イズミル便り

IZMIR'DEN MERHABA

HIDRELLEZ(フドレルレズ)

2008-05-10 08:49:29 | Weblog


日本ではGWも終わり新緑が青空に映える美しい季節ですね。ピッカピカの1年生や新入社員もそろそろ新しい環境に慣れる頃、トルコでは日本のような学卒社員の入社式なんて聞かないし新学期も9月からなのでいまいち季節の節目感がありません。



日本の百花繚乱、花咲き鳥歌う、と言った心躍る春を懐かしんでいる私ですがトルコにも春のお祭りがあるということを今年初めて知りました。その名も「HIDRELLEZ(フドレルレズ)」。今まで聞いたことがないというのも不思議なのですがおそらく3月にある「NEVRUZ(ネヴルズ)」とごっちゃにしていたのかもしれません。



5月5日の夜、突然近所の通りで激しいリズムでdarbuka(ダルブカ)と言うトルコの太鼓を叩く音と子供たちの嬌声があがり、向かいのバッカル(雑貨屋)のおじさんは火を燃やしていました。何があったのだろうとその日はあまり気にもせず翌日偶然TVのニュースを見て「ああ、HIDRELLEZだったのか」と知った次第。夫も同様だったそうです(一応トルコ人なのに…)。





HIDRELLERZとはフズルとイリヤスという預言者が地上で出会い春を目覚めさせた日である5月6日を祝う日。トルコではフズルとイリヤスと言う言葉が庶民の間で一緒になりフドレルレズという形で呼ばれるようになったそうです。





フズルは「生命の水」を飲んで不死の身となり、特に春になると人々の間を歩き回り困った人を助け、富や豊穣をもたらしたとされます。フズルは善行を愛し植物の芽吹きを助け、動物を繁殖させ、人間の繁栄をもたらすなど吉兆や幸運のシンボルとされてきました。

 
さすがに21世紀のHIDRELLEZ、オンラインでも願い事受付したようです。

HIDRELLEZ前夜は家を掃除し衣類を清潔にし、食べ物飲み物を準備します。家中をきれいにしないとフズルは立ち寄ってくれないからです。新しい服や靴を買います。地域によっては願い事や希望がかなえられるように喜捨をしたり断食をしたり犠牲の動物をささげたりする習慣があります。
HIDRELLEZの行事は緑の多い場所、水際、陵墓や聖者の眠る場所などで行われます。春の新鮮な植物や新鮮な子羊の肉、内臓を食べる習慣もあるそうです。その春一番の子羊を食べると健康になり病気は全快する、野原から花や草を集めて煮た水を飲むとすべての病に良く効く、この水で40日間身体を洗うと若く美しくなる、などなど…。また願い事を紙に書いてNAHIL(ナフル)と言う願い事の木に貼り付けたりバラの苗木に下げたりするのだそうです。写真を見ると日本の七夕に似ていませんか?



HIDRELLEZの夜、フズルが立ち寄りさわったところには豊穣がもたらされると信じられていることから食べ物を入り口に置いたり、倉庫の入り口やお財布の口をあけておくのだそうです。家、畑、車などを望んでいる人は自分が望んでいるものの小さな模型を作るとフズルが手助けをしてくれると信じられています。

メソポタミアやアナトリアの文明、そしてイスラム以前の中央アジアに住むトルコ民族の民間信仰から伝わって来ているという「HIDRELLEZ」、日本の昔からの行事や庶民の信仰に通じる親しみを感じてしまいました。春がもたらすあらゆる植物、生き物の息吹を謳歌し豊穣を願う古くからの人間の営みは世界に共通と言うことでしょうか。






私が見たニュースで紹介されていたイスタンブルで
最も古い地区と言われる「AHIRKAPI(アフルカプ)」のHIDRELLEZ。
今回の写真は全てこちらのHPから拝借いたしました。
クリックするとHPが開きます。
        






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