2月23日(火)、晴れ。
少し寒くなりましたが、平年並みとか。
隣の会社がお休みで、今日は祝日だったんですね。
ところで、本日の映像は「守幸の駒」。
左が、正真「守幸」銘、漆書きの駒。
右が、それを小生が25年くらい前に複製・再現した駒。
正真の駒は、25年くらい前、大阪のある方が名古屋で見つけて購入されたものです。かなり使われたことで、文字の漆が消えたり薄くなったりしています。
ある時、その方が私のところに来られて「消えている文字を再生してほしい」と、言うことでした。
「ドレドレ」と拝見すると、かなり年季が入った駒で、玉将の尻には「守幸」の銘が記されていました。
「この駒は、江戸時代の駒で、おそらくは250年くらい前に作られたモノだと思います。貴重な駒だから、この駒には手を加えずにしばらくお預かりして、形と文字を忠実に再現した駒を作ります」ということで、それを買っていただいて、古い駒は、そのままお返ししました。
それから10年後、「あの駒の写真を撮りたいので、もう一度、見せてほしい」と、お願いしたところ、「いいですよ。あの駒は、消えた文字を自分で墨で書き入れて、普段はそれを使って、熊澤さんが作ってくれた駒は、使わずに大事にしまっています」でした。
その言葉に驚いて、「それは逆ですよ。とにかく、もう一度あの駒を見せてください」と。
10年ぶりに拝見した駒は、墨で汚されたようになっていました。
それで、たまたま持っていた別の書体の「小生作の彫埋め駒と交換していただけませんか」と提案したところ、その方は「喜んで・・」と快諾。
すぐさま私は、汚れた墨の文字をゴシゴシと、消せるだけ消すようにしました。
その結果が、本日の映像の左の一組。
ということで、この駒は現在、小生の所有となって、復元駒と一緒に工房にて展示していますので、ご訪問の時はご覧いただけます。
ところで、漆文字が消えた駒の文字をどうして復元できたかです。
きっと不思議に思う方いると思います。もちろん、玉将とか金将の文字は、擦れていないので、そのまま残っています。
そのほかの文字は、半分ほど残っているものもあるのですが、銀将の裏などの文字は全く消えてしまっています。
しかしながら、漆で書かれた文字は消えてしまっていても注意深く見れば、文字の跡は陽の焼け方が少なく、白っぽい木地の地肌が透けるように残っていて、それを見れば元の文字の形が分かるのです。
とはいえ、その折角の白い文字跡も結果的に墨で汚されてしまったことは、いささか残念ではあります。ですが、一部ところどころは今でも元の文字の形がうっすらと残っていて、それをご覧いただけます。