わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

アイ・ラブ・坊っちゃん

2007年06月09日 | 観劇記
07年6月9日マチネ 東京芸術劇場・中ホール  1階15列目あたりのかなり下手寄り

音楽座ミュージカルの「アイ・ラブ・坊っちゃん」を観ました。

あらすじは、夏目漱石作「坊っちゃん」と、その創作に当たっている漱石自身の日常や回想が平行して描かれるということにさせて下さい。

実は、私は「坊っちゃん」をきちんと読んだことがありません。あらすじは知っているのですが。また、漱石の作品も殆どを読んでいるのに「坊っちゃん」と「吾輩は猫である」の代表作だけ、読んでいないのです。なぜなのか、自分でも不思議です???

さて、感想ですが、ただ一言「楽しかった」です。
いや~~~、本当に楽しい舞台でした。お話も楽しいし、構成が素晴らしいです。音楽座の作品の中でも、一、二を競う人気作品となっていくと思います。
なんだか、ここにミュージカルの真髄あり、という感じがしました。
ミュージカルの自由さが存分に生かされていました。
また、和洋折衷の時代背景も影響していますが、ミュージカルが日本の文化に溶け込んでいると思えました。
本当に、素晴らしい作品です。

私が行った公演はDVDの収録日でした。まあ、こういう日は全体に役者さんも固くなったり、がんばり過ぎたりするというのはわかっていますが・・・

一番がっかりだったのは、坊っちゃん役の吉田朋弘さんですね。「泣かないで」の好演が印象的だったので、ちょっと期待し過ぎたのかもしれませんが、声が響かないのです。ダンスはとてもキビキビしていて、坊っちゃんらしいのですが、歌や台詞になると力が入りすぎて声を響かせることが出来ていませんでした。当然聞き取れないわけですから、細かい部分は誤解したまま舞台が進んでいってしまいました。まあ、あとでつじつまは合ったのですが。
これからも、活躍を期待しているので、調子の悪いときの乗り切り方みたいなことも勉強して頂きたいと思います。

漱石の妻、鏡子を演じた秋本なみ子さんは、二幕はいいなぁと思ったのですが、一幕は相当???でした。漱石の妻のはずが、娘?あるいは年の離れた後妻?という印象でした。もう少し、落ち着いた雰囲気が欲しいですね。

とこのお二人は残念マークみたいになったのですか、他のキャストはもう「素晴らしい」を連発してしまいたくなるほど。
まさに、坊っちゃんが名付けた「あだな」の人間が、そこで生きているという印象でした。
山嵐の安中淳也さんは特筆すべきでしょう。吉田さんの調子がいまひとつという感じでしたので、山嵐が主役?という印象になっていました。

そして、以前の音楽座でも漱石を演じていたという松橋登さんは最高でした。本当の漱石かと思ってしまうほど、演じているというのではなく、漱石として生きていると感じました。私の場合、「坊っちゃん」ではない他の作品をも創作した漱石として、松橋さんの作り出される漱石を見ていたのかも知れませんが、あの作品もこの作品も書くであろう漱石がそこにいる、と思えたのです。脚本自体も、いろいろな作品の創作のもとになりそうなエピソードを織り交ぜていたのかもしれません。

さて、音楽座に参加なさってから、ご活躍の幅が広がっている広田勇二さんですが、今回は前の舞台から間もない上に、少々体調を崩されたこともあり、当初予定されていた役ではなく、小使いさんという役を担当されました。ファンとしては勿論残念な気持ちもありますが、舞台に立って下さっていることだけで嬉しいのです。役も、台詞こそありませんが、鐘をならして登場すると舞台の雰囲気を変えて下さいました。緊迫した場面が、ほんわりとするのです。でも、やり過ぎるとぶち壊しですから、微妙なバランスが要求される役柄でした。歌声も楽しめました。

音楽座ミュージカルは「音楽」座、というわりに、ダンスが多いなぁと感じていました。私としてはもう少しじっくり演技だけでみせてもいいのにと感じることも度々ありました。が、今回は、本当に演技・歌・踊りのバランスがとれていて、よかったと思います。
東京での公演が一週間と短く、一度しか行かれませんでした。また、近々東京での公演を期待したいです。