観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「多重下請」「保険」「相続」「農業」「医者の給与」「解雇規制」「国民年金」を考察する予定。

需給ギャップを解消する政策にまつわる思い込み

2023-09-23 02:27:54 | 経済財政
今の日本は需給ギャップがあって、需要が足りていないという指摘があります。しかし財政政策も金融緩和も日本は相当程度やっており、まだ需要が足りないと単純に特攻していいのか疑問なしではありません。ですので、需給ギャップと経済についてよく考察してみることとします。

まず需要が供給を上回ると、インフレが進みます。だから供給に需要が追い付くまで財政出動、減税しろという声も出てくる訳ですが、現状ではとりあえずインフレ目標は達成しており、デフレマインドそのものは、適正なインフレ率が幾らになるかはさておき、需給ギャップを解消しなくても、政府の(緩やかな)インフレを維持する意志と能力次第でいずれ払拭されると考えられます(低金利円安と併せて国内に資金が還流していく流れです)。

また需給ギャップを埋めると言いますが、需要を増やせばいいと単純に考えられません。国債発行高は世界一で、減税しても貯蓄が国債に回る流れが出来ているからです。国債の規模が大きくなると、金利を上げにくくなり、円安に歯止めをかけられず、物価高を止められなくなる恐れもあります。需要が小さいとガンガン旗を振る局面でしょうか?

落ち着いて考えてみましょう。日本を成長させるには需要を増やす政策も必要ですが、需給ギャップを解消するには、無用の供給を絞る政策も必要になってくるはずです。つまり企業の過当競争が物価を下げている訳ですね。GDPは最終生産物への支出の合計ですので、供給を絞って価格を上げることは基本的にGDPに影響しないとも言えるはずです。具体的に考えると、例えば小売り・飲食が物価が上げられないから、お金を撒けば物価が上がると言っていいでしょうか?しかしお金があっても、安い店の方が競争力があるかもしれませんよね(将来を悲観してお金を貯めるかもしれません)。これは素直に考えると過当競争のはずです。つまり需要が足りないのではなく、供給が過剰なんです。競合する店舗がなければ、より安い店に人が流れることもありません。消費者にとっては、無論安い店が数多い過当競争の状態の方が都合がいいと思うかもしれませんが、それは近視眼的な見方で、利益率の低い企業はコストカットせざるを得ませんから、賃上げも設備投資も無く(収入に響き)、品質も悪くなると考えられる訳です。実際、日本の企業は国際的に利益率が低いと言われ、日本の労働者は低賃金を強いられてきており、貯蓄は積みあがって、国内に資金も回っておらず、経済がバブル以降長期低迷してきました。確かに物価が上がると大変な面はあるでしょう。しかし、賃金の上昇が物価の上昇を上回れば、生活は楽になります。日本としてはデフレや低インフレで積みあがった貯蓄を国内に還流させれば、眠っていた資金が活用される分、賃金の上昇が物価の上昇を上回るはずだと決め打ちするしかないはずです。実際、日本以外の先進国の実質賃金は上昇してきたんですね。

ところで「NAIRUとはインフレ率を安定的に保つ失業率の閾値であり、失業率がNAIRUを下回るとインフレ率は上昇していくとされ」ますが、日本は長らく低失業率にも関わらず、インフレ率は上昇しませんでした。NAIRUの存在は今の日本において幻想のように思われます。従って、失業率を下げておけば、その内経済が上がると単純に信じることは出来ません。もう「実験」は十分です。

少子化で日本の市場は縮小していくと予想されており、これは一面で真実ですが、この市場縮小予測が賃上げと設備投資、つまり需要の過少を促してきました。ただこの市場縮小予測は直ぐには動かせません。従って、生産性を上げて経済を成長させると共に、適切に供給も絞っていかねばなりません。少子化=お先真っ暗では必ずしもありませんが、日本がこれまでの政策を変更しなければ、何時か状況が好転すると思うことも出来ないはずです。

結局、需要の拡大を促し、適切に供給を絞る作業を同時に実現できるのが企業でしょう。日本の積みあがった資金を成長する企業に流して、成長分野の供給/需要の拡大と衰退分野の供給の縮小を促すことが今後の日本経済の基本線になるのではないかと思います。起こるのは(これまで民需で上がっていなかった)株価の上昇のはずです。

成長戦略で需要を拡大する政策は意外とこれまでも行われてきてはいます。しかし、供給を適切に絞る政策はデフレ基調に関わらず、日本ではこれまであまり行われてきませんでした。やってみる価値はあると思うのですが、生産性の上がらない企業を淘汰して供給を絞るとなると、労働者が失業し、GDPが下がるのではないかと思う人も少なくないかもしれません。しかし、人手不足局面では基本的には(いい年したホワイトカラーの高給取りをクビにすればブルーカラーが増えるのような夢を見なければ=上手くやれば)失業者は増えない(新たな雇用先でGDPを増やす)ものと思われ、価格の上昇でGDPは下がらないものと思います。供給の絞り方はいろいろと思いますが、この記事はこの辺で。

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3 コメント

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円高不況を煽る国賊 (管理人)
2023-09-25 10:36:15
マスコミが円安批判を繰り返しているという指摘があるようですが(私は未確認)、為替を操作しようという発想自体が為替操作国認定されかねず、問題だと思いますけどね。円安にはメリットもデメリットもありますが、国内投資に誘導するのはやり易いと言えます。何故日本がデフレ傾向だったかと言われれば、国内投資が盛んでなかったからです。これを変えねばなりません。

つまり円安は特に是正しなくていい訳ですが、輸入企業が価格に転嫁したら、どうすると思うかもしれません。気になるのであれば、遠慮なく安い店で買えばいい訳ですが、全体的に高くなったら止むを得ないでしょう。国内投資が盛んにならなければ、仕事が上手くいかない訳で、円高誘導しようとする人がいるとすれば、現役世代やその扶養は怒っていいはずです。日本はバブル崩壊以降、停滞し過ぎました。今こそ飛躍の時です。為替なんか気にすることありません。日本が好景気になれば、嫌でも円高になります。為替に一喜一憂して右往左往するのが誤りです。何時から日本人は為替投機家になりました?

国内投資ですが、政府が然るべき政策を採れば、日本の場合、貯蓄があるので、必ず盛んになります。緩やかなインフレで貯蓄が不利になった今がチャンスです。日本の少子高齢化は難題ですが、大なり小なり先進国が抱えている課題でもあります。日本だけが出来ない等ということはありません。

円高不況をマスコミが煽っているとすれば、国賊と言っていいと思います。円高で輸入企業が国民に還元するとも限りません。民主党政権で物価は安くなりましたか?特に変っていませんよね?

経済成長の果実を還元だなんて、失笑モノです。まだ日本は成長していませんから。気が早いにも程があるでしょう。

税収増を還元?これもまだ気が早い。日本の国債発行高は世界一です。インフレ誘導で国内投資を盛んにするなら、国債の未達から来る爆弾の破裂を警戒せねばなりません。
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FRBの更なる引き締め? (管理人)
2023-09-25 11:37:18
引き締め=利上げですね。FRBが更に引き締めなら、更に円安になるはずです。その方向なら(知りませんけど)、米国債は(現時点でドルを持っている人は)買い時かもしれませんね。逆に米投資は控えた方が良さそうです。日本が利上げするか、しないか知りませんけど、国債残高世界一なので、すると結構不味いですよ。放漫財政系の人は、そろそろ気づいた方がいいんじゃないですかね。
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玉木議員の毒饅頭 (管理人)
2023-09-25 13:17:53
玉木雄一郎(国民民主党代表)@tamakiyuichiro
岸田内閣、これ全部やれば支持率上がりますよ。
①インボイスがいらなくなる単一税率8%への消費税税減
②賃金や所得の増加率以上に所得税収が増える「ブラケット・クリープ」に対応する所得税減税
③暫定税率や二重課税を廃止するガソリン減税
④投資額以上の償却を認める投資減税(法人税減税)

①複数税率廃止は一つの考え方ですが、免税事業者温存は疑問。消費税を請求したら、払ってください。
②減税というか増税は避けていいかもしれません。所得税のインフレ調整は元々有り得るのでは?
③実質炭素税はこれからの時代、必要ですね。
④株や融資で資金調達してほしい。

そろそろ世界一の国債残高が危なくなってきたんで。これ、金利上げにくいですよね?アメリカが何時また金利上げるか分からず、また円安に振れる可能性があります。インフレ目標も達成しており、これ以上減税で景気を刺激する意味が見えません。財務省出身が経済音痴だから日本が迷走した訳ですか?

支持率ですけど、経済好調だったら上がり得るでしょう。アベノミクスの時は失業率の改善をアピールしましたが、投資に誘導する今回は、株価の上昇をアピールする等、考えられますね。株価が上がった企業は(初任給とか)賃上げすればいい。
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