中爺通信

酒と音楽をこよなく愛します。

顔を隠して

2020-04-30 22:30:52 | 雑記
安部公房の「他人の顔」という小説があります。

 実験中の事故により顔を大火傷した男の話です。包帯でグルグル巻きの顔は、周囲から敬遠され、自分は「顔」というアイデンティティを失ったのだと思い悩む主人公。自尊心を回復するために、研究に研究を重ねて、普通の、健康な人と同じように見える「仮面」を作製するのですが…。

 電車に乗っても、包帯で覆われた自分の顔を怖がる子供に気後れしてしまう自分を、なんとか取り戻そうとする主人公の切実さに胸が痛くなります。私の大好きな小説のひとつです。


 さて、マスクをしていないと入店できない店も増えている昨今。肝心のマスクがどこでも手に入らないのに、顔をあらわにしていることが、公衆衛生に反するという生きづらさ。

 ほとんどの時間、家にこもり、どうしても外に出る時には顔を隠さなければならない。

…極限の状況で見える人間の本質をえぐる安部公房先生でも、全く想像できない世の中です。


 そんな中で、親しくさせてもらっている方から、手作りの布製マスクを頂きました。しかも、いろいろな柄で作ったものを何枚も詰め合わせで。…これはありがたい。今、もっとも価値のあるプレゼントかもしれませんね。

 
 これなら「他人の顔」の主人公も、人の皮膚の型をとったり面倒なことをしなくても、自分の気に入ったデザインで、おしゃれに顔を隠しながらアイデンティティを保つことができたかも知れない。

 愛用させていただきます。
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勇者も自宅で

2020-04-29 22:00:05 | 山形
ゴールデンウィークが始りました。


…世の中は新緑を求めて楽しい休暇が始まるというこの時期に、昼間からホールにこもって、ほこらだの洞窟だの幽霊船だのと「ドラクエ」の世界に縛り付けて良いものだろうか?

 これが例年の悩み。ここ数年いつも4月29日は「ドラクエ・コンサート」の日。良いのかなと思いながらも、毎年満席のお客様に恵まれ、好評をいただいております。


 今年もそのはずでした。

 しかし、今年のゴールデンウィークは「ステイホーム」。静かな山形です。

 その流れでもちろんドラクエも、延期になりました。勇者も「ステイホーム」ということですね。冒険の旅も、しばらくおあずけ。


 山響に関する限り、この勇者は世間のサラリーマンと同じような動向をするようで、次の冒険の旅は「ゴールデンウィークが無理だったから、次はお盆だな…」と算段しているようです。

 ということで、今日の予定だった山響「ドラゴンクエスト・コンサート」は、8月15日に延期の予定。

 冒険の旅に出たいと思いつつ、ウズウズしながらステイホームしている勇者に免じて、お許しください。そして、仏教に明るくないために、皆さまのお盆に充分に配慮しきれず、そんな時期に決めてしまったことを大目に見てやっていただきたい。

 ドラクエファンの皆さまに、改めて気兼ねなくお会いできる夏が来ることを楽しみにしております。
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桜の木の下には

2020-04-28 21:04:46 | 山形
 風で散った桜の花びらを、地面につく前にキャッチすると良いことがあるという言い伝えを聞いたことがあるでしょうか。私は幼い頃にそう言われてからというもの、毎年、できるだけチャレンジしております。…もちろん成人してからは人目のない時に。

 そして子供に、それができる程度の運動能力が備わってからは、私に代わってそれをやらせるようにしております。


 さて、全国的に「お花見」が禁止されているこの春でしたが、こんな社会不安の時だからこそ、キャッチしなければ。

 山形でも桜の名所は閉鎖されたりしていますが、そんなことで諦めるわけにはいかない。

 風が強くてバラバラと桜が散っている時を見計らって、その下へと娘を連れて行き、猟犬を放つように。
「さあ、取りなさいっ!」



 今年もしっかりキャッチ。今後の日本の回復を祈っておきました。

 早く、平穏な日々が戻りますように。
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続・YouTuber

2020-04-23 23:21:45 | 山形弦楽四重奏団
 何もできないながら、何かしようということで、我が山形Qでも、メンバーのIT担当大臣のVc茂木氏が、過去の定期の録音から一つ公開しました。

 前回の定期のアンコール、クルッセル「クラリネット四重奏2番より」です。記録録音なので、動画がついていないのは勘弁していただくことにして、ぜひご試聴下さい。

 YouTubeで山形弦楽四重奏団を検索するとできます。

 そして、もしよろしければ、チャンネル登録と「いいね」のクリックを、ぜひよろしくお願いします!(…いろいろと、覚えたての言い回しがぎこちない。)

 評判が良ければ、第二弾もアップする予定です(…偉そうに言いましたが、正しくは、茂木氏がなさいます)。
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ご冥福を

2020-04-22 22:45:55 | 音楽
 コロナ関連の話ではありませんので、念のため。


 大学時代の音楽の教授であった音楽学者の皆川達夫先生が逝去されました。92歳で老衰ということなので、ご立派と言えるかもしれません。

 NHKラジオの「音楽の泉」で声を聞くたびに「いつまでも元気な人は元気なんだな…」と感心しつつ、懐かしく思っていました。

 何しろ、すでに亡くなった私の母も、芸大生の時に先生の講義を受講していたのを知っていたので。


 講義は面白かった。夜道で悪漢に襲われそうになっているご婦人を、得意の空手で救った話とか、音楽と無関係な武勇伝(やや眉つばの大盛り)を入れてくるので、普通大学の一般教養の音楽ながら誰も飽きない。なかなかの人気講座でした。


 大学のオーケストラの顧問でもありました。ちょうど、私の在学中に65歳の退官を迎えたので、記念演奏会もありました。お得意の駄洒落なのかもしれませんが、プログラムはモーツァルト の「戴冠ミサ」。先生の指揮で、私がコンサートマスターを務めさせていただきました。

 学者なので指揮はお上手とは言えない。しかしソリストに招いた一流の声楽家たちに対して、私たちアマチュアの学生と同じように厳しく発音の指導をするのを見て「こんなにすごい人だったのか」と、失礼ですが、姿勢を正しました。

 東京芸術劇場の楽屋で終演後にご挨拶をした時、「君にはずいぶん世話になったね」と握手を求められた時にはジーンときました。昔の年輩の男の人は、みんな骨が太かったのか、温かくて分厚い手をしてましたね。


 先生とはその後お会いする機会はありませんでしたが、山形でもラジオでお声を聞く度に、その時の掌の感触を思い出していました。


 ご冥福をお祈りします。ありがとうございました。
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YouTuber

2020-04-21 21:25:19 | 山形交響楽団
今の子供に「大きくなったら何になりたい?」と訊いたら「ユーチューバー」と答えた子供がいるらしいとを聞いて、世も末だなと思いました。手に汗してして働く感覚を、そんなに幼い子が否定するとは!


…しかしその感覚は古過ぎる。

 古くは、瓶に手紙を入れて海に流したり、伝書鳩を使ったり、アマチュア無線でCQCQと言いながらダイヤルを回したり…古来より人は、不特定多数の人とつながろうと努力を重ねてきたのです。

 せっかく、技術が発達した現代に生きるわけですから、それを利用するべきです。実際、こんなシーラカンスのような私でさえ手紙を瓶に入れず、こうしてポチポチやっている。

 さらにそれは、このように外に出られないときにこそ、真価が発揮されるというものです。


 ということで山響も、YouTubeを活用した発信にさらに力を入れてみることになりました。

 さしあたっては、普段のコンサートでは目にすることのできない、子供向けのひと幕。創立よりずっと、各地の学校の体育館でやってきたものの一端をお目にかけようと。…「音楽なぞなぞ」。


 ぜひ、YouTubeで山形交響楽団を検索、ご視聴いただければと思います。
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家庭円満

2020-04-20 22:36:46 | 危機管理
 活動自粛が続いてます。仕事もなし、時間があっても旅行にも行けず、地元の日帰り温泉もほぼ閉鎖。もちろん飲みにも行けません。

 閉塞感があるのは確かですよね。


 家族で見るテレビのニュースも暗い。仕事がなくなって家にいるしかない夫によるDVが多発している話。

 娘がつぶやく。

「仕事ないって言っても、うちのお父さんほどじゃないはずなのにね…」

 ……。


 …………。
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エチケット

2020-04-18 22:55:29 | 危機管理
 我が家のマンションのエレベーター前にも、張り紙がつきました。感染防止のためです。

 混んでいるときには乗らない

 中で会話しない

 ボタンを触れた手で顔をさわらない

など。

 感染症の嫌なところは、人間不信になるところですね。


 恐怖映画において、一番怖いのはモンスターではない。親しげに話しかけてくる普通の人間が「もしかしたらこいつは…」と思えるところです。古くはドラキュラもの。その後はゾンビもの。さっきまで味方だった人物が信用できない。

 私の場合、花粉がきつい日には咳き込むことがよくありますが、最近は我慢して、隠れた場所に行ってから咳をします。これが最新の「咳エチケット」か。

 周囲の人に恐怖を与えない。

…嫌な世の中になってしまいました。
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山形弦楽四重奏団第7…

2020-04-17 23:35:13 | 山形弦楽四重奏団
 死んだ子の歳を数えるようなことは…という言葉があります。しても仕方のない、わびしい行為であるという意味ですね。しかし同時に、それをせずにはいられない人の「性」というものもあります。


 本来であれば今頃は、山形Qの「第75回」の演奏会を終え、いつも打ち上げをやる居酒屋で、日本酒とトンカツ(知らない人は、合わないと思うかもしれませんが、この居酒屋のトンカツは絶品なのです)で、次回演奏会への意気込みを新たにしている最中のはず。
 
 …残念です。全国がいま、まさに緊急事態宣言下に置かれているとは、3ヶ月前の前回の頃は、誰も予想できませんでしたね。

 一寸先は闇…とはいえ、これほどのことが起こるとは。山形Q20年の歴史において、年4回の定期演奏会の歩みが滞ったのは、もちろん初めてのことです。


 呆然とした気分のまま、うわ言のように申し上げますが、次回は7月19日。できるとしたらではありますが…

…いやいや。気持ちが下がってはいけません。

 明るさを取り戻した世の中に華をそえるべく、7月19日(日曜日)に、気持ちも新たにお待ちしております!

 今日の分のチケットをお持ちの方、払い戻し希望の方はご連絡下さい。しかし、お持ちのチケットでそのまま、次回ご入場いただけます。ぜひまた文翔館で、お目にかかることを楽しみにしています!
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遠隔社会

2020-04-15 21:20:50 | 子育て奮闘記
 新学期。娘の中学でも、新しいクラスと担任が発表になりました。

 …しかし、もちろん登校はありません。

 区切られた時間内に、父兄が学校に前年の成績表と新しい教科書と宿題を受け取りに行くだけです。

 それでも、クラス替えこそが最大の関心事である中学生には、大問題がひとつ解決された感があるようでした。

 その後は娘のラインが鳴りっぱなし。「新しいクラス、よろしくね〜」的なやり取りが止まらない。

 普段なら、「スマホばっかり見てると取り上げるよっ!」と怒るところですが、会えないのだから仕方がない。これも「テレワーク」みたいなものなのかと、受け入れざるを得ない。これについて行けない「年輩者」が、今、問題になっているわけでもありますし。

 学校は停滞しているはずなのに、停滞していない分野もある。

 東京から、息子の大学の授業料の請求書が送られて来ました。まだ始まってないはずなんですが。

 ……。
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耐え忍ぶ

2020-04-13 14:21:08 | 子育て奮闘記
 最近、「息子さんはどうしてるんですか?」とよく訊かれます。

 非常事態の東京にいる家族のことを純粋に心配してくれている気持ちがほとんどでしょうが、言葉の片隅に若干の「コロナ疎開」「コロナ帰省」への不安も感じられます。

 山形でも帰省者からの感染がありましたからね。

 …大丈夫です。ウチの息子は、そんなことぐらいでは帰省しませんので。盆暮れにも、実家に帰るという選択肢を思いつかないほどですから。

 とりあえず元気で、それなりに大人しく過ごしているようです。

 しかし、気の毒なことこの上ない。大学3年生の春。人生でもっとも「調子に乗っている」べき歳頃。そんな「花の学生生活」から、不要不急の夜の街と、人との濃厚接触を取り除いたら、いったい何が残るというのか。

 突然にやって来た「耐え難きを耐える」時代は、まだ続きそうです。
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美しい星

2020-04-11 22:42:08 | 映画・ドラマ
この外出自粛要請の中で、繁盛しているところといえばやはり、レンタルビデオ屋でしょう。

 我が家はもともと、日ごろから映画をよく見るのでレンタル屋の常連です。しかし店が、これほど混んでいるのは見たことがない。

 ということで、最近観た中で、一番面白かったものを。

 「美しい星」。原作は三島由紀夫です。

…と言うと、文学的で、わかりづらくでもそうと正面切って言いづらい、居心地の悪い映画なのかなと思うことでしょう。

 ぜんぜん違います。主演はリリー・フランキー。あとは橋本愛、佐々木蔵之介、亀梨和也、中嶋朋子など。…トレンディ(死語)な感じがしますよね。

 もちろん、原作の深さとパワーには遠く及ばないわけですが、大健闘だと思います。

 中身を簡単に言うと、人と人とは、所詮、異星人ぐらいの感性の隔たりがある。それは、家族であっても例外ではない。ではそのうえで、どうするか?…その辺りがテーマでしょう。


 実に素晴らしい映画でした。映画としてというより、これだけマイナーな、偏った文学作品を映画化しようと思ったその姿勢に感銘を受ける。「超B級」なわけですが、こういう、知的なB級はなかなかありません。

 そもそも、これだけみんなが本を読まなくなった昨今。もっと名作を映画化すれば良いのにと思います。どうせ、ほとんどの人が原作未読なのだから、自由度もあるはず。


 …おすすめの一作です。
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静かな春

2020-04-10 21:50:17 | 山形
 山形も、桜が満開となりました。

 これは昨日の、霞城公園の桜。山形市で一番の桜の名所です。

 例年なら露店が並び、そこかしこにシートを敷いて花見の宴会が行われていますが、今年は人もまばらで、静かに桜を見ながら散歩をする感じ。「花見」というより、どうせ散歩するなら、たまたま桜が咲いているところの方が気持ち良いと思った人の集まり。

 「集まり」と言っても、ニュースで「どうですか、渋谷の街もこんなに閑散としてます!」という映像よりもはるかに少ない人数です。

 こんなに落ち着いて静かに咲けるのは100年ぶりぐらいかな…

 …と、桜は喜んでいるかもしれませんね。


 そんな山形市ですが、ついに感染者が出たせいもあって、この霞城公園も今日から閉鎖。

 さらにひっそりとした満開になります。
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陸奥八仙「新春祝酒」

2020-04-08 17:00:23 | お酒の話(県外)
「音楽は嬉しい時にはその喜びを倍に、悲しい時にはその悲しみを半分にしてくれる」
 というのは、羽田健太郎氏の名言だと聞きましたが、言い得て妙だと思います。しかしそれは、音楽以外にも当てはまるような気もします。

 
 ということで、青森の銘酒「陸奥八仙」の赤ラベル、純米吟醸の生酒「新春祝酒」を。


…春だとは言っても、祝うようなことも無いし、そんな気分でもない今日この頃。

 でも、新酒に罪はない。せめて、自宅謹慎のお供をしてもらいましょう。

 うつむきながら、開栓。口にすると…

…その瞬間、満開の桜の下にいました。澄んだ風と一緒に、花びらが頬に当たります。どんなことがあっても、日本の春はやっぱり美しい…

 青森の酒米「華吹雪」が創り出す蜃気楼にやられました。

 
 自宅で、美しい春を堪能しております。
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小踊りするも

2020-04-07 09:30:14 | 子育て奮闘記
 昨日やっと娘が退院。12日間の入院から解放されました。ということで、私たち夫婦の病院通いも終了。

 入院をほとんどしたことのない私は体験がありませんが、腕にずっとつけられていた点滴が外されるということは、言葉では表せないほどの開放感をもたらすものなんですね。人は嬉しいと、本当に踊り出すのだということがわかりました。

 そして、もうひとつ嬉しいのは、翌日からの新学期に間に合ったことだったようです。新しいクラスの発表を伴う始業式は、どうしても休みたくないと、病室でしきりに言っていましたので。…中2ですから。いろいろ難しい人間関係に出遅れたくない気持ちはよくわかります。

 ところが。夜になって、学校から始業式延期の連絡がありました。

 …最近、こんなことばっかりですね。
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