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『無罪』 深谷忠記

2011年10月07日 | 
深谷忠記さんの作品を、初めて読みました。
トラベルミステリーや社会派本格ミステリーなどたくさん書かれているのですね~

今回、何故読もうと思ったかと言うと、

「無罪判決が下された時、本当のドラマが始まる。
 愛する息子と妻を通り魔に殺された男。
 我が子を殺しながら、心神喪失で無罪となった女。
 刑法第39条の壁で隔てられた、被害者、加害者双方の苦悩と葛藤を描いた
 書下し心理ミステリー。」

という内容紹介文に興味を持ったからです。



物語は、息子と妻をシンナー中毒の通り魔に殺された新聞記者の小坂の事件と、
11年前、我が子2人を殺しながら心神喪失と判断され、無罪判決を受けた香織の事件と
二つの事件を軸に展開するのです。

二つの事件に関連性は全くありません。
唯一共通する点が、刑法第39条が適用されたこと。

刑法第39条とは・・・・
 心神喪失者の行為は、罰しない。 
 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

そして、この刑法第39条が、奇しくもこの二つの事件を引き合わせるのです。

被害者家族と加害者、またその家族というと、
先月放送されていたドラマ「それでも、生きてゆく」を思い出してしまいます。
とても切ないドラマでした。
当事者にしか分からない哀しみやジレンマやいたたまれなさが
静かに描かれていて、そうして、生きてゆくんだね、と
声をかけたくなってしまいました。

この『無罪』という本も、あちこち無様にぶつけながら、
出口の見えない暗い淵をさまよいながら、
それでもそうして生きていくんだと、
自分の気持ちにケリ、なんてつけようもないけれど、
そうして無様でも、生きていかなくてはならないのだと、
胸に、迫りました。
読んで、良かったです。。



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