途中になっていた昨日の「国際テロ対策と日本の役割」記事を(1)とし、(2)を続きで書きます。
テロ対策の専門家が2015年の本で日本は内部脅威対策を全くやっていないと指摘した訳ですが(新自衛隊論(講談社現代新書)宮坂直史防衛大学校教授「国際テロ対策と日本の役割」)、「内部脅威対策」で検索すると、文科省のページが出てきて平成17年(2005年)頃には既に対策の必要性が言われていたようです(内部脅威対策について)。文部科学省(原子力の研究・開発を担当している)がテロ対策をやることに問題も若干あるのかもしれませんが、結局原子力発電所の防護とは、宮坂教授が指摘しているように、原子力発電所を自衛隊を配備して守るというような話だけではなく、国際機関から言われているのは、そこで働く人、出入りする業者をプロフィールチェックして、核物質の流出を防ぐということのようです。あるいは文部科学省では進んでいるが、経済産業省(原子力発電所)で進んでないということかもしれませんし、これから見ていきますが、プライバシーの問題などがあって、文部科学省が担当する研究施設でも進んでいないのかもしれません。
前述の文部科学省のページ「6.我が国における内部脅威者対策について」を見ると、>これまで、我が国における核物質防護上重要な区域への出入が可能な内部者に対する信頼性確認については、企業風土(企業への忠誠心、終身雇用、年功序列等)や企業への採用時の調査・審査事項(身元保証人制度、卒業学校の推薦等)により、一定の水準が維持されているものと考えられてきた。しかしながら、「はじめに」でも述べたように、核物質防護を取り巻く国際的な環境が厳しくなってきている。>このような状況において、現行制度の下で、原子炉設置者等が保有する情報のみで信頼性確認を行うことの実効性や、原子炉設置者等以外の請負作業員等も含めた信頼性確認を行うことの実現性等について、引き続き慎重に検討することが必要である。>一方、犯罪歴等を利用した信頼性確認方法については、必要な個人情報の入手やその照会が行われることについてプライバシー保護に係る問題があることから、その実施にあたり、国民の幅広い理解を得ることが大前提である。・・・とあります。その周辺のページでどういう対策をするかを見ても要するに性悪説で人の個人情報をチェックするということですから、これまでちゃんとしたスパイ法が成立しなかった日本(部分的にスパイ法の一種である秘密保護法がようやく成立しましたが、野党の抵抗で通すのに苦労したのが記憶に新しいところです)では、中々進まないのもむべなるかな、やはり宮坂教授の2015年の指摘は大体正しく、2017年が終わりかけている今でも進んでいないのではないかとも考えられます。これでは原発再稼動が進まないのも仕方なかったかもしれません(ようやく先日沸騰水型の再稼動審査の体制強化が始まったようですが(福島同型原発の審査拡充 規制委、沸騰水型再稼働で 共同 2017/12/24 17:40))。プライバシーと政策の問題に関して言えば、マイナンバー制も激しい抵抗があって中々上手くいってませんね。
横並びで顔見知り前提で終身雇用制が長らく続いてきた日本で内部脅威対策の必要性があまり感じられなかった事情は理解できます。テロ対策といったところで、左翼のテロ活動は現在下火で日本は平和な国として知られています(オウムの事件もあって油断はできませんが地下鉄サリン事件も1994年で20年以上前の話になりました)。世界ではテロ活動は活発でそのため対策は進んだ訳ですが、日本は取り残された観もあります(テロ等準備罪もそういう文脈で安倍政権は進めた訳ですが、何時も通りの野党の抵抗で揉めに揉めました)。やはりテロがあまり起こらない国で対策を進めようとすれば揉めることは止むを得ないところはありますが、世界は日本だけでありませんから、日本が弱い輪となってターゲットになってはならない訳です。日本が対策していなければ、世界のテロ組織(活発です)はじゃあ日本でやろうかということになりかねないんですよね。オリンピックがあるからということで、テロ等準備罪はやった訳ですが。
ここで重要なのはやはり北朝鮮問題です。これは北朝鮮の核開発とミサイル開発の問題ですが、それを意識すると、どうにも日本の原子力施設で内部脅威対策が進んでいないなどと指摘されることが気になってきます。まさか日本の原子力施設から北朝鮮に核物質など流出していないだろうな?と。韓国にも原子力発電所があってどの程度内部脅威対策が進んでいるか知りませんけれども、我々陣営が北朝鮮の核開発をアシストしては話にならない訳です。そういうことがもしもあったら、完全に我々は舐められているでしょうし、舐められていればどんな圧力を受けても北朝鮮は悪しき希望を持ってしまい、せっかくの圧力の意味が薄くなってしまいます。最低限我々ルートをシャットアウトすれば北朝鮮に流れ込むルートは特定できる訳です。まぁ北朝鮮にウランは豊富ですし、であるがゆえに何となく内部脅威対策が見過ごされてきたのかもしれませんが、兎も角テロを行うのは北朝鮮だけでもありませんし、核物質だけではなくミサイル開発もそうですし、我々陣営は技術大国なのであって、一事が万事で万に一つもテロ組織に大量破壊兵器を渡してはならない訳です。日本から流出した技術や物資が原因でテロリストが大勢人を殺したなんてことがあれば、世界に大迷惑をかけることになりますし、まさかとは思いますが、北朝鮮が日本に対して使うなんてことがあってはならない訳です。
内部脅威者の態様類型を見ると、(1)確信型 思想的、宗教的確信から不法行為を実行・・・これは例えば朝鮮総連に属した経歴がある人は原発に出入りできないということでしょう。背乗り(ウィキペディア)(>工作員など他国人が現地人に成りすますために身分・戸籍を乗っ取る行為を指す警察用語)の危険性もある訳ですが、マイナンバー制などプライバシーに関わる対策もこうした治安上の要請もあると思われます。テロリストの立場にたってみると、総背番号制ダーと言って反対論を煽りたくなりますよね。まぁプライバシーを守りたい気持ちも分からないではありませんが、工作員などのチェック漏れで大変な事故が起これば、それどころじゃなくなる訳です。北朝鮮の兵器開発に在日本朝鮮人科学技術協会が協力しているという話もありますし、警察や公安調査庁もしっかり北朝鮮はマークしているとは思いますが、全てはチェックできないでしょうし、兎も角内部脅威対策は様々な意味から進める必要があると思います。日本においてこうした対策のノウハウがあるのは警察庁や公安調査庁かもしれませんが、自衛隊も勿論そうですし、文部科学省や経産省もシッカリ対応する必要があるということです。マイナンバー制は総務省ですね。テロ資金は財務省です。さて内部脅威者の態様類型に戻ると、(2)誘惑型 テロリスト等からの金銭などの誘惑に負けて、不法行為を実行。(3)被脅迫型 トラブルや個人的な弱みに付け込まれ、テロリスト等により脅迫されて、不法行為を実行。(4)報復型 職場内の不満に対する報復として、不法行為を実行。(5)心身衰弱型 ストレス等により心身衰弱となり、突発的に不法行為を実行。(6)愉快犯型世間を騒がす等の目的で、不法行為を実行・・・ということで、もうこれは完全にスパイの世界だと言えるのではないでしょうか?日本には対外諜報機関であるところのCIAに当たる組織は基本的にない訳ですが、FBIに当たる組織(=警察庁)がない訳ではありませんので、この辺のノウハウが全くないという訳でもないんだろうと思います(ただし警察白書には28年までに北朝鮮の諜報事件を53件検挙、ソ連崩壊以降ロシアの違法行為を9件検挙しているとありますが、索引に内部脅威の文字はありません)。でも警察だけだと若干視野が狭くなるかもしれませんね。兎も角、原発に出入りする人がハニートラップに引っかかったり、金の誘惑に負けたり、脅迫されたり、職場に不満をもったり、心身衰弱したり、愉快犯的に大量破壊兵器流出やテロに繋がる形で不法行為しないかチェックしなければならないという訳です。まぁ重要施設に関わる人物を絞るとかいろいろやりようはあるんでしょうが、専門家がやってない、やれと言われるなら、日本は十分にやってないんだろうと思います。こういうのって、やってないと問題があっても気づかないところが恐ろしい訳で、それがまた狙われる原因にもなりかねません。
以下(3)に続きます。142p「日本で重視されていない公的検証」から始める予定です。
テロ対策の専門家が2015年の本で日本は内部脅威対策を全くやっていないと指摘した訳ですが(新自衛隊論(講談社現代新書)宮坂直史防衛大学校教授「国際テロ対策と日本の役割」)、「内部脅威対策」で検索すると、文科省のページが出てきて平成17年(2005年)頃には既に対策の必要性が言われていたようです(内部脅威対策について)。文部科学省(原子力の研究・開発を担当している)がテロ対策をやることに問題も若干あるのかもしれませんが、結局原子力発電所の防護とは、宮坂教授が指摘しているように、原子力発電所を自衛隊を配備して守るというような話だけではなく、国際機関から言われているのは、そこで働く人、出入りする業者をプロフィールチェックして、核物質の流出を防ぐということのようです。あるいは文部科学省では進んでいるが、経済産業省(原子力発電所)で進んでないということかもしれませんし、これから見ていきますが、プライバシーの問題などがあって、文部科学省が担当する研究施設でも進んでいないのかもしれません。
前述の文部科学省のページ「6.我が国における内部脅威者対策について」を見ると、>これまで、我が国における核物質防護上重要な区域への出入が可能な内部者に対する信頼性確認については、企業風土(企業への忠誠心、終身雇用、年功序列等)や企業への採用時の調査・審査事項(身元保証人制度、卒業学校の推薦等)により、一定の水準が維持されているものと考えられてきた。しかしながら、「はじめに」でも述べたように、核物質防護を取り巻く国際的な環境が厳しくなってきている。>このような状況において、現行制度の下で、原子炉設置者等が保有する情報のみで信頼性確認を行うことの実効性や、原子炉設置者等以外の請負作業員等も含めた信頼性確認を行うことの実現性等について、引き続き慎重に検討することが必要である。>一方、犯罪歴等を利用した信頼性確認方法については、必要な個人情報の入手やその照会が行われることについてプライバシー保護に係る問題があることから、その実施にあたり、国民の幅広い理解を得ることが大前提である。・・・とあります。その周辺のページでどういう対策をするかを見ても要するに性悪説で人の個人情報をチェックするということですから、これまでちゃんとしたスパイ法が成立しなかった日本(部分的にスパイ法の一種である秘密保護法がようやく成立しましたが、野党の抵抗で通すのに苦労したのが記憶に新しいところです)では、中々進まないのもむべなるかな、やはり宮坂教授の2015年の指摘は大体正しく、2017年が終わりかけている今でも進んでいないのではないかとも考えられます。これでは原発再稼動が進まないのも仕方なかったかもしれません(ようやく先日沸騰水型の再稼動審査の体制強化が始まったようですが(福島同型原発の審査拡充 規制委、沸騰水型再稼働で 共同 2017/12/24 17:40))。プライバシーと政策の問題に関して言えば、マイナンバー制も激しい抵抗があって中々上手くいってませんね。
横並びで顔見知り前提で終身雇用制が長らく続いてきた日本で内部脅威対策の必要性があまり感じられなかった事情は理解できます。テロ対策といったところで、左翼のテロ活動は現在下火で日本は平和な国として知られています(オウムの事件もあって油断はできませんが地下鉄サリン事件も1994年で20年以上前の話になりました)。世界ではテロ活動は活発でそのため対策は進んだ訳ですが、日本は取り残された観もあります(テロ等準備罪もそういう文脈で安倍政権は進めた訳ですが、何時も通りの野党の抵抗で揉めに揉めました)。やはりテロがあまり起こらない国で対策を進めようとすれば揉めることは止むを得ないところはありますが、世界は日本だけでありませんから、日本が弱い輪となってターゲットになってはならない訳です。日本が対策していなければ、世界のテロ組織(活発です)はじゃあ日本でやろうかということになりかねないんですよね。オリンピックがあるからということで、テロ等準備罪はやった訳ですが。
ここで重要なのはやはり北朝鮮問題です。これは北朝鮮の核開発とミサイル開発の問題ですが、それを意識すると、どうにも日本の原子力施設で内部脅威対策が進んでいないなどと指摘されることが気になってきます。まさか日本の原子力施設から北朝鮮に核物質など流出していないだろうな?と。韓国にも原子力発電所があってどの程度内部脅威対策が進んでいるか知りませんけれども、我々陣営が北朝鮮の核開発をアシストしては話にならない訳です。そういうことがもしもあったら、完全に我々は舐められているでしょうし、舐められていればどんな圧力を受けても北朝鮮は悪しき希望を持ってしまい、せっかくの圧力の意味が薄くなってしまいます。最低限我々ルートをシャットアウトすれば北朝鮮に流れ込むルートは特定できる訳です。まぁ北朝鮮にウランは豊富ですし、であるがゆえに何となく内部脅威対策が見過ごされてきたのかもしれませんが、兎も角テロを行うのは北朝鮮だけでもありませんし、核物質だけではなくミサイル開発もそうですし、我々陣営は技術大国なのであって、一事が万事で万に一つもテロ組織に大量破壊兵器を渡してはならない訳です。日本から流出した技術や物資が原因でテロリストが大勢人を殺したなんてことがあれば、世界に大迷惑をかけることになりますし、まさかとは思いますが、北朝鮮が日本に対して使うなんてことがあってはならない訳です。
内部脅威者の態様類型を見ると、(1)確信型 思想的、宗教的確信から不法行為を実行・・・これは例えば朝鮮総連に属した経歴がある人は原発に出入りできないということでしょう。背乗り(ウィキペディア)(>工作員など他国人が現地人に成りすますために身分・戸籍を乗っ取る行為を指す警察用語)の危険性もある訳ですが、マイナンバー制などプライバシーに関わる対策もこうした治安上の要請もあると思われます。テロリストの立場にたってみると、総背番号制ダーと言って反対論を煽りたくなりますよね。まぁプライバシーを守りたい気持ちも分からないではありませんが、工作員などのチェック漏れで大変な事故が起これば、それどころじゃなくなる訳です。北朝鮮の兵器開発に在日本朝鮮人科学技術協会が協力しているという話もありますし、警察や公安調査庁もしっかり北朝鮮はマークしているとは思いますが、全てはチェックできないでしょうし、兎も角内部脅威対策は様々な意味から進める必要があると思います。日本においてこうした対策のノウハウがあるのは警察庁や公安調査庁かもしれませんが、自衛隊も勿論そうですし、文部科学省や経産省もシッカリ対応する必要があるということです。マイナンバー制は総務省ですね。テロ資金は財務省です。さて内部脅威者の態様類型に戻ると、(2)誘惑型 テロリスト等からの金銭などの誘惑に負けて、不法行為を実行。(3)被脅迫型 トラブルや個人的な弱みに付け込まれ、テロリスト等により脅迫されて、不法行為を実行。(4)報復型 職場内の不満に対する報復として、不法行為を実行。(5)心身衰弱型 ストレス等により心身衰弱となり、突発的に不法行為を実行。(6)愉快犯型世間を騒がす等の目的で、不法行為を実行・・・ということで、もうこれは完全にスパイの世界だと言えるのではないでしょうか?日本には対外諜報機関であるところのCIAに当たる組織は基本的にない訳ですが、FBIに当たる組織(=警察庁)がない訳ではありませんので、この辺のノウハウが全くないという訳でもないんだろうと思います(ただし警察白書には28年までに北朝鮮の諜報事件を53件検挙、ソ連崩壊以降ロシアの違法行為を9件検挙しているとありますが、索引に内部脅威の文字はありません)。でも警察だけだと若干視野が狭くなるかもしれませんね。兎も角、原発に出入りする人がハニートラップに引っかかったり、金の誘惑に負けたり、脅迫されたり、職場に不満をもったり、心身衰弱したり、愉快犯的に大量破壊兵器流出やテロに繋がる形で不法行為しないかチェックしなければならないという訳です。まぁ重要施設に関わる人物を絞るとかいろいろやりようはあるんでしょうが、専門家がやってない、やれと言われるなら、日本は十分にやってないんだろうと思います。こういうのって、やってないと問題があっても気づかないところが恐ろしい訳で、それがまた狙われる原因にもなりかねません。
以下(3)に続きます。142p「日本で重視されていない公的検証」から始める予定です。