Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

毎日、朝日が独自ダネ

2011-10-02 15:23:46 | 時事
プロ野球でどうした、こうしたと騒いでいた日、毎日新聞と朝日新聞は2日付の新聞で中国関連の独自ダネを掲載した。
朝日の「高速鉄道欠陥 開業前に把握」というのは、鉄道省装備部の劉剛副主任が、北京-上海間の高速鉄道の開業前、5月30日に上海で開かれた会議の席上、安全の根幹にかかわる装置に不具合があり、さまざまな部品で安全基準を満たしておらずトラブルが多発しているとの報告があったと明らかにしたというもの。朝日は、開業前からトラブルについて指摘されていたにもかかわらず、7月1日の共産党創設90周年の前日に開通させる、というメンツが安全より優先された、としている。

会議の中身を獲った、という意味ではわかりやすい特ダネだ。会議参加者がネタ元で、おそらく現状の鉄道省、というか中国当局に対する不満から情報を提供されたものだろう。話の流れは想像しやすいが、個別にどのようなトラブルがあった、とそれぞれ報告の中身が出ていることが興味深い部分だろう。
運転士だけでなくメンテナンス要因の短期間での育成、人材不足などは以前から言われていたことだが、今回、明らかになった。

毎日新聞の方は、一般の日本人のみならず多くの台湾大衆にとっても理解しにくいテーマだが、中台関係に大きな影響を及ぼす可能性のある特ダネだ。「一つの中国あいまい 中台交渉文書で確認 92合意の背景明らかに」だが、このブログでも何度も紹介している「九二共識」(92年コンセンサス)と呼ばれる、一つの中国を巡る中国と台湾の暗黙の了解についての問題だ。

台湾側は「一つの中国の原則について、中国とはそれぞれの解釈で」という「一中各表」を主張しているが、中国側はこの考え方を公式的には否認、台湾との交渉をスムーズに進めるために事実上「黙認」している。この「暗黙の了解」は文書化されておらず、中台交渉担当者の口頭での約束、とされていた。当時の李登輝総統も、交渉担当者の辜振甫氏もこの約束の存在を否定。来年1月に実施される台湾総統選で、野党・民進党の総統候補である蔡英文・党主席も「存在しない」と主張していた。
毎日の記事は、この合意について、中国側の交流窓口機関「海峡両岸関係協会」からの手紙の現物を紹介しているもので、台湾側が「一つの中国の意味は各自で異なることを認知する」と付け加えていることが記されていたという。これに対して中国側は「一つの中国の政治的意味には触れない」と記述、意図的に対立点をぼかし、事実上「黙認」しているという内容になっているという。

これはかなりすごい特ダネだ。毎日の編集が価値判断できなかったのか、内容があまりにマニアックすぎて国際面一本になってしまったのか。
中国との関係改善を進め次期総統選に再選を目指し出馬する与党・国民党の馬英九総統は、中国との関係に踏み込みすぎると批判を受けるのでは、と慎重だが、基本的には中国との蜜月状態を進めたい。中国側も将来の統一を見据えて、独立派の民進党を排除して、国民党と交渉を続けるためにも国民党政権を望んでいる。この特ダネはこの状態に風穴を開けるもので、中国側が「一つの中国について台湾側が中華民国だと主張することを妨げない」との姿勢を文字で残してしまったことが公になってしまったことで、中国側はどう対応するのか。出方を見守りたい。たぶん、報道そのものを黙殺するかとは思うが。
台湾メディアもネットで見る限り、あまり追いかけていないようだ。台湾メディア界は高等教育を受けた外省人が多く、親国民党的な論調が強い。毎日の記事の下のほうに載っているように、台湾で総統選挙の関心は低く、生活に直結した問題に目が行き、中台両岸関係のような政治的なテーマは二の次になっていて、関心が低いのは間違いないのだろう。