うたのすけの日常

日々の単なる日記等

うたのすけの日常 蔵出しエッセー 90年頃その3

2008-01-15 05:45:11 | エッセー

茶色です<o:p></o:p>

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 もし好きな色は何色かと問われたら即答は難しい。ただ直感的に私は花を連想するかもしれない。花壇に咲き競う、草花の色の豊富さには感嘆の声もあげようが、どの花の色が好きかとなればまた迷ってしまう。仕事や趣味の上で色に深くかかわる方々は別にして、一般の男性諸氏においては日常あれこれ、この色があの色がと、とりたてて意識していないのではないだろうか。いやたとえ心の隅にあったとしても、口に出してあれこれは、まして還暦を過ぎたあたしぐらいの年齢ではなかなか言えないと思う。<o:p></o:p>

 敢えて言えばあたしの場合、色にこだわるのは衣服を購入するときであろう。しかしその好みの色も、随分と曖昧であり多分に他力本願、女房主導、早い話が妻の好みに億劫さも手伝って馴らされたものだ。その上で言えばあたしの好みの色は茶である。<o:p></o:p>

 妻はお洒落を勧め、身なりに神経を使うよう言うが、煩わしがるあたしに業を煮やしては自分で選び、あたしはあたしで今日まで妻の買い揃えるもので大方満足の体たらくである。結果あたしに似合う色は茶ということになり、従って茶があたしにとって一番好ましい色であり安住できる色である。と同時に価値ある色でもある。<o:p></o:p>

 服装を茶系で統一し長年着続けていると、不思議なもので洋服店を覗いても茶以外のものには目が向かない。他人様も世辞がお上手でよくお似合いと言って下さるし、嬌声が充満弾ける場所に年甲斐もなく足を向ければ、「茶を着こなすのは一番難しいんですってよ、どなたのお見立てかしら」と相手は愛想を言う。あたしは一人含み笑いして悦に入るのである。そして最後にぼやくように言う「着せ替え人形ですよあたしは」<o:p></o:p>

 ならば冒頭の言辞はとり消さねばならぬ、好きな色はと問われれば開口一番茶色です。と…。<o:p></o:p>