観測にまつわる問題

政治ブログ。政策中心。「多重下請」「保険」「相続」「農業」「医者の給与」「解雇規制」「国民年金」を考察する予定。

教育の公的B/Cと建設の公的B/Cは多分違う

2017-05-23 20:43:40 | 政策関連メモ
たまっていたものをはきだしたところで、予告どおり「教育」に移ります(多分そんなには時間もかからないでしょう)。ガス抜きしとかないとイライラしてしまいますから。

やはり、憲法改正で教育無償化と「こども保険」VS「教育国債」が今ホットなテーマではないでしょうか?

前にも書きましたが、筆者は「乗り気ではない」です。高橋洋一氏が強調するのは教育の投資効果ですが、教育の公的B/Cと建設の公的B/Cは多分本質的に違うんじゃないかと思いますね。

建設の公的B/Cは重視していいと思うんです。例えば道路だったら、かけたコストに対してどれほど使ったかでしょうから。やっぱりお金をかけるなら、使われるものの方がいい。絶対評価(ウィキペディア)として使えると言えるのではないかと。

教育の公的B/Cは怪しいでしょうね。日本は学歴社会と言いますが、まぁ実際にそうなんだと思います。高い学歴ほど評価され易く、出世し所得があがる傾向はあるでしょう。でもこれは基本相対評価(ウィキペディア)でしょう。テストの点が80点でも一位なら一番ですし、テストの点が90点でもドベならドンケツです。東大出身者の生涯年収が高くとも、東大に入れる数は決まっています。一人だけ頑張れれば入れる確率は高まりますが、みんな頑張らせるような政策は差異を生みませんから、頑張りが必ずしも生涯年収に結びつく訳ではありません。人より頑張れば生涯年収に結びつきますし、人より頑張らなくても生涯年収に結びつきますが、全体に対する政策は効果を生まないはずです。勉強そのものに生産能力をあげる効果があれば話は別ですが、読み書きそろばんはともかく高等教育であまりこれを認める人はいないだろうと思います。法律の勉強をすれば官僚になった時に役に立つとか、実験を繰り返すことで研究者としての能力が高まるとかそういう例外は多分にあるかもしれません。でも普通の会社員になるのに大学の勉強が如何ほど役に立つかは怪しいでしょう。勿論学歴が能力を測る基準にはなりえます。どれだけ勉強に耐えられるか、どれだけ記憶できるかなどです。人脈もあるでしょうが、目安としてそれなりに有効だったから学歴社会なのだと思います。

具体的に考えてみましょう。高等教育が無償化されるとします。日本はアメリカ・カナダと並び数少ない高学歴社会(高等教育機関への進学率が50%を越えている)なんだそうです(比較教育社会学へのイマージュ 学文社 38p)。ここで起こるのは、「底辺大学」の救済ないし拡大でしかありません。学力のある人は上の大学に既に行っているでしょう。お金が無い場合は奨学金が貰えるはずです。学力があれば。やる気があるなら給料の出る防衛大学に行ってもいいですしね(多分自衛官にならなくても返済を迫る必要はないと思います。というのも防衛大のきつさに耐えられるなら、自衛官になる確率は高いからです。返済義務があるなら興味があるけど迷っている人が入りにくくなりますから、意図的にやっているものと思います)。結局、学力が低かった人が更に進学する結果になるでしょう。無駄だとは言いませんよ?でも、それが起こったところで、序列はほとんど変わらないのではないですか?

需要のある専門学校とかIT系の学部などを増やすなどして、手に職をつけ人手不足を解消していくことの方が重要なはずだと思います。

日本が世界でも数少ない高学歴社会であるにも関わらず(これ以上、高学歴を増やしてどうしようというのですか?ホワイトカラーも結構ロボットがやる社会になる可能性があります)、公的B/Cが大きい理由は、コストが低いから、すなわち先生の数が少ないからではないでしょうか?ポスドク問題もその辺が絡んでいる可能性があります。高橋洋一氏のような優秀な人が失礼ながら底辺大学で働いているのもポストが少ないのが一因でしょう。先生を増やしたところで学生の学力がそうそうあがるとも思いませんが、学者を増やせば学術論文も増え、あるいは世のため人のためになる可能性はあるでしょう。個人的な見解ですが。多分社会の人は学者が有用な論文を書いているとは思ってないかもしれません(だから増える方向性にいかないのでしょう)。「東洋経済」の経済を見る眼とか結構学者が専門的な経済政策を提言していて結構面白いと思うんですがね。

という訳で、こども保険か教育国債かですが、これはもうほぼ所得再分配の話になっていると思います。やるかやらないかも含めて。

高橋洋一氏の議論も面白いですが、今週の東洋経済では経済を見る眼で佐藤主光一橋大学大学院教授が財源は税金で所得税にすればいいと言っています。国債だと毎年の支出が増えるのが厳しいから、こども保険だと高齢者医療や福祉にかかるコストは全世代で負担しているのに子供の教育を勤労世代に限定して負担するのは公平性に欠けるからだと言います。まぁなるほどですよね。筆者に言わせれば、所得税も勤労世代の負担ですが、これはまぁお金持ちの方の負担を増やそうということなのだと思います。それもどうかなという感じですが、まぁお金を取られたい人なんていません。何もしない変えないも一案なのかなと思います。学歴社会ですから、放っておいても皆さん大学には行かせます。国がやるべきは、人手不足の業界に人を流し込むための大学・専門学校の新設、奨学金の充実、不足している研究分野に人を流し込むための研究者枠の拡大でしょうか?まぁ育った時に需要が無くなることはあるでしょうが、筆者も予想屋ではありませんので、その辺は知りません。来年の事を言えば鬼が笑うが現実ですが、それでも判断し責任をとるのが政治なのでしょう。

国債にしろ、税金にしろ、コストはタダでは勿論ありません。国債を増やすなら、税収をどうにか増やすか支出を減らすしかありません。税金を増やせば景気は冷えます。再分配政策でベストの考えは、筆者はインフレかなと思います。税金のように露骨にとることはないから抵抗が少ないからです。日本はまだこの選択肢があるでしょう。安倍政権の選択は本当に良かった。デフレにいい面はありますよ?筆者も物価は安い方がいいですから。でも財政はどうにかしなければなりません。マイルドなインフレで解消がベストのはずです。財務省は悪く言われますが、潔いですよね。消費税アップは言ってくる訳ですから。デフレがいい、でも税金はとられたくないは通用しません。野党ども(笑)ですよ。

最終結論ですが、筆者は無償化ではなく、部分負担ないし国の負担なしです。理由はこれ以上大学を増やさないためです。既に十分多いんで。世界的にも。高校まではほぼみんな行くんでいいですが、高校なみに大学に行かれては国の財布が持たない、そうでしょう。容赦なくFランクを潰すとも言いませんが、充足を満たすための部分負担ぐらいが限界かなって感じですね。とりあえず行っとけで大学を増やしている場合ではないかと思います。無償化したら、もっと手をあげる人が増えるかもしれませんが、それでは困ります。大学へ行かせるにもお金がかかりますが、学歴社会ですから、それなりに見合う投資でしょう。そのままでいいんじゃないですか。憲法改正で民進党内保守派を釣りたい気持ちはなくもないですが、それはまぁ多分何とかなるでしょう。

嫌な話申し訳ありませんね。政治の話がタブーなのは伊達ではありません。何も言わなきゃ嫌われないんですがね。

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