子供は自分の家のカレーが好き。
そういうものだと思っていた。
だけど、それは家でお母さんがカレーを作るから。
カレーを家で食べられなくなった子供たちとワタシのお話。
大阪にはインディアンカレーというカレー屋さんがある。
夫はその店のカレーの大ファンだ。
ワタシが初めて子供を身ごもった時、連れていかれた。
ただでさえ妊娠して味覚が過敏になっているとき。
二口食べたら、辛くて食べられなくなった。
そんなワタシを「もったいない」目で見ながら、夫は完食。
「なんで、食べられないの?」
と聞かれた。
『辛かったから』
としか、答えようがなかった。
一番上の子が普通にカレーを食べられるようになった時、
下の子をベビーカーに乗せたまま、そのカレー屋さんに行った。
(もちろん、一番上の子に大人のカレーを食べさせるのも反対したし、
ただでさえ狭い店内、ベビーカーで入ることも反対した。でも夫はきかなかった)
ワタシは過去のことがあるので、ハヤシライスを頼んだ。
一番上の子は、やはり辛くて食べられなかった。
それでも、夫は不思議そうな顔をするだけだった。
時は過ぎ、ある日、姑がカレーの隠し味を教えに来た。
そして、夕飯はカレーだった。
そのカレーを食べた夫は言った。
「もう家でカレーは作らないで。お前の作るカレーは美味しくないから。
僕はインディアンカレーが好みなんだ。あの味に出来るなら食べてもいい」
姑が教えてくれた味だと言っても、聞き入れない。
挙句の果てに
「ねぇ、ママの作るカレー、不味いよね?」
と子供たちに聞く始末。
それ以来、ワタシはカレーを作れなくなった。
でも、子供たちからはリクエストされる。
長期休暇の時は、夫のいない昼食にカレーを作って食べた。
でも、カレーはにおいが残り、帰宅した夫は
「カレーじゃないよね?昼間のにおいか(笑)」
と笑っていた。
数年経ったある日、本当に晩御飯のメニューが思いつかず、
子供たちのリクエストもあって、ハッシュドビーフにしたことがあった。
熱いものは熱いまま食卓に出さないと、怒る夫だったので
冬であったこともあり、盛り付け直前で火を入れ、出した。
一口食べた夫は
「こんなもん、熱くて味もわからんやないか!こんなもん、食えるか!」
と、怒って部屋を出て行ってしまった。
仕方なく、暗い雰囲気でワタシと子供たちがご飯を食べていると、
夫が再びやってきて
「おい、口に合わないもの作ってごめんね、とかないんか。
お腹空いてるでしょ、なにか他に作ろうか、とかないんか!
ちゃんと来て、謝らんかい!」
と激高した。
その剣幕に子供たちは慄き固まり、大人しく従うことをいいことに
その日以来、夫は自分の気持ちのまま、怒鳴り散らすようになった。
ワタシは、子供を守るどころか、実家の父のトラウマと重なり
体の硬直と動悸にさいなまれることになった。
子供を守ることすらできないのかと、自分を責めるしかなかった。
子供を守れない
人生の中で、一番きつく、心残りなことになった。
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