぶ厚すぎて、残念
なことにこの調合薬の甘味を包み隠してしまっているように思える。
コメント (3)
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トランプと「ポスト真実」の時代

2017-01-26 16:07:06 | 日記
トランプ大統領が「ポスト真実」の時代の代表的政治家だとされてい
る。その直近の例として引き合いに出されるのは、彼が日本との自動車
貿易を不公平だと批判し、貿易赤字を解消するために、二国間の協議に
乗り出すことを示唆したといった事例である。

トランプが「不公平」の根拠とするのは、日本の関税障壁のことだが、
彼のこの認識は事実に即したものとは言いがたい。日本は現在、自動車
の輸入関税がゼロなのに対して、米国は日本からの輸入乗用車に2.5%
を課しているからである。トランプの見方は一昔前、アメリカの自動車
業界が「日本バッシング」を行ったときの言いぐさとほとんど変わらな
い。トランプによる新たな「日本バッシング」の裏に、米自動車大手・
フォードの影を見る論調もある。

日米間の自動車貿易には「不公平」が存在する、という主張を、大方の
アメリカ人は「真実」だと受けとるのだろう。すぐれた技術を持つ自国
の自動車が、後進国日本で製造された自動車に遅れをとることなど、考
えられないからである。燃費が悪いし、図体が大きくて日本の道路事情
にはそぐわないといったことが、日本人にアメ車が受け入れられない理
由になるなんて、想像も及ばない。燃費の良し悪しなど、ガソリンの価
格が安ければ問題にならないし、室内は小さいよりも大きいほうが快適
に決まっている。広大な国土を持つ「豊かな国」の国民はそう考える。

「事実」と「真実」をはっきり区別しなければならない。19**年に
は、日本側の関税課税率が**%、アメリカ側の関税課税率は**%、
19**年には、・・・云々といったデータ(事実)の蓄積からは、い
くつの解釈が引き出され、その中で最も強い説得力を持つものが「真
実」として通用する。トランプが示す「不公平」云々の見方も、そう
いう諸々の解釈の一つである。

日本人から見れば、この解釈はいかにも説得力に欠けるから、トラン
プの主張は「真実」であるよりも「虚偽(まやかし)」に近いものと
映るだろう。だが、トランプの見方に強い説得力を感じるアメリカの
国民からすれば、これは「真実」以外の何ものでもない。

あるべき貿易の形をめぐるトランプ新政権と日本政府との二国間協議
は、それぞれの国の解釈が持つ説得力同士の、打打発止の激しいつば
ぜり合いになる。自分の主張に説得力を持たせるには、事実への訴求
と同時に、聴き手に訴えるパフォーマンスの演技力も欠かせない。ト
ランプは優秀なパフォーマーだが、これは日本人の不得意分野だ。
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