中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

松島や

2009-10-20 07:47:01 | 音楽
 今週は山響のスクールコンサートで、三陸のあたりをまわります。初日の昨日は東松島、いわゆる奥松島と言われる辺りでした。太平洋側は気候が穏やかです。少し暑いぐらいでした。


 さて松島といえば、「松島や ああ松島や 松島や」ですよね。昔は松尾芭蕉の作品だと教わりました。
「どうした?手抜きしちゃったの?」とも思えますが、やはり本当は芭蕉の句じゃないらしいですね。でも実際、松島の景色のあまりの美しさの前で、良い句ができなかったという話は本当らしいです。逆に芭蕉の「誠実さ」がうかがえるような気がします。


 ルーヴルのミロのヴィーナスの前で、その美しさに涙し、ひざまづいた。すると
「私には腕が無いのです。あなたを助けてあげたくてもできないのです。」
という声が聞こえてきた…。

 ハイネが書いた文章の中に、確かそういうくだりがあったような記憶があります。ロマンティックでいかにもハイネらしいと思いますが、「自分が創りあげるものでは、とうていこの美しさには到達できない」という真剣な告白は、何だか心にささります。


 演奏家はこういう事を考えてしまうと、怖くて名作を演奏できなくなってしまうので、考えないことにします。「ああハイドンや…」と言ってみてもしかたがないですからね。でもあまりにも不感症になってしまって、「とりあえず弾く」ばかりになってしまうとだめなんでしょう。「まずその美しさにひざまづく」ような気持ちを忘れないようにしたいな、と。
コメント
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