Takepuのブログ

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台湾の学生たちが立法院退去へ

2014-04-08 00:24:05 | 時事
中国との「サービス貿易協定」に反対して、台湾の国会にあたる立法院を占拠していた学生たちは7日、立法院から10日に退去すると発表したという。3月18日から続いていた台湾学生運動のうねりが収束に向かうが、まったくイニシアチブを握れなかった馬英九総統は窮地に追い込まれ、台湾政局は混沌とするだろう。

6日には与党・国民党内で馬総統と対立する王金平・立法院長(国会議長に総統)が、学生たちを見舞い、リーダーには面会出来なかったが「立法院などによる監視機能を定めた法律が成立するまではサービス貿易協定の審議を始めない」と表明、学生たちは一定の評価を示し、混乱収束に向かったと見られる。占拠が長引けば民心を失うとの判断もあったかもしれない。

馬総統は7日、国民党の立法委員(国会議員)による会議の席上、王金平院長の声明はサービス貿易協定の審査に反対するものではなく、政府の主張とあいたがえるものではない、としたが、実際は自らが何を語っても動かなかった学生たちが、政治的ライバルの王院長の声明で事態収束に向かうことに、地団駄を踏んでいるに違いない。王院長は今回の会議も含めて、馬総統が開催したサービス貿易協定に伴う学生運動解決のための会議を欠席しており、党内の軋轢が深まるのは確実なようだ。

王院長は日本統治下の高雄生まれの73歳。国民党の中でも李登輝元総統に近い本省人グループの代表人物という。2005年の党主席選挙では対抗馬の馬英九(当時台北市長)に惨敗。このときの馬側の王に対するネガティブキャンペーンが相当厳しいものだったためか、副主席就任要請を断っており、また08年総統選の副主席候補出馬要請も蹴った。13年には、民進党立法委員議員との電話盗聴記録が公開され、検察側への上訴断念を働きかけた容疑で、国民党の党籍抹消処分を受けたが、台北地裁が王院長の地位保全を求める仮処分申請を認め、党籍は当面保留されている。などなど、馬総統とは決定的に決裂している。


学生たちは、一定の成果を得たとして、今後も中台協議監督条例草案、サービス貿易協定の審査、公民憲政会議の開催--を引き続き要求していくという。

今回の運動は蜜月状態に入ったと見られていた中台関係に大きな衝撃を与えた。中国側が「協定遵守を」と強い態度で要求すればするほど(おそらく中国側は空気が読めないので、そうするだろう)、台湾で経済不況がより悪化して中国依存度が高まらなければ、中国への反発は強まり、「反中」の空気が強まるだろう。

馬本人は香港生まれだが、親は中国湖南省出身の外省人のカテゴリーに属する。中国大陸から蒋介石に率いられて台湾に来た人々に連なるアイデンティティーを持ち、中国との統一を志向していると言っていいだろう。2期目後半(3選はない)の馬総統が、中国との関係強化を焦り急速に進めたことによる逆風がこのような形で出て、台湾の人々も一定の理解を示したことで、次の民意代表選出、総統選挙などで、台湾の主体性、独立性を強調する民進党の考え方が今以上に受け入れられる可能性が出てきた。