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生産緑地の解除がミニ開発を誘導することが少なくない→市街化区域内農地の計画的な宅地化誘導を期待

2017年03月12日 | studywork

2004 上尾のまちづくり「生産緑地が消えていく」 /2004 図はホームページ参照。
都市計画法が変わって
 昭和43年1968年に都市計画法が改訂された。この法改正の目的の一つは、都市の無秩序な拡大(アーバンスプロール)を防ぐことで、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分(線引きと呼ばれる)し、市街化区域では市街化を促進し、市街化調整区域では市街化を抑制するため住宅建設等を制限したことである。
 市街化区域では、住居系や商業系、工業系などの用途地域が定められ、用途地域に応じた容積率や建ぺい率、高さ制限が規定されて都市整備が進められることになった。
 ところが、この法改正以前から農業等を行っていた土地の周辺では用途地域に応じた市街化の促進が進むことになったばかりではなく、農地に固定資産税や都市計画税といった宅地並みの課税がかかることになった。その農地や大きな屋敷を遺産相続すると宅地並みで課税されるため、土地を売却しないと相続税が支払えないという事態も起きることになってしまった。
 農地は農家の生計を支える生産空間であると同時に、周辺住民にとって、新鮮な食材を提供してくれるうえ、過密な都市のはざまに点在する清涼な緑地空間としても機能する貴重な緑でもある。このままでは、農家も消滅し、都市の貴重な緑も失われてしまう。

生産緑地制度が生まれた
 昭和49年1974年、「市街化区域内にある農地等の農業生産活動に裏付けられた緑地機能に着目して、公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等に役立つ農地を計画的に保全し、良好な都市環境の形成を図るため」生産緑地制度が設けられた。
 生産緑地法の目的には、第1条・・・農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資すること、と位置づけられている。具体的には、
1.公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等、良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること
2.500㎡以上の規模の区域であること
3.用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること
の条件を満たした農地で、土地の所有者が生産緑地の指定を希望し、都市計画で定められると生産緑地として認定され、課税等の緩和が適用される。
 そのために、生産緑地地区ではいくつかの行為が制限されることになる。第8条では、「生産緑地地区内においては、次に掲げる行為は、市町村長の許可を受けなければ、してはならない」とされ、
1.建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
2.宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更  ・・略・・
は、生活環境の悪化をもたらすおそれのないものに限り、市長の許可を受け、建築等を行うことができる。これも生産緑地制度の趣旨からは当然であろう。

生産緑地の解除
 生産緑地法では、生産緑地に指定されてから30年を経過した場合や、農業の主たる従事者が死亡等で農業の継続が難しくなったときは、市長に対し、時価で生産緑地の買取りを申し出ることができる(生産緑地法第10条)、ことになっている。しかし、どの市も財政状態はかなりきびしく生産緑地を買い取る例は極めて少ない。私の経験した都市計画審議会案件でも、道路の拡幅整備、あるいは公共施設用地として買い取る例がときおりあるが、ほとんどは買い取りがなされないまま、生産緑地が廃止されてしまう(生産緑地法第14条)。
 生産緑地の廃止とは、農地であった土地が通常の宅地として扱われることを意味し、所有者の死亡の場合は遺産相続税問題が被さってくる。結果として、生産緑地であった土地は開発業者に売却され、住宅地などに開発されることになる。

上尾市都市計画審議会での発言
 ・・国道、市道の買い上げは止むを得ないというのもありますが、その他の生産緑地の解除後に着目すると、かなり過密な住宅が広がっています(配付資料、赤斜線が生産緑地解除申請地)。すでに生産緑地を解除した周辺地区では宅地開発が進んでいます。今回の生産緑地の解除で、相続税等を支払うため、結果として住宅開発が進むと考えられます。
 住宅地の発生の仕方を現地で見てきました。生産緑地解除はそれぞれの所有者の個別の状況で発生しますので、通常は、バラバラに、しかも500㎡以上という決まりですが、今回の案件をみても0.16ha、0.27ha、0.12・・などとそれぞれの土地は必ずしも広くはありません。その土地を効率的に住宅地に開発をすると、いわゆる路地状道路に住宅を並べるということになり、結果的に道路形状が狭隘で複雑な形のままのミニ開発地が集積した住宅地ができあがってしまいます。
 これを規制をする法的根拠はありませんが、上尾市都市計画マスタープランの54ページには「市街化区域内農地の計画的な宅地化誘導」という項目があり、「市街化区域内の一団の農地が宅地化される場合には、地区計画などにより、計画的な宅地化を誘導して良好な住環境の形成を図ります」とうたわれているのです。
 生産緑地は生産性と同時に緑地性があると認められ、法的な特典があるわけですが、そういう良好な環境をなるべく維持をすることで、住む方も周辺の方も逆に付加価値を高めた住宅地に住めるという環境ができるはずなのです。それが個別に生産緑地が解除され、個別にミニ開発が行われると、好ましい住環境形成はとても難しくなってしまう。生産緑地解除とともに地区計画をかけるなど、緑地の豊かな住宅地計画が実現すれば、上尾市の付加価値を高めるのではないでしょうか。生産緑地解除に伴う新たな住環境形成についての議論を深めていただくよう期待します・・。

生産緑地の今後は?
 埼玉県上尾市の生産緑地の動向をみると、1992年から2003年までに、167.14haから151.90haに減少している。12年間で15.24haの減、年平均1.27haが生産緑地を解除している。後継者の不足を勘案すると生産緑地の現象には拍車がかかることはあっても、復活は難しそうである。
 最近1年間で解除された生産緑地のその後を聞いてみると、相続によるものは14条買取り申し出があったが買い手がなく、結局売却され宅地として開発された(10件)か、公共用地設置によるもの(=都市計画変更により、一部または全部を解除)が9件であり、少なくとも緑地空間はすべてなくなったことになる。
 今後の生産緑地は、相続発生により生産緑地の解除は進むと考えられるが、市の財政が厳しい状況では買い取ることは非常に困難であり、他の農業経営者(又は従事者)が買い取る事例もみられない。
 みんなで知恵を出し合わないと、生産緑地はいずれ消滅である!!

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