老子の中で主役クラスの重要な役割を果たしているのは、
「道」の思想である。
にもかかわらず、この主役の顔が見えない。
ほんのりと後ろ姿が見えるだけで、
どれだけ目を凝らしても、顔かたちは見えない。
老子を読み進んでいくときに感じる
ストレスの一因はこれだと気づいた。
私が見たいのは、この主役の顔だちであり、表情なのだ。
後ろ姿なんかではない。
老子に会って、こう訊いてみたい気持ちが募ってくる。
「あなたの言う道とは、いったい何なのでしょうか?」
そう尋ねれば、老子は私に、こう訊き返してくるだろう。
「で、あんたはどう思うのだね?」
「それが、分からないのです。まったく分からないのです」
私が答えると、老子の口から、人を食った言葉が返ってくる。
「ほう、あんたは、よく分かっておるではないか。
その通り、道とはな、まったく分からないものなのじゃ」
一瞬面喰らったものの、私は驚かない。言われてみれば、たしかにその通りなのだ。
この言葉も、「道」の思想に含まれていた気がする。
ただ、この言葉をどう飲み込んだらいいかが、私には分からないのだ。
「はあ?」
私が返す言葉を失い、
困惑の表情を向けると、
老子はにやりと笑い、
次のように言って、滑るように去って行く。
「それだけ分かっていたら、それ以上の説明は不要じゃ。
あとは蛇足になるだけじゃからな」
お~い、待ってくれよ、老子さん!
それが求めている「道」の後ろ姿でもあるかのように、
私は彼の後ろ姿を追いかける。
ぜいぜいと息を切らしながら。
「道」の思想である。
にもかかわらず、この主役の顔が見えない。
ほんのりと後ろ姿が見えるだけで、
どれだけ目を凝らしても、顔かたちは見えない。
老子を読み進んでいくときに感じる
ストレスの一因はこれだと気づいた。
私が見たいのは、この主役の顔だちであり、表情なのだ。
後ろ姿なんかではない。
老子に会って、こう訊いてみたい気持ちが募ってくる。
「あなたの言う道とは、いったい何なのでしょうか?」
そう尋ねれば、老子は私に、こう訊き返してくるだろう。
「で、あんたはどう思うのだね?」
「それが、分からないのです。まったく分からないのです」
私が答えると、老子の口から、人を食った言葉が返ってくる。
「ほう、あんたは、よく分かっておるではないか。
その通り、道とはな、まったく分からないものなのじゃ」
一瞬面喰らったものの、私は驚かない。言われてみれば、たしかにその通りなのだ。
この言葉も、「道」の思想に含まれていた気がする。
ただ、この言葉をどう飲み込んだらいいかが、私には分からないのだ。
「はあ?」
私が返す言葉を失い、
困惑の表情を向けると、
老子はにやりと笑い、
次のように言って、滑るように去って行く。
「それだけ分かっていたら、それ以上の説明は不要じゃ。
あとは蛇足になるだけじゃからな」
お~い、待ってくれよ、老子さん!
それが求めている「道」の後ろ姿でもあるかのように、
私は彼の後ろ姿を追いかける。
ぜいぜいと息を切らしながら。