(承前)
6.1951年に調印された日米安保条約(旧条約)は「片務」的な内容だった。そのため岸信介首相はこれを改定しようとした。ーーそう私は書いたが、この改定の動きは日本では、ひとことで済まされるような簡単な出来事ではなかった。この岸首相の動きに対して、それこそ日本国中を巻き込むような、大規模で激しい反対運動が起こったからである。
日本にとって不利益になる旧条約を改定しようとした、岸首相のあっぱれな政治行動。それに対して、集団ヒステリーのような激しい反対運動が起こったこと、ーーこれがなぜなのかは今となってはトンと理解に苦しむが、しいて言えば、これには次のような事情が働いたと思われる。
a.進駐軍が「在日米軍」として日本に常駐するようになると、アメリカの支配体制が常態化・固定化され、日本の独立性が損なわれる。ーーそう考える人たちが多く出て、これに強く反発したこと。
彼らは敗戦の心理的屈辱からまだ充分に立ち直っていなかった。そのため「これからの日本防衛をどうするか」よりも「戦勝国・アメリカによる敗戦国・日本の支配をいかにしてはねつけるか」に思いを奪われがちだったのである。
b.アメリカに屈従し、依存性を深める日本政府の不甲斐なさに対して、日本国民が強い憤りを感じたこと。
そう感じた人たちも、同じく敗戦の心理的屈辱からまだ充分に立ち直っていなかったと思われる。
c.その他に、共産主義勢力(日本社会党、日本共産党)が反米思想を煽ったこと、などが考えられる。根深い反米感情から、共産主義勢力の扇動にのる人も少なくなかったと思われる。
ともあれ、そうした激しい反対運動の嵐の中で、新条約案は政府側の強行採決によってなんとか衆議院を通過した(1960年)。
銘記すべきは、こうした安保改定反対運動が(皮肉なことに!)アメリカの日本占領政策によって生まれたとも解釈できることである。
反対運動に携わった国民の大半は、総じて「戦争に対する忌避感」を動機として運動に加わったと思われるが、この「戦争に対する忌避感」こそ、GHQがつくった「平和憲法」を土壌として育った果実だと考えられるからである。
とにもかくにも、日本国内のこうした争乱を尻目に、アメリカが日本政府に「駐留経費を分担せよ」と要求し続けたのは、先に述べたように、在日米軍が「防共のため」というより「日本防衛のために」日本に駐留しているのだ、という意識がアメリカ側に強まったためである。
(つづく)
6.1951年に調印された日米安保条約(旧条約)は「片務」的な内容だった。そのため岸信介首相はこれを改定しようとした。ーーそう私は書いたが、この改定の動きは日本では、ひとことで済まされるような簡単な出来事ではなかった。この岸首相の動きに対して、それこそ日本国中を巻き込むような、大規模で激しい反対運動が起こったからである。
日本にとって不利益になる旧条約を改定しようとした、岸首相のあっぱれな政治行動。それに対して、集団ヒステリーのような激しい反対運動が起こったこと、ーーこれがなぜなのかは今となってはトンと理解に苦しむが、しいて言えば、これには次のような事情が働いたと思われる。
a.進駐軍が「在日米軍」として日本に常駐するようになると、アメリカの支配体制が常態化・固定化され、日本の独立性が損なわれる。ーーそう考える人たちが多く出て、これに強く反発したこと。
彼らは敗戦の心理的屈辱からまだ充分に立ち直っていなかった。そのため「これからの日本防衛をどうするか」よりも「戦勝国・アメリカによる敗戦国・日本の支配をいかにしてはねつけるか」に思いを奪われがちだったのである。
b.アメリカに屈従し、依存性を深める日本政府の不甲斐なさに対して、日本国民が強い憤りを感じたこと。
そう感じた人たちも、同じく敗戦の心理的屈辱からまだ充分に立ち直っていなかったと思われる。
c.その他に、共産主義勢力(日本社会党、日本共産党)が反米思想を煽ったこと、などが考えられる。根深い反米感情から、共産主義勢力の扇動にのる人も少なくなかったと思われる。
ともあれ、そうした激しい反対運動の嵐の中で、新条約案は政府側の強行採決によってなんとか衆議院を通過した(1960年)。
銘記すべきは、こうした安保改定反対運動が(皮肉なことに!)アメリカの日本占領政策によって生まれたとも解釈できることである。
反対運動に携わった国民の大半は、総じて「戦争に対する忌避感」を動機として運動に加わったと思われるが、この「戦争に対する忌避感」こそ、GHQがつくった「平和憲法」を土壌として育った果実だと考えられるからである。
とにもかくにも、日本国内のこうした争乱を尻目に、アメリカが日本政府に「駐留経費を分担せよ」と要求し続けたのは、先に述べたように、在日米軍が「防共のため」というより「日本防衛のために」日本に駐留しているのだ、という意識がアメリカ側に強まったためである。
(つづく)
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