観測にまつわる問題

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正義と秩序を基調とする国際平和と日本国の安全を誠実に希求する憲法改正案

2018-03-05 16:42:32 | 政策関連メモ
本日の読売社説をもとに憲法9条に関して考えてみます。

日本国憲法第9条
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

憲法9条改正案 世論喚起へ具体的に論じよ(読売新聞 2018年03月05日 06時00分)

>2項を残した上で、「自衛隊」や「自衛のための必要最小限度の実力組織」の保持を明記する案が出ている。いずれも「自衛力」を明文化する規定と言える。2項が禁止する「戦力」とどう違うか、明快な説明が求められる。

2項に「前項の目的を達成するため」とあるので、1項を参照して戦力の定義を考えるしかないと思います。1項抜きに戦力の定義を考えると、戦力とは戦闘力を持つ部隊だと一般には定義されるようですから、自衛隊は違憲と判断される可能性が高まると思います。

これまでの政府見解も必ずしも誤りではないと思いますが、誤解を招く表現だったのではないでしょうか?実際問題、憲法学者の多くが自衛隊を違憲と見做し、裁判所は自衛隊の憲法適合性を判断していない状況があります。

憲法9条に関する学説は多々あって、論争を決着させることは困難でしょうし、決着するとしても万一違憲になったら自衛隊を解散させるのかという問題があります。自衛隊は国民の多くに支持されていますし、どう考えても解散させる訳にはいきません。こうした状況に終止符を打つのが自衛隊明記案だと思います。

具体案として出てきた政府見解を憲法に書き込むという条文案には筆者は反対しています。今まであった解釈する余地が無くなってしまうからです。それだったら9条改憲しなくていいと思っていますが、改憲せずに違憲判決リスクを無くせると思っている訳ではありませんし、憲法学者の反対や裁判所が判断しないことを軽くみている訳でもありません。実際に平和安全法制の時もそうでしたが、安全保障を考えないことが平和だと思っているかのような人達の根強い反対に政府与党・自衛隊は苦しめられてきました。その非生産的にも思える反対論の根拠となってきたのが憲法9条です。それもむべなるかなで9条には戦争放棄・戦力放棄と現に書かれています。ならば政府見解をそのまま書けばいいという話が出てきていると理解しています。その主張を仮に認めるとしても、政府見解そのものが憲法学者の多くに無視・反対され、裁判所に判断を避けられているのですから、論争が始まると案外苦しくなる可能性もあると思います。

筆者は2項削除というか憲法9条そのものを全部書き換えるのが本来はベストだと思いますが、やはり政府与党の一致や国民の理解を得るのが難しいようですから、他に何か考えなければなりません。やる以上は当然より理解が得られる条文案にすべきですが、条文改訂が安全保障政策にマイナスになるのも本末転倒のように思います。何故マイナスだと見るかと言えば、専守防衛を貫くとしてもミサイル時代ですから、相手がミサイルを持って攻撃してきてもこちらはミサイルで反撃しないというような考えは、安全保障政策をニュートラルに考えるなら、有り得ない考えだからです。常識的に考えれば、自衛が認められるなら、相手が持っている兵器は大体認められるはずです。こういう直感的な意見を改憲で潰してしまっては、安全保障論からの賛成論が盛り上がってこないと思います。しかしながら、こういう考え方そのものに抵抗感が強いことも理解できます(ロシアや中国に対抗して核・ミサイル開発するというような話は現実的ではありません)。ですから、解釈の余地がある現状及び現在の自衛隊の現状を維持しながら、法改正で環境の変化に対応できる条文案が必要ではないかと思った次第です。

しかしながら、同害報復の環境をただちに整備しようとしていると受け取られるとやはり改憲にマイナスである可能性は確かにあります。そういう訳で現行の9条で同害報復を狙っていないと受け取れる解釈を考えてみました。

1項には正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求すると書かれています。これを持って暗黙の脅しにならないようこれまで通り敵本土の攻撃を主目的とした装備を否定できると考えられます。以前、西教授の憲法改正案(産経ニュース 2018.2.22 11:00)に賛成しましたが・・・

「現行の第9条をそのまま残し、新たに第9条の2を加える。第9条の2
(1)日本国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、自衛隊を保持する。
(2)自衛隊の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属し、自衛隊の行動については、文民統制の原則が確保されなければならない。
(3)自衛隊の編成及び行動は、法律でこれを定める。」

・・・とある中、例えば(3)に「装備体系」を追加することも考えられます。法改正が必要になると思いますが、「無用の脅威を感じさせないため、敵本土の攻撃を主目的とした装備はこれを認めない」などと書いておけば、誤解の余地がありませんよね。ただ、これを憲法でやるのが嫌な訳です。例えばアメリカとて神様ではありません。安倍政権とトランプ政権の関係は良いと思いますが、将来どうなるかは誰にも分かりませんよね。下手に憲法で同害報復を否定すると、アメリカとの関係が悪くなったと仮定して、撤退するよと言われた時に、一々憲法改正して対処するよと返すのは具合が悪い訳です。別に日米同盟を悪くしようという訳ではないですよ?でもあらゆる可能性を想定しなければ、安全保障になりません。法改正でよければ、必要だと考えられることは直ぐに対処し易い訳です。軍刑法の問題もありますし、ポジティブリストの問題もあります。本来は政府の判断ひとつでできればいいですけど、それだと疑われて改憲が難しくなるなら、法律で決めるのはどうでしょうということです。

そういう訳で現行の9条を残すという条件であれば、筆者は解釈変更・法律の改正で現状可能な安全保障政策を制限する如何なる条文も憲法に追加すべきでないと考えます。

勿論9条改正に消極的になった訳ではありません。平和安全法制の時の混乱を繰り返さないためには、自衛隊が違憲でないとハッキリさせること、法改正で対処することは何ら疚しいことではないと明らかにすることは大きな意義があると考えられます。そのためには現在の政府見解をそのまま憲法に明記するべきではなく、芦田修正が追加された経緯を重視して(そもそも合憲であるので)、現行の憲法9条の条文をそのまま肯定した上で自衛隊を合憲化するというようなやり方が妥当と思うようになりました。これは現行の憲法9条そのものには手をつけない加憲案でもあります。

そうした内容で国民投票が通らない可能性があるなら、自衛隊が違憲と誤解されかねないので、発議しないだけだと思います。最終的に決めるのは国民なのですから、まずは広く議論を喚起し国会で議論していくことだと思います。


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