趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『抱く女』 桐野夏生

2015年08月24日 | 
桐野夏生さんの新刊読みました~

この本の新聞広告を読んだ時、私小説なのかなと思っていました。



印象的な表紙絵だと思ったら、草間彌生さんの絵でした。
ああ、とてもらしい、と思いました。

 この主人公は、私自身だ――。1972年、吉祥寺、ジャズ喫茶、学生運動、恋愛。
 「抱かれる女から抱く女へ」と叫ばれ、あさま山荘事件が起き、不穏な風が吹く七〇年代。
 二十歳の女子大生・直子は、社会に傷つき反発しながらも、
 ウーマンリブや学生運動には違和感を覚えていた・・・。(内容紹介より)


私自身は、桐野さんより下の世代なので、安保はテレビの中の出来事です。

ジャズ喫茶や学生運動、ウーマンリブなどという言葉を懐かしく思いますが、
実感は伴いません。

でも、読みながら一番強く思ったことが、昔の男たちというのは
こんな感じだったよなぁと云う事です。
物事を考えようとする女たちを嘲笑って、バカにしていたと。

描かれる若い男たちの今との違いに、ガクゼンという感じです。

そしてそれにともなって、女性が格段に生きやすくなったという実感です。

「舞台となった1972年は、2月に連合赤軍のあさま山荘事件が起こり、
 その後、大量リンチ殺人が行われていたことが明るみに出た年。
 世間は騒然としましたが、学生たちにとっては、何かが終わったというか、
 白けたような気持ちを抱いていた時期だったんですよね。

 構想を練りながら、あのころ感じていた所在のなさや、
 世の中への違和感といったものが次々と思い出されて……。
 そうして、当初考えていた物語に記憶が融合し、
 私には珍しい、私小説的な作品になりました。」

と、桐野さんインタビューに答えていらっしゃいます。

多分、この時代の空気を思い出せる人々が読むと感慨深いのでは、と思います。

個人的には悩む直子の心情に、共感する部分がありました。
女性性や男性性というものを旨くとらえられずに傷つく気持ち、
同じように思っていた時期がありました。

結局はこういう気持ちの積み重ねが、時代を少しずつ動かしていくのだと思いました。。


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