ドイツでは、ライムギ粉とコムギ粉を配合した混合パン(ミッシュブロート)が全消費の65%で最も多い。これに次いでオールライムギパン20%、コムギパン10%、特殊パン5%の割で消費されている。基本的に、北に行くほどライムギの、南に行くほどコムギの比率が高くなると言われる。ここで、コムギパンよりライムギパンの方がいかに焼くのが難しいか、簡単に説明しよう。
ライムギとザウアータイク(サワー種)
ドイツ語ではそのもの100%でパンが焼ける穀物、小麦とライ麦をBrotgetreide=パン用穀物という。しかしライ麦粉でパンを焼くというのは、小麦粉で焼く様には簡単にはいかない。私も経験があるが、ライ麦粉の生地は伸びなくてべちゃべちゃといつまでもまとまらず、伸縮性に富んだ小麦生地とは、大きく違う。これらの違いは、膨らみと弾力性に重要なグルテンと関係が深い。このグルテンが、ライ麦生地ではほとんど形成されないのである。
ライ麦粉には、ペントザンという繊維質の一種が小麦粉に比べて3.5倍近くも多く含まれている。ペントザンは、とても強い吸水力を持っており、焼きあがったライ麦パンのしっとりした舌触りや、長期保存を可能にしている。ただ、この強い吸水力によって粉と結び付く水分がすっかり取られてしまって、ライ麦粉中のグルテン形成を妨げてしまう。(そのため、小麦粉にペントザンを加えても、小麦生地のグルテン形成も難しくなる。)
そして、もう一つ重要な問題はライ麦中の酵素の働きである。生地の中にはいろんな酵素が存在するが、ここで重要なのは澱粉を糖に分解するアミラーゼ。小麦でもライ麦でも、成分の約70%近くは澱粉からできている。カスタードクリームや、とろみ付けの水溶き片栗粉からもわかるように、澱粉は、熱を加えると糊状に固まるが、パン生地の場合も同じように、焼く過程で澱粉が糊状になって固まって身の部分ができている。ライ麦澱粉が固まる温度は55℃~70℃、小麦粉澱粉は65℃~80℃。そして、澱粉分解酵素アミラーゼの活動に適した温度は、60℃~70℃。アミラーゼは特に、凝固した後の澱粉を分解するのを得意とするので、凝固温度の低いライ麦澱粉は、とてもたやすく糖に分解されてしまうことになる。すると、オーブンの中のライ麦生地は、水分を保てなくて生焼けの状態になってしまう。だから、ライ麦粉では小麦粉と同じようにはパンは焼けないのである。
これらの理由から、ドイツでは、ライ麦パン作りにザウアータイクを使用する。ライ麦と水を混ぜておくと、粉についていた酵母、空気に飛んでいた酵母が発酵を始め、そのうちに乳酸菌が発生して、澱粉を発酵させ始める。これに、水と粉を継ぎ足して行ってやると、乳酸菌が他の菌を抑えてくれるので、最終的に自然酵母と乳酸菌の入った酸味のあって発酵力のあるザウアータイクができあがる。
アミラーゼ(酵素)の活動は、ザウアータイクの酸によって抑制されるので、ライ麦澱粉がきちんと水を取りこんで凝固することができるのだ。また、ザウアータイクを加えて作ったライ麦パンは、弾力性が強まり、耐久性も高まるので、きれいに切れるように焼きあがる。
アミラーゼの働きを抑える役割のためにザウアータイクを使うのだが、やはりこれのおかげで深い良い味にもなる。時間をかけて出来あがったザウアータイクの中には、酵母と乳酸菌が作り出したいろいろなアロマ成分や味わいが含まれていて、こういうものはとても複雑なので、短時間で簡単には作り出すことができない。
以上の理由から、ライ麦が多く入ったパンはふくれていないキメの細かなパンで、すっぱい味がする。
そしてこのザウアータイクの中に含まれる有機酸が消化を助ける。肉食中心のドイツ人にはぴったりというわけだ。
ライムギとザウアータイク(サワー種)
ドイツ語ではそのもの100%でパンが焼ける穀物、小麦とライ麦をBrotgetreide=パン用穀物という。しかしライ麦粉でパンを焼くというのは、小麦粉で焼く様には簡単にはいかない。私も経験があるが、ライ麦粉の生地は伸びなくてべちゃべちゃといつまでもまとまらず、伸縮性に富んだ小麦生地とは、大きく違う。これらの違いは、膨らみと弾力性に重要なグルテンと関係が深い。このグルテンが、ライ麦生地ではほとんど形成されないのである。
ライ麦粉には、ペントザンという繊維質の一種が小麦粉に比べて3.5倍近くも多く含まれている。ペントザンは、とても強い吸水力を持っており、焼きあがったライ麦パンのしっとりした舌触りや、長期保存を可能にしている。ただ、この強い吸水力によって粉と結び付く水分がすっかり取られてしまって、ライ麦粉中のグルテン形成を妨げてしまう。(そのため、小麦粉にペントザンを加えても、小麦生地のグルテン形成も難しくなる。)
そして、もう一つ重要な問題はライ麦中の酵素の働きである。生地の中にはいろんな酵素が存在するが、ここで重要なのは澱粉を糖に分解するアミラーゼ。小麦でもライ麦でも、成分の約70%近くは澱粉からできている。カスタードクリームや、とろみ付けの水溶き片栗粉からもわかるように、澱粉は、熱を加えると糊状に固まるが、パン生地の場合も同じように、焼く過程で澱粉が糊状になって固まって身の部分ができている。ライ麦澱粉が固まる温度は55℃~70℃、小麦粉澱粉は65℃~80℃。そして、澱粉分解酵素アミラーゼの活動に適した温度は、60℃~70℃。アミラーゼは特に、凝固した後の澱粉を分解するのを得意とするので、凝固温度の低いライ麦澱粉は、とてもたやすく糖に分解されてしまうことになる。すると、オーブンの中のライ麦生地は、水分を保てなくて生焼けの状態になってしまう。だから、ライ麦粉では小麦粉と同じようにはパンは焼けないのである。
これらの理由から、ドイツでは、ライ麦パン作りにザウアータイクを使用する。ライ麦と水を混ぜておくと、粉についていた酵母、空気に飛んでいた酵母が発酵を始め、そのうちに乳酸菌が発生して、澱粉を発酵させ始める。これに、水と粉を継ぎ足して行ってやると、乳酸菌が他の菌を抑えてくれるので、最終的に自然酵母と乳酸菌の入った酸味のあって発酵力のあるザウアータイクができあがる。
アミラーゼ(酵素)の活動は、ザウアータイクの酸によって抑制されるので、ライ麦澱粉がきちんと水を取りこんで凝固することができるのだ。また、ザウアータイクを加えて作ったライ麦パンは、弾力性が強まり、耐久性も高まるので、きれいに切れるように焼きあがる。
アミラーゼの働きを抑える役割のためにザウアータイクを使うのだが、やはりこれのおかげで深い良い味にもなる。時間をかけて出来あがったザウアータイクの中には、酵母と乳酸菌が作り出したいろいろなアロマ成分や味わいが含まれていて、こういうものはとても複雑なので、短時間で簡単には作り出すことができない。
以上の理由から、ライ麦が多く入ったパンはふくれていないキメの細かなパンで、すっぱい味がする。
そしてこのザウアータイクの中に含まれる有機酸が消化を助ける。肉食中心のドイツ人にはぴったりというわけだ。