観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「北方領土」を考察する予定(未定)。

インフレ期待が無い日本

2023-10-02 04:40:03 | 経済財政
日本経済の現在の問題はインフレ期待が無いことだと思いますが、何故インフレ期待が無いことが問題かと言うと、インフレが続くことが予想されていないと(外的要因によるインフレは外的要因によって消滅する可能性があります)、日本の資金が眠ってしまうからです。資金は使わないと意味が無い訳ですね。その意味でデフレ(物価が下がること)を喜ぶのは近視眼的で、資金が眠っている分、実質では損をしている訳です(日本の働き手一人当たりのGDPは上昇していますが、GDPは増えておらず(減った働き手でGDPを維持しているだけです)、実質賃金は上昇していません)。過剰な貯蓄で幸せになれるのは守銭奴だけで、お金は使わないと意味が無いというのが普通の考え方です。冥銭であの世に持っていけばいいという訳にもいかないでしょう?日本の眠った資金を活用して、労働者の賃金を上げていくことが今、必要な訳です。所得税減税で労働者の所得を増やせばいい?税収を減らして(鰐の口を開けて)、世界一の国債残高が金利上昇を受けて大丈夫でしょうか?身の丈に合わない支出は国であっても、続かない訳です。魔法の杖があれば、インフレに苦しむ国なんて無い訳ですから。勿論日本人がより幸せになる方法はあります。それが眠った資金を活用することで、物価を上げ、それ以上に賃金を上げることです。そんなことが可能かと言えば、普通に可能です。日本以外の国は物価が上昇しており、(物価を調整した)実質賃金も上昇している訳ですから。完全に理論通りな訳です。物価が上がってない日本は実質で調整すれば、幸せだというのは間違った思い込みに過ぎません。

では日本で何故インフレ期待が形成されないのでしょう?それは少子化による市場縮小予測で日本人の意識が防衛的になっていることが一因でしょう。ただ、少子化のトレンドは反転させたとしても直ぐには変わりません。それでは打つ手が無いのかと言えば、打つ手はあります。縮まる市場に併せて、供給が適切に絞れればいいんですね。つまり供給過剰が適切に処理されれば、普通に物価は上がり得ます。勿論、公的部門も適切に供給を絞るべきですが、民間部門も適切に供給を絞らなければなりません。生産性の低いゾンビ企業の延命が過剰供給の原因だとも言える訳で、最低賃金を上げて、生産性の低い業界・企業に圧力をかければ、今の状況は改善し得る訳です。勿論、失業率が上がれば、国全体で最低賃金上げの効果が相殺されるとの見方も有り得ます。しかし、人手不足で失業率の上昇は防ぎ得ると考えられます。少々企業が減っても、代わりの企業が必要なだけ生産をすれば、総生産も下がりません(過剰な生産は削られ、価格が上昇することで、総生産は維持上昇します)。

需給ギャップがある(供給力過剰)なら(物価が上昇しないなら)、需要を上げればいいと思うかもしれませんが、そこが有りがちな陥穽です。日本のPBは赤字で、政府にお金を撒く余地が少ないんですね。日本の国債残高は世界一で、今金利が上昇しています。そろそろ従来の手法の限界を悟る時期に来たと言えます。有り体に言って、欲しいものがない(供給力過剰の)状態でお金を撒いても仕方がないんですね。欲しいものを売っているのは基本的に企業です。売れないものを売ろうとする企業はありません(作り過ぎで売れ残ったものは値引き販売するでしょうが)。企業が適切に商売し(ビッグモーターのような不適切な商売は国民を不幸にしますが)、賃上げして、設備投資すれば、日本の実質賃金が上がって、経済成長もする訳で、それが経済の王道です。企業を変えないまま、企業にお金を注がないまま、公がお金を撒けば何とかなるんじゃないかという甘い幻想が日本を覆っているような気もしますが、それは単なる鎮痛剤であって、手術をしないと病気は進行します。

少子化の結果が人手不足です。少子化でもやれるということを示すには、人手不足に対応するしかありません。市場縮小予測/日本の人口減のトレンドの下でも、企業は収益を上げ得るということを示すことが必要とも言えます。あまり総論だけで、大きなことを言っても仕方ありません(生産性の低い供給を絞ってPBを悪化させず消費性向の高い需要を増やすこれまで試みられなかった最低賃金上げは効果あると思いますが)。経済に良さそうなことは何でもやって、今の状況で満足しないことが重要なんだろうと私は思います。

自民・森山総務会長、減税なら「国民の審判仰ぐ必要」(日経 2023年10月1日)

減税で需要を増やすことは、需給ギャップがあっても、今の日本の本質的課題ではありません。既に国債残高世界一で金利も上昇しつつあって、寧ろ供給が適切に絞れていない(価格を上げて売り上げが下がる)ことが日本の課題のはずです。

それを言っている人が適切な経済政策を採ってきたかは置いておいて、「サプライサイド」に注目することが経済学において重要だと私は思います。消費者の欲しいものを知っているのは企業だからです。幾らお金を撒いたところで、お金を持っている人が欲しくないものを供給してれば、お金は使われません。

(企業にお金を注ぎ込む)株が上がってないことが、今の日本経済を象徴しています。要は企業が(過当競争/供給過剰で)適切に儲かってない(価格を上げて売り上げが下がるような状況で物価が上がらない)のが日本の問題であって、日本が重税国家だという訳ではありません。

日本で賃上げが起こらない原因は企業が儲かっていないからです。労働分配率は悪くありませんから。企業が儲かってない原因は、過当競争(供給過剰)にあります(実際物価は上がっていません)。アトキンソンさんの指摘(最低賃金上げ、中小企業の優遇批判)は凡そ正しい。国債残高世界一で見当違いのバラ撒きメガネになるんでしょうか。

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1 コメント

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賃金上昇と失業率の因果関係、需給ギャップと物価の相場観 (管理人)
2023-10-05 04:23:59
月例経済報告「需給ギャップがプラスに転じた」は嘘である その理由を高橋洋一が解説(https://news.1242.com/article/465878 NEWS ONLINE 2023-09-27)

>15兆円~16兆円レベルのギャップ
>このくらい埋めないと失業率が下がらない
>そうすると、賃金は持続的にずっと上がらない
・・・フィリップス曲線では賃金が上昇すると、失業率が下がります。企業は儲けてないと賃上げできません。不況時に失業率が上がるのは必然であって、不良債権を処理し、好景気になって失業率が下がり、賃金が上がるのが普通でしょう。不況時の公共事業(失業率の低下)が賃上げ圧力になるという考え方なんでしょうが、民間景気が過熱して公共事業から人が移転するとすると(納税しない公共事業だけで経済を回そうというのは共産主義であって、不況時の公共事業は緊急避難のはず)、民間の会社の今後の見通し次第で、インフレ期待が形成するか否かが決まると思います。適切に供給を調整せず(過当競争を放置して)、需要拡大だけで問題解決する訳が無く、一般に人口拡大局面(例:東京・新興国)で自然にインフレ期待が形成されますが、人口縮小局面(例:地方・先進国)では、成長戦略で市場を創出しないと、中々インフレ期待は形成されないはずです。結局、失業率が下限=NAIRU(自然失業率)に達すると、賃金が持続的に上がるというのは因果関係が逆(賃金が持続的に上がる好景気になると、失業率が下限まで下がる)というか、多くの企業が儲かる見通しで人を雇用していけば、賃金が持続的に上がり、失業率が下がるということなんでしょう。

>大体プラス2%で、物価が2%ぐらいという感じ
・・・今のインフレは他律的なコストアップインフレと見るのが普通で、需給ギャップが埋まっていないという相場観は妥当かもしれません。

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