暇つぶし日記

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シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア (2014) ;観た映画、 Nov. ’15

2015年11月16日 16時09分15秒 | 見る

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(2014)

WHAT WE DO IN THE SHADOWS

ニュージーランド映画   85分

 
 
各地の映画祭で人気を博したニュージーランド発の痛快ホラー・コメディ。何百年も生き続けているヴァンパイアたちがシェアハウスをしながら現代社会の中でお気楽な毎日を送っているさまを、彼らの日常生活を密着取材しているドキュメンタリー作品の体裁でコミカルに描き出す。監督・主演はマルチに活躍するニュージーランドの人気コメディアン、タイカ・ワイティティとジェマイン・クレメント。

ニュージーランドの首都ウェリントン。陽気な379歳のヴァンパイア、ヴィアゴは、1軒の屋敷をヴァンパイア仲間4人でシェアして暮らしていた。彼らは日が暮れると起きだし、夜な夜な外へ繰り出しては遊び歩く愉快な日々を過ごしていた。そんなある日、長老ヴァンパイアのピーターが大学生のニックにうっかり噛みつきヴァンパイアに変えてしまう。こうしてシェアハウスに新たな仲間として加わった新米ヴァンパイアのニックだったが、ヴァンパイアのルールに無頓着で何かとトラブルの種に。ついには、人間の親友スチューを勝手にシェアハウスに招き入れてしまい…。  
 
以上が映画データベースの記述だ。  ハローウィンの夜にテレビでは近隣諸国も含めて深夜映画にホラー映画がかかるのが恒例で、そのうちの一つとしてオランダ国営テレビにかかったものが本作だった。 何年か前までは様々なこのジャンルのクラシック、例えばエクソシストやハローウィンのマイケル・マイヤーズのシリーズ、リングなども放映されていたのだが今日はテレビガイドには「宇宙戦争」のパロディーであるデイヴィッド・ザッカーの「最終絶叫計画4(2006)」もホラーどたばたコメディーとして観られたけれど、そうするとドタバタものではティム・バートンの「マーズ・アタック!(1996)」も同様なものとしてガイドに出ているのだった。 そんなことからもう些かホラーものに食傷気味の視聴者に笑いの要素を含んだハローウィン・メニューの一つとして出されたのが本作ということにもなる。
 
ニュージーランド映画というのも珍しく頓智の効いたアートに自覚的な知的なひねりの効いた作品となっている。 一つには登場人物たちがそれぞれカメラに向かってドキュメンタリータッチで語ることと、作中にカメラをカメラマンが操作するものとして意識されていて、時にはカメラに注文を出したり、避けたり自分の想いに耐えられず撮影を中止しろといったりすることにもヴァンパイアと人間の混交する「日常」が可笑しく、ある種ヴァンパイアの屈託が人間よろしく浮かび上がることになるのだが、時には人間を喰う、血を啜るということが当然のビジネスライクに淡々と語られ人間とヴァンパイア、それに死ということの垣根を普通に行ったり来たりする奇妙さが屈折した現実感をもたらすという高度に知的なコメディー仕立てである。 ここで微笑ましいのは人間もヴァンパイアも何とか保護しようとする人間の若者スチューの風貌で、そのぼそっとした垢抜けのしない青年が妙な連中のなかに混ざるとその普通さが却って可笑しさを醸し出す効果を果たしていることだ。 これは社会なり或る集団内での圧倒的多数の中に異質のものが混ざるとそれまでの価値観が揺らぐような現象にも比較できるものかもしれず、これも「差異」によって生起する笑いなのだ。
 
ヨーロッパから遥か離れたニュージーランドの英米文化というのが興味深い。 英国でもなくアメリカでもない日頃あまり接することのない種類のを見て新鮮な思いがした。 能天気に日本の首都で騒ぐ若者たちのハローウィンの狂騒をみてここの主人公たちをその群れの中に放ってやりたいという思いもしないでもないが、あんなもの、煮ても焼いても喰えぬわという返事が返ってきそうで、ドタバタを嫌う真面目なヴァンパイヤーたちに顰蹙を買うようなものからは遠く離れた、同じ島国であるニュージーランドのヴァンパイヤーたちの屈託を想う。