ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

横綱日馬富士の引退に寄せて

2017-11-30 11:44:54 | 日記
横綱日馬富士がついに引退した。暴行沙汰の幕引きとしては、これしかなかっ
ただろう。暴行沙汰の再発を防止する有効な手立ては、「暴行沙汰を起こした
ら、この世界では生きていけなくなる」という現実を力士たちに教え込むこと
であり、それ以外にない。理事長が講話で「暴力は良くない」といくら声高に
力んでみても、そんなものは力士たちには馬耳東風だろう。「暴力を奮った
ら、この世界では生きて行けなくなる」という現実を突きつけることだけが、
血の気の多い力士たちを教育する有効な手立てになる。引退を表明した横綱日
馬富士は、自ら身を挺して力士たちにこの現実を教えたことになるから、その
意味では、「さすがは横綱、腐っても鯛!」と褒めるべきだろう。

ただ、横綱の引退会見をテレビで見ていて、気になったことが一つある。それ
は、彼が貴ノ岩を凶打したことを、「礼儀がなっていないことを教え正すため
」だったとして正当化し、「自分は正しい。やり過ぎただけ」と語ったことで
ある。ーーこの受け答えを聞きながら、私は、中学生だった頃、軍隊がえりの
教師からこっぴどく殴られたことを思い出した。「態度が悪い」という理由か
らだった。横綱の言葉を借りれば、「礼儀がなっていないから」ということに
なる。だが、暴力を振るうことによって、礼節を欠いた人間を矯正できると、
日馬富士は(また、あの中学の体育教師は)ホントに思っていたのだろうか。
とんでもない。日馬富士は、相手を暴力で支配し、このやんちゃな力士を、自
分の言うことに黙って聞き従う「従順な」人間に仕立てようと思っていただけ
ではないのか。

貴ノ岩を、自分が操れる力士に仕立て上げるための暴力。それならよく分か
る。モンゴル互助会の血の掟を無視して、八百長による星の取引には応じず、
ガチンコ勝負を挑みつづける跳ねっ返り根性、ーーモンゴル互助会を潰しかね
ないこの危険な「反社会的」根性を、日馬富士は叩き直したかったのである。

貴ノ岩の師匠である貴乃花親方は、依然として沈黙を続けている。「アレをば
らして欲しくなかったら、現執行部は引っ込んでおけ。次の執行部のアタマに
は俺がなる」と暗に言おうとしているようだ。貴乃花親方が言外に匂わせるア
レとは、言うまでもなく、この世界の一部にいまだ根強くはびこる八百長体質
である。
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ウハウハの北のミサイル

2017-11-29 10:53:50 | 日記
またしても北朝鮮がぶっ放した。今度のミサイルはICBM級だという。アメリ
カが北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定したことへの抗議の1発で、これは
かねてから予想されていた。日本の国民ももう北のミサイルには慣れっこに
なってしまっているからか、けさのミサイル発射にも特に驚くことはなく、
そのせいか、今回は政府のJアラートも鳴りをひそめ、NHKの朝の放送も何
事もなかったような、平常通りの番組の進行ぶりである。

豚魔大王もこれには肩透かしを食らった感じだろうが、我がアベ首相だけは
大げさな受けとめ方で、さっそくトランプ米大統領に電話を掛け、「日米同
盟として北朝鮮の脅威を抑止し、対処するための能力強化をさらに進める」
との方針を確認したという。
アベ首相にすれば、国会審議でモリカケ問題が再燃しそうな昨今、この「国
難」の再来はまさに渡りに船、有り難かったに違いない。キムさまさまであ
る。

トランプ米大統領はどうか。アメリカは北のICBMに対して、すでに迎撃体制
を整えているから、こんなものは屁の河童、「脅威」でも何でもないが、自
国の武器を売り込む好機と見て、日本や韓国に対し、「北の脅威」を喧伝す
るだろう。こちらもキムさまさま、である。

トランプ大統領はアベ首相との電話会談で、「圧力をさらに高めていく必要
がある」と述べ、より厳しい措置をとる考えを示したという。

今後の成り行きもどうせ予想通りなのだろうな。
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太平洋と軍事大国アメリカ

2017-11-28 14:18:10 | 日記
昨夜、テレビを見て、その内容に心を揺さぶられた。テレビ東京の「未来世紀
ジパング」である。【ミサイルが着弾する島〜アメリカの知られざる兵器開発】
というのが昨夜のタイトルだった。

北朝鮮情勢が緊迫した今年2017年、アメリカは4回も大陸間弾道ミサイル
(ICBM)の発射実験を行っている。そのミサイルの着弾地になったのは、太
平洋に浮かぶ島国、マーシャル諸島共和国である。「真珠の首飾り」と称され
るこの美しい、のどかな島国が、なぜミサイルの着弾地になったのかーー。番
組はその背景を探り、この島国がアメリカの統治下におかれたこと、島にアメ
リカ軍の基地が建設されたこと、この米軍基地が島民たちの就職口として、島
民たちに経済的な恩恵をもたらしていること、のみならず、アメリカがこの島
国の国家財政に多大の寄与をしていることなどを、淡々とリポートしている。
米軍基地の島とはいえ、沖縄に見られるような、基地と住民、米兵と住民との
間の軋轢は報じられなかった。

この番組を見て、まず驚かされたのは、アメリカが今年、ICBMを4発もぶっ放
していることである。私はこの事実をまったく知らなかった。北朝鮮がICBMを
1発発射しただけで、あれほど大騒ぎをする日本のマスコミが、なぜこの事実に
はまったく触れようとしないのか・・・。だれによるのかは知らないが、情報操作
に乗せられた恰好の自分が腹立たしく、情けなかった。

島民たちが毎朝フェリーで通勤する、別の島の米軍基地。その映像も流され
た。島1つをまるごと使って建設された、広大な米軍基地。これに比べたら、
中国が南シナ海に造成中の人工島など、月とスッポンの違いがある。超大国の
アメリカがそれほど目くじらを立てるほどのものか、と思えてくる。

北朝鮮の核兵器開発にしても同様である。アメリカの軍事的プレゼンスの、そ
の圧倒的な迫力の前では、北朝鮮の軍事力など、形無しの体で、ほとんど問題
にならない。日本はまだしも、アメリカからすれば、北のICBMに対する迎撃
ミサイルの実験に成功した今、とりたてて騒ぐほどの「脅威」にはならないだ
ろう。それをさも深刻な問題であるかのように、アメリカが国連の場で取り上
げたりするのは、自国の武器を関係諸国に買わせるための、大がかりな演出で
はないかと思えてくる。

トランプ大統領は、やはり相当やり手の商売人だ。今さらながら、つくづくそ
う思う。

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生産業としての大学は

2017-11-27 16:08:10 | 日記
朝日新聞のきょうの社説《大学改革 目先の利益傾く危うさ》を読んだ。同時
に、井筒監督の「虚業」発言に対するホリエモンの批判の記事が頭をよぎった。
記事はこうである。

24日放送の「5時に夢中!」(TOKYO MX)で、実業家の堀江貴文氏が、映画監
督・井筒和幸氏の評論を酷評した。
番組では「虚業が増え 生産業が絶滅する」と題し、日刊ゲンダイの記事を紹介
した。(中略)
MCの原田龍二がコメントを求めると、堀江氏は映画界について、興行収入を意
識したキャスティングや作品が多いことには一定の理解を示した。しかし、井
筒氏の主張について「虚業がうんぬんかんぬんっていうのは、いつもの井筒さ
んのポジショントーク。偏りトーク」と苦言を呈した。

この記事に、私はなぜ国の大学行政を重ね合わせたのか。それは、2年前、文科
省が大学の文系学部を潰しにかかったとき、文科省がこの論理にのって動いてい
たからである。文系学部を放置すると、「虚業が増え 生産業が絶滅する」とい
うのが、文科省の言い分だった。

きょう朝日新聞が社説で批判の俎上にのせたのも、ちっともかわり映えしない
大学行政の姿だった。「良い大学」には多額の運営交付金をつぎ込み、学生に
も奨学金を奮発する。「良くない大学」は運営交付金を削減し、学生にも奨学
金を支給しない。ーーでは、「良い大学」とは、どういう大学か。それは、社
会の役に立つ大学であり、ひいては企業の役に立つ人材を多数生産して、供給
する大学である。つまり国家は、「生産業」としての大学を作りたがっている
のである。

「(社会に対する)有用性」を基準に物事の良し悪しが決められ、行政が進め
られる社会では、社会や国家のあり方に対する批判は「良くない」こととして
退けられる。国家の運営にあたる政権が独裁化しても、それを当然の所与とし
て受けとめ、唯々諾々として国家に髄順する人物だけが「有為の」人材として
巷にはびこることになる。そういう人材を「生産」することが、この国の大学
行政の真意なのか、とは思いたくないけれど・・・。
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認知症と犯罪

2017-11-26 14:45:33 | 日記
え?わたしが人を殺したって?まあ、そう言われれば、そんな気もしますけ
ど。でも、わたし、人を殺した記憶がないんですよ。 ○✕▲夫ですか?そ
んな男、わたしは知りません。夫じゃないかって?夫の名前なんて、もう忘
れましたよ。自分の名前だって、もう憶えていないんですから。

老婆の名は筧(かけひ)千佐子、70歳である。
京都、大阪、兵庫3府県で起きた連続青酸死事件で、夫や内縁男性ら4人に
青酸化合物を飲ませて殺害したなどとして、殺人罪と強盗殺人未遂罪に問わ
れた。彼女の裁判員裁判の判決公判が京都地裁で開かれ、中川綾子裁判長は
求刑通り死刑を言い渡した。弁護側は死刑判決を不服として即日控訴した。
中川裁判長は判決理由で「金銭欲のための犯行で悪質」とし、「認知症など
を最大限考慮しても死刑を回避するべき事情はない」と断じたという。

朝日新聞は《被告の高齢化 認知症の増加に備えを》と題したきょうの社説
で、「被告に認知症の疑いがある場合、審理をどう進めるべきか」という問
題を投げかけている。この裁判では、「訴訟能力と責任能力の有無」が争わ
れ、弁護側は「訴訟能力も責任能力もない」として、無罪を主張した。これ
に対して中川裁判長は、「犯行時には善悪を判断する責任能力があり、訴訟
能力も問題ない」として、求刑通り死刑の判決を下した。

この判決は妥当なのかどうか。う〜ん、たしかに、難しい問題である。朝日
は「各地の裁判所や検察、弁護士会が精神科医を交えた議論の場を設けるな
どして、まず課題を共有することが急務である」と締め括り、お茶を濁して
いるが、これでは(「審理をどう進めるべきか」という問題に答えたとして
も)量刑の問題は置き去りにされたに等しい。

問題を単純化するために、次のようなケースを考えてみよう。これも実際に
あった事例である。

大阪市都島区のスーパーで2015年5月に万引きをして窃盗罪で有罪判決
を受けた同区の男性(72)が、事件当時は認知症で責任能力がなかったと
して、大阪地裁に裁判をやり直す再審を求める方針を決めた。男性は判決直
後に認知症と診断され、同年12月に起こした万引き事件では「認知症の影
響で心神喪失の疑いがある」として無罪を言い渡された。弁護人は5月の事
件について「検察は精神鑑定で責任能力を厳密に判断すべきだった」と指摘
し、無罪判決を求める方針。
                       (毎日新聞 9月23日付)

問題は、この男性が「前頭側頭(ぜんとうそくとう)型認知症」で、08年
ごろに発症した可能性があると診断されたことである。「前頭側頭型認知症」
とは、主に脳の前部にある「前頭葉」が萎縮して発症するもので、衝動を抑
制して理性的に振る舞ったり、他人の気持ちを推し量ったりする機能が低下
し、万引きなどの触法行為や過食、人格の変化などの影響があるとされる。
アルツハイマー型認知症と異なり、初期段階では物忘れが目立たず、本人に
病気の自覚もないため、認知症と気付きにくいのが特徴だが、治療法は確立
していないとされている。
他のケースなら、病気が犯罪の原因とされた場合、被告は責任能力なしとさ
れ、一般の刑務所ではなく、医療刑務所に収容されるが、この場合は、犯罪
の原因とされる病気(前頭側頭型認知症)に対して、治療法が確立していな
いのである。治療が不可能とされる被告を、「医療」の対象とすることは妥
当なのかどうか。

万引きの常習犯を社会から隔離する方便として「医療」を利用するのだとい
うなら、解らなくはない。この男が万引きを繰り返さないよう、家族が付きっ
きりで看守らねばならないというのでは、家族の負担も大変だろう。医療刑
務所送りにすれば、その分コストはかさむが、その費用を家族の負担とすれ
ばよい。そうなっても、自分たちが看守るよりは軽い負担で済むから、家族
はこちらを望むはずだ。

さて、筧千佐子被告の場合はどうか。彼女の場合は、認知症とはいえ、前頭
側頭型認知症とは違うから、病気が犯行の原因になったとは言えない。とす
れば、犯行の主体は彼女であり、犯行時、彼女には責任能力があったと考え
なければならない。裁判の過程で、認知症が進行し、訴訟能力を喪失したと
しても、判決を引き受ける能力を失ってしまっているとまで考えることはで
きない。犯行時の記憶を失ったからといって、犯行時の自分と、今現在の自
分とのつながりが絶たれるわけではない。2つの〈自己〉をつなげるのは、
今現在の〈自己〉だけではなく、また社会でもあるからである。
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