近所の人が、亡くなった。
ここ数年、よく見かけていた人だった。
病気で療養しているようには見えなかった。
いつも笑顔で、近所の犬を可愛がっていたから。
町内会からの葬儀場所と時間を記したメモが、郵便受けに入っていた。
義祖母はその頃、ホームに入居していたので、
一家の長が出なければならなかった。
ワタシはてっきり夫が出席するものだと思っていたので
普段通りの時間配分で動いていたのだが、ところがどっこい。
「お通夜、お前が行ってきてよ」
と、お通夜が始まる30分前に、夫が言った。
『え、なんで?』
「だって、僕が他所の奥さんの通夜に出るのって、なんだかな~でしょ?だから」
・・・なにが、だよ。
本当に自分勝手で、一家の長としての意識がないんだから。
普段は俺様で、家では俺が一番だから俺に従え、って感じなのに。
呆れてものが言えなかったワタシは、さっさと着替えて、出かけた。
近所の人との別れも、まともに出来ない人だった。