観測にまつわる問題

政治ブログです。「保険」「相続」「医者の給与」「国民年金」「AIロボット」「運輸エンタメ長時間労働」「GX」を考察予定。

国際テロ対策と日本の役割(2)内部脅威対策

2017-12-25 23:43:11 | 政策関連メモ
途中になっていた昨日の「国際テロ対策と日本の役割」記事を(1)とし、(2)を続きで書きます。

テロ対策の専門家が2015年の本で日本は内部脅威対策を全くやっていないと指摘した訳ですが(新自衛隊論(講談社現代新書)宮坂直史防衛大学校教授「国際テロ対策と日本の役割」)、「内部脅威対策」で検索すると、文科省のページが出てきて平成17年(2005年)頃には既に対策の必要性が言われていたようです(内部脅威対策について)。文部科学省(原子力の研究・開発を担当している)がテロ対策をやることに問題も若干あるのかもしれませんが、結局原子力発電所の防護とは、宮坂教授が指摘しているように、原子力発電所を自衛隊を配備して守るというような話だけではなく、国際機関から言われているのは、そこで働く人、出入りする業者をプロフィールチェックして、核物質の流出を防ぐということのようです。あるいは文部科学省では進んでいるが、経済産業省(原子力発電所)で進んでないということかもしれませんし、これから見ていきますが、プライバシーの問題などがあって、文部科学省が担当する研究施設でも進んでいないのかもしれません。

前述の文部科学省のページ「6.我が国における内部脅威者対策について」を見ると、>これまで、我が国における核物質防護上重要な区域への出入が可能な内部者に対する信頼性確認については、企業風土(企業への忠誠心、終身雇用、年功序列等)や企業への採用時の調査・審査事項(身元保証人制度、卒業学校の推薦等)により、一定の水準が維持されているものと考えられてきた。しかしながら、「はじめに」でも述べたように、核物質防護を取り巻く国際的な環境が厳しくなってきている。>このような状況において、現行制度の下で、原子炉設置者等が保有する情報のみで信頼性確認を行うことの実効性や、原子炉設置者等以外の請負作業員等も含めた信頼性確認を行うことの実現性等について、引き続き慎重に検討することが必要である。>一方、犯罪歴等を利用した信頼性確認方法については、必要な個人情報の入手やその照会が行われることについてプライバシー保護に係る問題があることから、その実施にあたり、国民の幅広い理解を得ることが大前提である。・・・とあります。その周辺のページでどういう対策をするかを見ても要するに性悪説で人の個人情報をチェックするということですから、これまでちゃんとしたスパイ法が成立しなかった日本(部分的にスパイ法の一種である秘密保護法がようやく成立しましたが、野党の抵抗で通すのに苦労したのが記憶に新しいところです)では、中々進まないのもむべなるかな、やはり宮坂教授の2015年の指摘は大体正しく、2017年が終わりかけている今でも進んでいないのではないかとも考えられます。これでは原発再稼動が進まないのも仕方なかったかもしれません(ようやく先日沸騰水型の再稼動審査の体制強化が始まったようですが(福島同型原発の審査拡充 規制委、沸騰水型再稼働で 共同 2017/12/24 17:40))。プライバシーと政策の問題に関して言えば、マイナンバー制も激しい抵抗があって中々上手くいってませんね。

横並びで顔見知り前提で終身雇用制が長らく続いてきた日本で内部脅威対策の必要性があまり感じられなかった事情は理解できます。テロ対策といったところで、左翼のテロ活動は現在下火で日本は平和な国として知られています(オウムの事件もあって油断はできませんが地下鉄サリン事件も1994年で20年以上前の話になりました)。世界ではテロ活動は活発でそのため対策は進んだ訳ですが、日本は取り残された観もあります(テロ等準備罪もそういう文脈で安倍政権は進めた訳ですが、何時も通りの野党の抵抗で揉めに揉めました)。やはりテロがあまり起こらない国で対策を進めようとすれば揉めることは止むを得ないところはありますが、世界は日本だけでありませんから、日本が弱い輪となってターゲットになってはならない訳です。日本が対策していなければ、世界のテロ組織(活発です)はじゃあ日本でやろうかということになりかねないんですよね。オリンピックがあるからということで、テロ等準備罪はやった訳ですが。

ここで重要なのはやはり北朝鮮問題です。これは北朝鮮の核開発とミサイル開発の問題ですが、それを意識すると、どうにも日本の原子力施設で内部脅威対策が進んでいないなどと指摘されることが気になってきます。まさか日本の原子力施設から北朝鮮に核物質など流出していないだろうな?と。韓国にも原子力発電所があってどの程度内部脅威対策が進んでいるか知りませんけれども、我々陣営が北朝鮮の核開発をアシストしては話にならない訳です。そういうことがもしもあったら、完全に我々は舐められているでしょうし、舐められていればどんな圧力を受けても北朝鮮は悪しき希望を持ってしまい、せっかくの圧力の意味が薄くなってしまいます。最低限我々ルートをシャットアウトすれば北朝鮮に流れ込むルートは特定できる訳です。まぁ北朝鮮にウランは豊富ですし、であるがゆえに何となく内部脅威対策が見過ごされてきたのかもしれませんが、兎も角テロを行うのは北朝鮮だけでもありませんし、核物質だけではなくミサイル開発もそうですし、我々陣営は技術大国なのであって、一事が万事で万に一つもテロ組織に大量破壊兵器を渡してはならない訳です。日本から流出した技術や物資が原因でテロリストが大勢人を殺したなんてことがあれば、世界に大迷惑をかけることになりますし、まさかとは思いますが、北朝鮮が日本に対して使うなんてことがあってはならない訳です。

内部脅威者の態様類型を見ると、(1)確信型 思想的、宗教的確信から不法行為を実行・・・これは例えば朝鮮総連に属した経歴がある人は原発に出入りできないということでしょう。背乗り(ウィキペディア)(>工作員など他国人が現地人に成りすますために身分・戸籍を乗っ取る行為を指す警察用語)の危険性もある訳ですが、マイナンバー制などプライバシーに関わる対策もこうした治安上の要請もあると思われます。テロリストの立場にたってみると、総背番号制ダーと言って反対論を煽りたくなりますよね。まぁプライバシーを守りたい気持ちも分からないではありませんが、工作員などのチェック漏れで大変な事故が起これば、それどころじゃなくなる訳です。北朝鮮の兵器開発に在日本朝鮮人科学技術協会が協力しているという話もありますし、警察や公安調査庁もしっかり北朝鮮はマークしているとは思いますが、全てはチェックできないでしょうし、兎も角内部脅威対策は様々な意味から進める必要があると思います。日本においてこうした対策のノウハウがあるのは警察庁や公安調査庁かもしれませんが、自衛隊も勿論そうですし、文部科学省や経産省もシッカリ対応する必要があるということです。マイナンバー制は総務省ですね。テロ資金は財務省です。さて内部脅威者の態様類型に戻ると、(2)誘惑型 テロリスト等からの金銭などの誘惑に負けて、不法行為を実行。(3)被脅迫型 トラブルや個人的な弱みに付け込まれ、テロリスト等により脅迫されて、不法行為を実行。(4)報復型 職場内の不満に対する報復として、不法行為を実行。(5)心身衰弱型 ストレス等により心身衰弱となり、突発的に不法行為を実行。(6)愉快犯型世間を騒がす等の目的で、不法行為を実行・・・ということで、もうこれは完全にスパイの世界だと言えるのではないでしょうか?日本には対外諜報機関であるところのCIAに当たる組織は基本的にない訳ですが、FBIに当たる組織(=警察庁)がない訳ではありませんので、この辺のノウハウが全くないという訳でもないんだろうと思います(ただし警察白書には28年までに北朝鮮の諜報事件を53件検挙、ソ連崩壊以降ロシアの違法行為を9件検挙しているとありますが、索引に内部脅威の文字はありません)。でも警察だけだと若干視野が狭くなるかもしれませんね。兎も角、原発に出入りする人がハニートラップに引っかかったり、金の誘惑に負けたり、脅迫されたり、職場に不満をもったり、心身衰弱したり、愉快犯的に大量破壊兵器流出やテロに繋がる形で不法行為しないかチェックしなければならないという訳です。まぁ重要施設に関わる人物を絞るとかいろいろやりようはあるんでしょうが、専門家がやってない、やれと言われるなら、日本は十分にやってないんだろうと思います。こういうのって、やってないと問題があっても気づかないところが恐ろしい訳で、それがまた狙われる原因にもなりかねません。

以下(3)に続きます。142p「日本で重視されていない公的検証」から始める予定です。



解雇の金銭解決制度と人手不足の解消、賃上げ、経済成長

2017-12-25 22:33:20 | 政策関連メモ
日経社説 2017/12/25「長期政権にふさわしい構造改革を」を読みました。

日経さんは2017/6/4 2:30に「解雇の金銭解決制度は必要だ」という社説も書いていますね。自分も解雇を金銭で解決する制度をつくることは重要だと考えます。実際問題、解雇が不当という判決が出たからといって、元の職場に戻って仲良く働くことは難しいと考えられます。事業が苦しくなった時、やはり解雇に踏み切らざるを得ない時はあるでしょう。そういう時に円満に退職してもらうために金銭を出すというのは有り得る手法です。企業も下手に訴訟で揉めるよりはその方がいいでしょうし、労働者の側もただ解雇されるよりお金をもらった方がいい訳です。今は人手不足の時代ですから、やる気さえあれば、次の仕事は見つかります。労働組合は解雇促進を懸念するかもしれませんが、逆に応募しても人が来ない状況をどうにかすべきはずです。同一労働同一賃金も恐らく人間関係が出来上がっている今の会社でどうにかしようとするより、一旦リセットして最初からダメとした方が上手くいくような気もします。イタリアなんかでは「金銭解雇OK」で新規正規雇用が36%増加したそうです(「解雇規制を緩和したら正社員が増えた!」 イタリアで労働市場改革に成果、首相も自画自賛 キャリコネニュース 2015.8.31)。仕事は生活基盤ですから、強い会社が差別的にドンドン解雇すると労働者が困るという側面はあると思います。ですから解雇に関する法的問題には踏み込みませんけれども、例えば立場が強い大手企業はまだしも、例えばそれほどでもない企業で不採算店舗の整理が進まないのだとすれば、これは結局金銭的問題ですから、解雇を金銭で解決できれば話は分かり易くなりますし、より上手くいくと考えられます。

商売は立地が重要だと言われます(店を繁盛させる立地条件の不思議 ジャパン・ビジネス・ニュース 1998.10.1)。立地が不味いとどうしようもないことはある訳であって、何時までも採算がいい店舗・事業所から補填して維持するようなことは経済的ではなく、その店舗・事業所は閉鎖し金を払ってでも従業員は解雇するべきなんだろうと思います。これは人の問題・法の問題・差別の問題ではありません。経済の問題です。ライバル店舗・事業所の出現など予測が難しい問題で不採算店舗ができるケースも有り得ますが、単に経営判断が不味いケースで不採算店舗ができるケースもあると思います。いずれにせよ、事態が動いた方が物事は分かり易く責任も明確化されてくるのではないでしょうか?

建設業界など賃金を上げても中々人手不足が解消されない業界もあって、賃上げ要請や金融政策だけに依存することに疑問がないではありません。労働の供給や待遇の改善・教育の段階での対応など総合的施策が求められているのではないでしょうか?(参考:「建設業の人手不足」の理由と打破するための3つの改善ポイントを解説 BOWGL 2017.11.15)。賃上げをして潰れるような業界は潰れるべきという正論だけでは安定的な仕事はなくなってしまい、失業者が増えすぎ生活保護が増えて経済が悪くなる可能性もあるような気もしており、筆者は経済を見る上でもう少し労働問題に注目していこうと思っていますが、それはさておき人手不足問題の改善で注目すべきは労働者をどう供給するかということであって、経営者が不採算を見切って労働者を解雇し、労働者の側は現在需要がある業界に移るというようなプロセスが経済の活性化には必要ではないかと考えられます。手持ちのスキルを考えると業界内移動や職種別の移動(経理が業界は違っても別の会社の経理に移るなど)が効率がいいとは思いますが、もう少し新天地への移動(業界間移動)に注目してもいいような気はします(2017年の賃上げ額平均5627円で過去最高 建設業では8000円超、飲食サービスでは3000円に留まる キャリコネニュース 2017.11.30)。建設業界も楽な仕事ではありませんし、ホワイトカラー→ブルーカラーの移動は難しいかもしれませんが、中には適性のある人もいるかもしれません。人手不足の業界というのがスキルが必要な業界であれば、教育の充実、職業訓練・資格取得の促進など別種の対策も必要になってくるとは思います。賃金が中々上がらないと言われて久しいですが、結局のところ、人が必要であるのに来ない業界に着目し、そこに人材を供給するにはどうしたらいいか?を考えねばなりません。これを新卒だけで対応していくのは無理があります。逆にホワイトカラーで重要な仕事の労働力供給を削ることになりますし、問題がここまで来たら既存の労働者とのバランスの問題で(総人件費を上げすぎられないから)初任給上げに限界があるはずです。だからと言ってそんな業界潰れていいでは、この世に仕事が無くなり失業者が増え生活保護が増え経済が悪くなる可能性もあります。要は政策の総動員ですが、どうも解雇が進まない=新卒でない労働者が供給されないことに問題があるような気がしました。賃上げは労働需要のある業界から進みますが、供給が少なすぎると問題が上手く解決しないと考えられます。少子高齢化の逆ピラミッド社会が明らかな現状で、これまでの新卒依存若者依存男性依存の慣習をそのまま維持して問題が解決するはずはないと見切ることが必要なのであって(これはあまり難しく考える必要もないと思いますが、数学的計算問題だと思います)、中途採用・女性・高齢者あるいは外国人全て検討してみるべきでしょう。日本は新卒採用一辺倒できた国なのであって、その新卒の数が減っているのですから、今の慣習をそのまま維持するとどんな政策を行ったところで、あっちが立てばこっちが立たないということになって、120%政策が上手くいかないということになると思います。今までの慣習の良いところを残しつつ、広い視野を持って慎重かつ大胆に(!)政策を進めなければなりません。

※筆者のfaceboook投稿を加筆・修正した記事


農業と土地の「所有者不明化」問題、サプライサイドの改革

2017-12-25 20:19:53 | 政策関連メモ
読売社説 2017年12月25日 06時00分「コメ減反廃止 競争力強化へ規制改革を急げ」を読みました。

>農地の集約も遅れている。大規模農家が利用する農地の割合は、23年に80%とする政府目標に対し、いまだ54%にとどまる。まずは所有者不明の農地を取引しやすくするルール作りが急務だ。

最近注目され始めた問題に土地の「所有者不明化」問題(東京財団)があると思います。問題は特に地方で土地に需要がないため引き取り手が見つからないことから発生しているように思えます。地方の過疎化は大きな流れでこの流れを止めていくのはかなり難しいように思えますが、何故過疎化するかと言えば、結局のところ仕事がないことに尽きているように思えます。逆に言えば、仕事さえあれば、この流れに歯止めをかけていくことも不可能ではないかもしれません。そう考えるとこの土地の「所有者不明化」問題を考えるに当たって、如何に土地を利用して仕事を創るかという発想が必要になるのではないかと思います。如何に手数料など下げたところで、仕事がないところに人は集まりません。仕事があれば空き家の問題は後から解決します。過疎地ほど競争力のある仕事を創るのは難しい訳ですが、やはり農業はひとつの柱になるでしょう。

日本は少子高齢化が進みますが、世界の人口の増加傾向が止まった訳ではありません。バイオやドローンなど新しい技術も登場しています。日本は人件費も高く土地も狭く決して農業に国際的競争力がある訳ではありませんが、チャンスがない訳でもないでしょう。米作りは日本開闢以来の伝統ですし、食文化は地域の風土とも結びつき、観光の目玉にも成り得ます。食糧安全保障の観点からも、ただ自由競争で農業が潰れていいということにはならないだろうと思います。所有者不明の土地はそのままにしておくべきではないのは自明だと思いますが、アメリカではランドバンクという仕組みが機能しており、安倍政権でも日本型ランドバンクを検討しているようです(地方の再開発促進へ「日本型ランドバンク」創設を検討 所有者不明の土地再活用 産経ニュース 2017.5.10 07:00)。筆者の感覚では公有財産(ウィキペディア)として地方自治法238条に不動産も規定されているようですし、経済性が低い過疎地において、地域の実情を知り、シンクタンク機能があって、実働部隊として機能できるのは行政ではないかというイメージもあるのですが、この辺の問題の検討は始まったばかりですし、とりあえずさておき、纏まった農地や山林に人を呼んで定住してもらい、農業や林業を営んでいただくことが重要ではないかと考えます。当然ただ住んでもらって生活保護を出そうとかそういうことではありません。支度金を出すとか一定期間の農作業の実態があって権利を渡すとか何か移住を促すと共に定住と職の問題もセットで考えていくべきではないでしょうか?

そういう仲介を専門とする企業・組織が出てきてもいいと思いますし(ランドバンクがそうかもしれません)、企業(農業法人)が人を雇用して地方での農業を進めてもいいと思います。競争力の問題は所得保障制度を利用すればカバーできますし、スタート時に厚く補償して徐々に補償を減らすというような参入障壁を減らす政策も考えられます。

>14年から拡大された飼料米向けの補助金制度は問題が大きい。

>補助金がなくなる食用米から飼料米に品種を切り替える農家が急増した。農業の競争力強化に逆行しているのは明らかだ。

飼料用米に関しては、主食用米からの作付転換が容易なこと、安定的な畜産経営にも寄与することから促進されているみたいですね(飼料用米関連情報 農林水産省)。補助金依存になったら問題ですが、農業の維持を是とするならば、始まったばかりの段階で批判するのは疑問でしょう。補助金=悪という考えに一定の妥当性はあると思いますが、補助金が一切無かった場合、人件費の安い途上国の農業に駆逐され、あるいは大陸の大規模農業(強いイメージですがEUやアメリカの農業も所得補償で支えている側面があるようです)に駆逐されてしまうでしょう。既に指摘しましたが、文化や食糧安全保障など農業には多面的な機能もありますから、競争力をつけていくと共に、必ずしも補助金は否定されるべきではないと考えます。

>コンビニなど業務用の食用米が不足し、身近な食品の材料費を押し上げている。場当たり的な政策の弊害であり、見直すべきだ。

コンビニ等でのおにぎり・お弁当による消費が増えており、業務用の食用米のニーズは拡大しているようです。業務用の食用米は収量が多く価格の安い品種へのニーズが高いようですが、家庭用のブランド米の消費は減っているようです(業務用米の動向について 農中総研 調査と情報 2014.9(第44号)〈レポート〉農林水産業 主事研究員 小針美和)。こうした大きな流れを踏まえ、フレキシブルに対応していくことが重要だと思いますが、そうした動きをするのは一部の農業法人に止まり、大多数の小規模・高齢農業者は品種の切り替えが困難なケースが多いようです。アベノミクスの第二次成長戦略では農業改革も行われ農業法人も強化されました(アベノミクス:第二次成長戦略:農業改革と課題 HuffPost 2016年04月11日 15時19分)。成果が出てくるのはこれからではないかと思います。

>民間企業は、農地を所有できる農業法人への出資比率が50%未満に制限されている。経営の主導権を握れないため、企業の農業参入を阻む一因となっている。

「農業生産法人」への出資上限が25%から50%未満に引き上げられたのはアベノミクスにおいてであり、将来的により引き上げていくべきかもしれませんが、まずはしばらく様子を見るべきでしょう。

>日本のコメの輸出量は、この5年間で4・7倍に拡大した。それでも農産品輸出額のわずか0・6%に過ぎない。半世紀ぶりの農政の転換を、確実に「稼げる農業」の実現につなげていきたい。

米の輸出は始まったばかりのようですが、1位が香港で、2位がシンガポールでお金はあれどもそもそも農地がないところに輸出されています(米輸出関連ホームページ 農林水産省)。中国は人口も多く富裕層も多いですが、アメリカに対してよりも輸出が少ない現状のようです。やりようによっては大きな可能性もありそうですね。東南アジアや中国中南部はインディカ米ですが、中国東北部は日本と同じくジャポニカ米で、香港や華僑の国シンガポールで需要があるなら、中国本土に大きな可能性もあるでしょう。まぁあの国は農地もありますから、自分でつくるつもりなのかもしれませんがね。いずれにせよ、輸出拡大で「稼げる農業」の実現を目指していくことは、その通りだと思います。

>全国農業協同組合中央会(JA全中)などは今月、新たな全国組織を発足させた。国が発表するコメ需給見通しを踏まえ、地域ごとに生産量の目安を示すという。

>国に代わって生産量を調整し、減反廃止による米価の値崩れを防ぐ思惑があるのだろう。

>農家は新たな目安に沿って生産を抑えても補助金が出るわけではない。生産調整がどこまで実効性を持つかは不透明だ。立場の強い流通業者などが、調整に参加しない農家との取引を拒むような行為は決して許されない。

読売さんも懸念していますが、農協のような組織が需給見通しを出したからといって、生産調整が上手くいくかは疑問でしょう。それよりは需給の動向を見極めフレキシブルに対応できる人・組織を育てた方が上手くいくと考えられます。専門的知識と行動力があって、需要をつかめるのは結局サプライサイドですから、そうした改革を重視するべきなんでしょう。別に農協が悪とまでは言いませんけれども、末端にこれだけの量をつくれば上手くいくと指示を出して守らせるような手法は社会主義的で失敗することは歴史が証明しているように思えます。世の中にはやる気のある人もない人もいるので、結果の平等を予め定めてしまうと経済は伸びないようになっているのではないでしょうか?

筆者のツイッター投稿を加筆・修正した記事。

加計学園に決まったことは安倍政権の方針通り

2017-12-25 18:13:51 | 日記
森友・加計問題の著書巡り文芸評論家らを提訴 朝日新聞(朝日新聞 2017年12月25日16時18分)

>朝日新聞社は25日、文芸評論家・小川栄太郎氏の著書「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」が、事実に基づかない内容で本社の名誉や信用を著しく傷つけたとして、小川氏と出版元の飛鳥新社に5千万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを東京地裁に起こした。

>加計学園の獣医学部新設問題で、朝日新聞は5月17日付朝刊1面(東京本社14版)「新学部『総理の意向』 文科省に記録文書」など、一連の文書の存在とともに取材で判明した事実、国会審議などをその都度詳細に報じてきた。行政の公平性が損なわれた恐れはなかったか、という視点からだ。

四国は獣医学部の空白域です。その点で大阪府立大学がある関西の京都産業大学に対して優位性があったということでしょう。 そもそも獣医学部の新設の話は東西の偏在の問題の解消から出てきています。ですから、より偏在が解消できる方が選ばれたことは妥当だと考えられます。関西と四国を比べると(面積もそうですが特に人口比で)圧倒的に関西の方が大きいので関西2で四国0でもあるいは妥当に思えるかもしれません。しかしながら畜産は特に関西では盛んでなく、2対0にするぐらいなら1対1の方がベターだと考えられます。犬猫病院獣医師数を比較すると、関西より四国の方が遅れていることは明らかです。特に京都は関西の中でも充実しており、 逆に愛媛は四国の中でも遅れています。香川県の獣医師の息子議員が獣医学部設置に否定的でしたが、香川は四国の中では犬猫病院獣医師数が充実しています。※犬猫病院獣医師数(都道府県別統計とランキングで見る県民性 2013-11-20)

偏在を解消するか逆に集中させるか議論はあっていいと思います。ですが、安倍政権は地方創生を掲げ、大学の都心回帰を抑制しました。加計学園を選んだことはこうした安倍政権の方針に合致するもので、誤解を招いたのは首相も認める通りですが、何ら不審なところはありません。

大学の偏在を解消することの意義はあります。勿論就職先は別の県に行く方が多数派なんでしょうが、大学のあるところに定着する人もいる訳で、大学という箱があるから、大学のある地域が活性化する側面があることは否定できないと思います。ですから、地方はお金を出してでも大学の誘致に必死になる訳です。勿論採算の合わない大学に公金をつぎこむことに批判が有り得るのは当然です。ですが加計問題を見る限りその手の批判をあまり見ることはありませんでした。本質を外した揚げ足取りの批判のように見えます。

また、加計問題を追及したマスコミが追及されることも当然です。北朝鮮問題を筆頭に国民のために取り上げなければならないテーマを放り出し、加計問題のような硬派でない言わばくだらない「問題」をマスコミは延々と取り上げました。これは政治のワイドショー化と言えます。ワイドショーの方があるいは硬派なテーマより面白いと感じる人が多いのかもしれません。ですが、政治が目先の面白いことばかりを追及するのは疑問でしょう。 飢えたならず者の嫉妬をあまりにも軽視していないでしょうか?とるに足らないテーマを追及し、ミサイルの乱射や核拡散といった深刻な問題がおざなりになるようでは、いずれ日本は足元を掬われ深刻なダメージを受けかねません。福島の手痛い失敗も深刻なテーマを避けてきたことと無縁でないように思えます。あげくゼロにしようという極論に傾いてしまいます。獣医学部新設が加計に決まったことは、安倍政権の方針に合致するものと思いますが、仮にそうでないとしても如何ほどの問題があるでしょうか?

大体が朝日がそれほど公平性に関心があるなら、獣医学部の新設を獣医師会が暗躍して潰してきたこと、獣医学部が偏在していること、定員が水増しされ誤魔化されてきたことに着目すべきでしょう。朝日は「角度をつける」発言で批判の声があります。一切角度がない不偏不党中立の見方というのはないんだろうと思いますし、議論を活性化させるためには対立軸というのは必要だろうと理解はします。でも「角度をつける」ためにファクトを捻じ曲げるようでは報道する資格はありません。大体が「角度をつける」朝日が公平な報道ができるか疑問でしょう。公平な見方を維持しながら、「角度をつける」のは困難なのであって、朝日は加計問題で大きく失敗したように思えます。

小川氏には申し訳ありませんが、客観的に見て、朝日が総理の意向を勝手に推し量っていることと、小川氏が朝日の意向を勝手に推し量っていることと如何ほど違いがあるでしょうか?天下の大新聞が批判されたら5000万の損害賠償を個人に求めるようではおちおちマスコミ批判もできなくなります。 朝日は安倍首相の関与を立証できた訳ではありません。疑惑を追及しただけです。小川氏も疑惑を追及しただけのように見えます。小川氏がアウトなら立証できずにただただ疑惑を追及して政権にダメージを与えた朝日もアウトだということになります。それも先にやったのは朝日で小川氏が何も無いところから今回朝日を批判した訳ではありません。政権が程度問題はあるでしょうが、マスコミからの批判を甘受しているように(たまに首相はキレますが)、 マスコミも評論家の批判ぐらい受け流さずにどうするんですか?朝日に安倍首相の言葉「鍛えていただいてありがとう」を噛みしめてもらいたいと思います。朝日もまだまですね。大新聞が評論家に5000万求めるような訴えは止めたらどうですか?弱いものイジメが好きなんですかね?

※筆者のツイッター投稿を再録して纏めた記事

追記:朝日の抗議文に対する小川榮太郎氏の見解は月刊Hanada2月号にも載ってますね。これは自身に対する訴訟を踏まえたものではないと思いますが、後から来た朝日の訴訟における主張と比較しても小川氏の主張に分があると考えられます。気になる方はご自身で両者を比較しても良いでしょう。筆者も機会があれば、この論争に関して更に取り上げます。