趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『悪党』 薬丸 岳

2010年05月25日 | 
図書館の書棚を眺めていて、手にした本です。
このお名前と、題名に覚えがあったのです。
薬丸岳さんの作品は初めてです。
新聞か何かの書評を読んで、興味を持ったこと思い出しました。

主人公は、犯罪被害者家族で元警官の佐伯修一。
不祥事を起こし、警官職を失い現在は探偵事務所で働いている。
仕事の依頼の多くは、犯罪加害者の‘今’を調べること。
その一つ一つの案件の連作短編集となっています。



題名の通り、悪党がたくさん出てきます。
事件の多くは、胸がふさがれるような少年犯罪。
少年法に厚く守られ、加害者は数年ののち社会に出てくるのです。

主人公の修一も、かつて姉を悲惨な事件で亡くしているのです。
志高く警察官になっても、彼の心の中の闇が暴れて
結局退職に追い込まれてしまう。
姉を殺された事実が、彼の心を蝕んでいく・・・。

被害者家族のやるせない思い。
悲しみの癒えなさ、救いのなさに言葉を失います。
どうしてこんなひどいことができるのか、
犯罪者の描写に胸が悪くなります。

それでも、
同じような被害者家族と関わったり
加害者を調べていくことを繰り返すうち
修一もまた自分の心と決着をつける決意をします。
その流れがいいと思いました。

とても、胸に迫る作品でした。
エピローグが、いいです。
きっと幸せに。。


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