観測にまつわる問題

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日中戦争開戦に纏わる誤解

2017-12-09 16:07:30 | 日記
Newsweek12月12日号「「歴史」とは何か、「記憶」とは何か」「「開戦」の歴史と向き合わずに和解はできない」を読みました。

アメリカは開戦に注目し、日本は終戦に注目するという指摘はなるほどそうかなと思いますが、まぁ申し訳ないんですが、日本の議論をよく知らないなという印象がなくもないですね。アメリカの見方として参考になると思いましたので、取り上げます。もっとも誤解だと思うのは日本の開戦時期についてです。

グラック教授は先の大戦の開戦を37年(7月7日)盧溝橋事件、中国においてであると主張しますが、筆者は端的に誤りだと思います。別に1941年の真珠湾攻撃が先の大戦の始まりだから、中国は関係ないと主張したい訳ではありません。アメリカとの開戦を始まりと見るか中国との開戦を始まりと見るかは、どちらでも可能だと思います。確かにアメリカは中国を影ながら支援していましたから、中国との戦いを始まりと見ることに無理はありませんが、そう考えると先に手を出したのは日本との関係ではアメリカという見方も可能です。当時米中軍事同盟があった訳ではありません(少なくともそんな話は聞いたこともありません)から、日本はアメリカには手を出していないという前提で、真珠湾攻撃が日本の奇襲開戦だという話が成立しています。ですから、アメリカに負けて終戦したなら、開始を日本の対アメリカ攻撃に見ることも決して誤りではないでしょう。1941年(昭和16年)12月12日に東条内閣が閣議で「大東亜戦争」と決定し、支那事変も含めるとされましたが、(準備はしていたかもしれませんが)これは真珠湾攻撃の後です。日本がアメリカと戦う意図なく中国と戦争を始めたということを意味すると思います。アメリカから見たら中国に手を出していることが自国に対する挑戦だと思えたのかもしれません。この辺は(筆者の知る範囲では)満州の権益争いで日米関係が拗れたことが原因だろうと認識しています(近現代史に詳しくないので誤っている可能性もあります)。その辺はさておき、筆者が指摘したいのは、事実として日中戦争は盧溝橋事件で開戦していないだろうということです。

支那事変(ウィキペディア)

>支那事変(しなじへん)とは、1937年(昭和12年)に日本と中華民国(支那)の間で始まった、長期間かつ大規模な戦闘である。なお、盧溝橋事件(1937年7月7日)は、4日後の松井-秦徳純協定により収拾している。その後の中国共産党の国共合作による徹底抗戦の呼びかけ(7月15日)、及び蒋介石の「最後の関頭」談話における徹底抗戦の決意の表明(7月17日)により、中国軍の日本軍及び日本人居留民に対する攻撃、第二次上海事変が連続し、戦闘が本格化した。したがって、日中戦争(支那事変)の端緒を、盧溝橋事件と考えるか、国共合作による抗戦の呼びかけ・最後の関頭談話と考えるかにより、同戦争の歴史的な評価は大きく変わることになる

>1941年(昭和16年)12月までは、双方とも宣戦布告や最後通牒を行わず、戦争という体裁を望まなかった。戦争が開始された場合、第三国には戦時国際法上の中立義務が生じ、交戦国に対する軍事的支援は、これに反する敵対行動となるためである。国際的孤立を避けたい日本側にとっても、外国の支援なしに戦闘を継続できない蒋介石側にとっても不利とされたのである。

>特に中国にとっては、アメリカの国内法である中立法の適用を避けたかったことも大きい。中立法は1935年に制定された法律で、外国間が戦争状態にあるとき、もしくは内乱が重大化した場合に、交戦国や内乱国へ、アメリカが武器および軍需物資を輸出する事を禁止するものであった。当時、アメリカでは日本に対し中立法の適用を検討したが、中国に多量の武器を輸出していた事もあって発動は見送られた。

支那事変=日中戦争だと考えると、盧溝橋事件で開戦という見方が当たっているように見えなくもありません。ですが、盧溝橋事件は、4日後の松井-秦徳純協定により収拾しているのですから、盧溝橋事件をスタートと見るのは事実として誤りと断定せざるを得ません。終わったのに終わってないというのは形容矛盾です。終わったものを誰かが開始したから、停戦協定後に治まった状況が動いた訳です。他に解釈のしようがあるでしょうか?停戦協定の嘘を真実と認めたら、停戦協定を結べる道理がなくなります。停戦協定が必ず守られると考えるのはナイーブですが、停戦協定をやぶったものを停戦協定をやぶって戦争を開始したと見ない限り、本当のところは分からないはずでしょう。盧溝橋事件はすぐ終わった(同様の事件はその後もあった)。そして何ものかが日中戦争を開始した。これが歴史的事実です。盧溝橋事件とは所詮は小競り合いに過ぎません。まぁ小競り合いが大規模戦争に繋がる可能性も否定できませんが、少なくとも日本は事態不拡大に努めていたようです。

日中戦争をどちらが開始したかですが、これは中国が開始しました。何でそう言い切れるかと言えば、中国自身が戦争(徹底抗戦)を呼びかけて攻撃を開始しているからです。抗戦という言葉に誤魔化されてはなりません。日本が攻撃を開始した訳では明らかにありませんから、抗戦もクソもない訳です。中国が日本の進出に不満を持って追い出したいと思っていたであろうことは理解しますが、事実は事実。如何に中国の見方で中国に大義名分があろうとも、先に手を出したのは中国です。日本にはABCD包囲網などアメリカの圧力が開戦の原因だという主張があって、一定程度の説得力はありますが、開戦したのはどう見ても日本です。それでも開戦させられたと言いたがる人は保守派(右派)には結構多いです。中国も同じでしょう。どう見ても中国から手を出したのですが、日本を追い出すためだったから仕方が無いで(理解はします)、先に手を出すというのは不味いですから、誤魔化そうとしているんでしょうね。日本がそこで徹底的に中国が戦争を仕掛けてきたと宣伝すれば良かったはずですが、何故かそうしていません。当時も説明力が無かったんだろうなという気がしますが、その辺は良く分かりません。国際的孤立を避けたいとか言っても、結局全然避けられていませんし、事変だと日本が誤魔化したのは、戦争が起こってないことにしてアメリカの支援を得たい中国を利するだけだったではないでしょうか?戦争だと宣言して日本がアメリカに中立法を適用されたとしても、交戦国(中国)にも適用しなければならかったはずです。まぁ新しい立法もできますし、米中関係・日米関係を考えれば、戦争が始まったら、日本だけが一方的に制裁されるというのが当時の見方だったのかもしれませんが、中国の攻撃の出だしから批判すべきは批判していればどうなっただろうなと思わなくもないんですよね。青いのかもしれませんが。この辺は中国の開戦をアメリカが事前にどの程度知っていたのかにもよります。

もっと詳しく見るために第二次上海事変(ウィキペディア)を参照します。

>中華民国に駐在していたドイツ軍事顧問団団長ファルケンハウゼンは、「中国の敵は日本が第一、共産党を第二」と考え、1935年10月1日、漢口と上海にある租界の日本軍に対する奇襲を提案し、1936年4月1日、「今こそ対日戦に踏み切るべきだ」と蒋介石に進言し、北海事件後の9月12日には河北の日本軍を攻撃するよう進言した。

>1935年冬、国民政府は、南京・上海方面の「抗戦工事」(陣地)の準備を張治中に密かに命令し、優勢なる兵力をもって奇襲し上海の日本軍を殲滅しこれを占領し、日本の増援を不可能にしようと企図した。このため、上海の各要地に密かに堅固な陣地を築き、大軍の集中を援護させ、常熟、呉県で洋澄湖、澱山湖(中国語版)を利用し、主陣地帯 (呉福陣地: 呉県と福山(中国語版)の間)と後方陣地帯 (錫澄陣地: 江陰と無錫の間)、淞滬線: 呉淞と竜華の間、呉県から嘉興を通って乍浦鎮の間(呉福延伸線)にトーチカ群が設置された。阿羅によれば、呉福陣地や錫澄陣地は、「ヒンデンブルク・ライン」と総称された、という。

中国(国民党政府)が日本を追い出そうとドイツの顧問の意見を参考に戦争準備を着々と行ってきたのは間違いない歴史的事実でしょう。ただし、この時は決断できていないようです。

>7月7日に起きた盧溝橋での日中両軍の衝突は停戦協定で収まるかにみえたが、その後も中国各地で日本軍への抵抗は続いた。直後の7月10日蒋介石は蘆山会議を経て、徐州付近に駐屯していた中央軍4個師団に11日夜明けからの河南省の境への進撃準備を命じた。7月16日には中国北部地域に移動した中国軍兵力は平時兵力を含めて約30個師団に達している。アメリカはこの行動を非難し、地方的解決をもとめている。一方、日本軍は日本政府の事態の不拡大政策に基づき事態の沈静化に努め、8月3日には天津治安維持委員会の高委員長に被災した天津のための救済資金十万元を伝達している。

抵抗と言いますが、日本軍が攻撃してきたとは書いていません。中国軍が抵抗と称して攻撃してきたからです。抵抗と言うのは日本を追い出すことが大義名分になると思っていたからであって、日本が手を出したことに対する直接の反撃を意味する訳ではありません。仇討ちにやや近い感じで、日本が進出した後になって、それを不服とする中国から襲撃してきたと見るのが客観的と思います。いずれにせよ、日本は中国のこうした挑発にのりませんでした。ヒンデンブルグラインとかどう見ても中国がやる気満々で戦争を求める中国に挑発されたからといって、大義名分(日本から先制攻撃)をくれてやって戦争を始める気は無かったんだと思います。しかし指導部は分かっていたでしょうが、国民に我慢を強いたことが後の南京事件に繋がった可能性はあると思います。いずれにせよ、中国のこうした行動は当時の国際社会は承知していてアメリカも中国を非難したようですし、日本は明らかに事態の不拡大政策をとっています。問題は盧溝橋事件の類が日本からの開戦を意図した中国(コミンテルンの謀略だと言う人もいます)の謀略か、偶発的な事件かということです。この辺は個別の事件を丹念に見るしかないでしょうが、その辺は学者・研究者の仕事でしょうね。ちなみに舞台となった上海には上海租界(ウィキペディア)があって、かつての香港のように中国の統治が及ばない国際都市でした。東洋のパリとも言われ、かなり繁栄したようです。

>1937年(昭和12年)7月7日の盧溝橋事件を発端に、同月28日に至り日中両軍は華北において衝突状態に入った(北支事変)。

停戦したり事件が起こったり派兵したり一触即発の状態でしたが、本格的な攻撃の開始は中国が始めています。日本は事態の不拡大の政府方針通りだったと見ていいでしょう。挑発にのらない日本に痺れを切らした中国がついに決断したのではないかと思います。それでも中国は宣戦布告などしていませんし、宣戦布告なしの開戦を認めた訳でもありません。

>8月12日未明、中国正規軍本隊が上海まで前進、中国軍の屈指の精鋭部隊である第87師、第88師などの約3万人が国際共同租界の日本人区域を包囲した。日本軍の上陸に備えて揚子江の呉淞鎮と宝山にも約1千名を配置した。

>対する日本軍は、上海陸戦隊2200、漢口から引き揚げてきた特別陸戦隊300、呉と佐世保から送られた特別陸戦隊1200、出雲の陸戦隊200、他320の計4千人あまりであった。

>8月19日以降も中国軍の激しい攻撃は続いたが、特別陸戦隊は10倍ほどの精鋭を相手に、大損害を出しながらも、租界の日本側の拠点を死守した。蒋介石は後日、「緒戦の1週目、全力で上海の敵軍を消滅することができなかった」と悔やんだ。

戦争を仕掛ける側が圧倒的に有利な状況にあるのは当然のことです。当然真珠湾攻撃そのものは成功しましたが、日本はアメリカにボコボコにされています。中国は圧倒的に優位な状況で戦争を仕掛けたにも関わらず緒戦から敗北してしまいます(だからウッカリすると日本が攻撃したとか、どっちもどっち式のデマが流れることになります)。ですが、最終的には中国は日本に勝ったことになります。日本がアメリカに負けたことによる棚ボタではありますが、日本が広い国土を攻め切れなかったというのもあります。ドイツもソ連を落とせませんでしたが、広い国は厄介なところがあります。中国は援蒋ルートで英米ソの支援もありました。ソ連もアメリカの支援を受けていたようです。アメリカは今も強いですが、当時も滅茶苦茶強かったということでもあります。戦争中に自分から参戦できなかったのですから、もしも日独が中ソを落とせていれば、アメリカから開戦することは無かったような気がしないでもありません。

>937年8月31日の『ニューヨーク・タイムズ』では一連の事件について「日本軍は敵の挑発の下で最大限に抑制した態度を示し、数日の間だけでも全ての日本軍上陸部隊を兵営の中から一歩も出させなかった。ただしそれによって日本人の生命と財産を幾分危険にさらしたのではあるが…」と上海特派員によって報じた。1937年10月7日の『シドニー・モーニング・ヘラルド』は「(居留民を)保護するための日本軍は増援を含めて4千だけであった。…ドイツの訓練を受けた部隊から徴用された2~3万の中国軍と向かい合って攻勢を開くだろうとは信じ難い」とする。 また、『ニューヨーク・ヘラルドトリビューン(英語版)』は9月16日に「中国軍が上海地域で戦闘を無理強いしてきたのは疑う余地は無い」と報じた。

別に歴史を修正する意図はありません。寧ろ当時日本が戦争を仕掛けたと見る外国勢は(恐らく)いなかったのであって、中国がこうした過去の歴史を修正しているように見えます。日中戦争で戦争を停止する試みもあったようですが、この記事の目的と異なりますので、深入りはしません。結局は日本は事態の不拡大方針にも関わらず戦争を止められず、泥沼に入ってアメリカと戦い終戦を迎えます。アジアにおける第二次世界大戦のスタートを中国に見るなら、開戦を決断し実行したのは中国であると事実を指摘するのみです。日本がその辺に気を使わず事態を曖昧にしてきたことも悪いのですが、盧溝橋事件のような取るに足りない小さな事件に着目して、歴史の大きな流れを見失うべきではありません。

中国は最近こういうことに気付いてきたフシがあります。

「抗日戦争は満州事変から」 中国教育省が教材改訂指示(朝日新聞 2017年1月12日00時24分)

どうしても日本から攻撃してきたことにしたいようですが、満州事変は満州国の建国を持って切れているので、無理がある見方だと思います。まぁ近現代において、「中国人の土地」に先に進入したのは日本かもしれませんが、満州は歴史的に満州人の土地で、漢民族が入ったのは清代以降(それも長年移住は禁止されてきた)に過ぎません。人口の問題もあって、漢民族の土地になったていもありますが、中国人自身も含めて少しでも東アジアの知識がある人であそこが漢民族の土地だったと思っている人はいないと思います。そもそも中国に進出したのは欧米列強も同じで、日本は欧米列強の侵略を何とか跳ね返しましたが、そういう複雑な事情が当時にはあります。いずれにせよ、広く戦争をとろうと思えば広くとれると思いますが、満州事変(1931~32年33年)と支那事変(1937年~)を一緒にするのは無理があると思いますから、中東戦争よろしく、第一次抗日戦争、第二次抗日戦争ぐらいにするべきでしょうね。そして二次の方は自分から開戦したのですから、歴史を修正しないでもらいたい。歴史は勝者がつくると言いますが、中国だけが勝者なのかもう一度考えてみるべきかもしれません。

中国が最近言い出したところの抗日戦争の発端満州事変は、日本の謀略による侵略と思います。アメリカもトンキン湾事件を捏造して、ベトナム戦争を仕掛けたということがあったような気がします。まぁ中国には中国の言い分があると思いますが、嘘をついたらいけません。国際社会を騙そうとするのは止めて欲しいですね。アメリカという国も分かってか分からいでか、アジアを良く知らずに中国(韓国)に騙されるところがあるんじゃないですか。戦前日本は台頭するアメリカファクターを重視することが出来ず、敗戦に至ったような気がしますが、中国(韓国)並みといかないまでも、アメリカ世論を軽視して、同様の敗北を繰り返さないで欲しいですね。別に自分の歴史を都合よく解釈しろとも言いませんが、相手の主張で当時の文脈と違うものは資料を見れば分かるでしょうから、相手の修正を止めさせることぐらいは敗戦国でもできるんじゃないでしょうかね。歴史資料(ウィキペディア)を歴史学における資料批判を通じて常識的な解釈をしていただければ、少なくとも筆者が文句を言うことはありません。聞いてますか?中国さん、韓国さん(笑)。

今度は中国の台頭だろと思うそこのあなた!筆者とは相容れない見解のようですね。健闘を祈ります(笑)。

※なお、日中戦争が中国の開戦だというのは筆者が独自に考えたアイディアではありません。筆者が知る範囲では一度だけ会ったことがあるある人(分かる人は分かると思いますが、事情があって名前はあえて出さないでおきます)が言い出したことです。あの国のその筋の人の間では結構周知の事実なのかどうかは知りません。この記事はその着想を元に筆者がNewsweek記事を読んで独自に肉付けしたものです。

中国よ、おまえもか

2017-12-09 14:49:30 | 日記
Newsweek12月12日号「中国人の命は空気よりも軽い」(李小牧)を読みました。

何でも中国人女子留学生が東京都内で中国人の男に刺殺された事件が中国で話題をさらっているのだそうです(事件自体は1年と少し前に起こっています)。事件については検索したら出てきたので貼り付けて起きます。

友人を守ろうとして殺害された中国人女子留学生の悲劇…「生きる希望失った」母親の慟哭(産経ニュース 2016.12.10 16:00)

李氏によると、殺害された江歌さんは小さい頃に父親を亡くし、母親が女手一つで育て上げた一人っ子で、中国は長年一人っ子政策で来て自分の子供が亡くなったらという不安を抱えているので、(共感して)この事件でヒートアップしてしまうということのようです。江歌さんの母親が犯人に試験を求め、日本で署名運動まで始めているようで、それが中国での炎上の原因になっているようです。日本の司法では初犯で1人を殺しても死刑になるのは極めてまれだが、社会感情や政治状況次第で判決基準が変わるのが当たり前の中国人にそのことは納得し難いとの指摘です。

中国よ、おまえもかって思いますね。何処かお隣に情治国家を嘯き、法律より国民感情を優先してしまう国がありますが、さすが宗主国様といった趣があります。

人口が中国の4分の1のアメリカは死刑執行は年間20人ですが、国際人権団体によると(中国は死刑執行数を公開していません)、中国の死刑執行は1000人を超すとの指摘もあります。李氏が指摘するように、中国人民の命と人権を中国指導者が軽く見ているのは間違いないと思いますが、中国人民自身は一人っ子政策の影響もあって、やや異なる見解があるような気がしないでもありません。例えば中国軍は戦える組織なんでしょうか?(中国軍 一人っ子の若手将兵で惰弱なポテチ族蔓延に危機感も NEWSポストセブン 2015.04.11 07:00)北の某国の人質になるぐらいしか使い道が無かったりして(笑)。アメリカも別に中国人民軍など恐れてはいないと思いますが、まぁ中国と開戦する訳にはいかないというのは分かります(北の某国みたいになりたくなければ、世界の独裁者さん達止めてくださいね?)。幾らメンツを潰されても中々中国ってキツイお仕置きを決断しませんよね。韓国も形の上では一応手打ちしましたし。メンツ重視とは何だったのか?

李氏によれば、中国最高検の機関紙、検察日報は「犯人が中国に帰ったら中国の法律で処罰できる!」と煽っているのだそうです。日本も元検察政治家が他人になりすまして投稿した記事を紹介して流行語大賞をとったり(一応疑惑ですからセーフなようです)、病気の妻から夫を略奪したり、ガソリンプリカで地球5周したり、やりたい放題で背筋が寒くなったものですが(てか、おまえこそ氏ね)、1人の問題行動と組織の問題行動は比べるまでもないような気はしますが、政治家ですからね・・・。理論上は首相になる可能性があるのが恐ろしいところです。

事件そのものに関しては、痴情のもつれで巻き込み殺人ですがら、それほど再犯の可能性無いですし、やはりそこまで重い量刑にはならないような気はします。金のためとか快楽のために殺人を繰り返すとかしたら日本でもアウトかと思いますが。これは殺人未遂であって殺人罪ではありませんが、殺人に関する量刑の基準に関して殺人未遂における量刑の相場|量刑の加重減軽を決める基準(刑事事件弁護士ナビ)を参考にしました。犯人は黙秘していますし、あまり反省の色もなさそうですから、それほど情状酌量はないかもしれませんが、死刑相当とは思いませんね。筆者も日本の殺人に対する刑罰は若干軽いような気がしますが(素人の感想です)、殺意が無ければ(証明も難しいと思いますが)、死刑は重すぎる印象です。当人と話し合おうとして邪魔され激高して暴力をふるったということなんでしょうか?良く分かりませんが、日本の司法は精査して妥当な判決を出すのではないかと思います。犯人は協力的ではないようですけどね。こういう人物について報復が怖いですから、被害者が本当のことを何処まで言えるかの疑問は無くもありません。そう考えると中国の判断が妥当に思えるかもしれませんが、この程度(?)で死刑判決を出していたら、中国人自身から見ても、死刑が年間1000人では足りなくなるんじゃないだろうかと思わなくもないですね。やっぱり炎上したからパフォーマンスで殺そう(しかも検察当局が自ら関与)という危険なにおいを感じます。

中国軍駐留で金正恩政権の安全を再保証する案の検討

2017-12-09 13:53:46 | 政策関連メモ
Newsweek12月12日号の「中国軍駐留で北の非核化を」(オルトン・フライ米外交問題評議会名誉研究員)の記事を読みました。

何でも中国軍が北朝鮮に駐留して金正恩政権の安全を再保障する案があるのだそうです。これは冷戦の時のヨーロッパや東アジアでも成功した戦略で、ソ連は東欧の国々を衛星国として再保障し、アメリカは西欧の国々を再保障して、欧州での熱い戦争を防いできました。英仏は核武装していましたが、国連の常任理事国です。北朝鮮は後ろ盾の中露を含めて国際社会一致して非難される存在ですし、勿論核武装が有り得ないことは言うまでもありません。

一見なるほどと思うアイディアですが、やはり問題もあります。中国はそうしたことを行った経験が無く中国自身にこれまでの主張を修正させることもそうですが、何より北朝鮮が中国を信用するのかという問題があるでしょう。筆者もこれまでの経緯(中国にパイプがあった正恩の叔父で当時の北朝鮮No2は一族郎党を含めて処刑されました/中国は自身で北朝鮮に対して影響力が無いと再三主張しています)から、中国軍の北朝鮮進出を北朝鮮が認めるか怪しく思っていますが、最近でもムガベ排除にパトロンの中国が関わっていたのではないかと疑惑があります。チベットやウイグルでの行動を見ていても、中国に進出させると乗っ取ってくるのではないかという印象が先行すると思うんですよね。東シナ海・南シナ海・インド国境での行動を見ても、陰険なサラミ戦術を行使しますし、クーデターなどやられたら堪ったものではありません。絶対無い案とも言えませんし、北朝鮮が核を放棄するなら何でもいいところはあると思いますが、実現には高いハードルを幾つも越えないといけないと思います。いずれにせよ、北朝鮮は最大の支援国中国とも真摯に話してみるべきなんでしょう。

ロシアファクターも考えなければなりません。ロシアが北朝鮮を中国の衛星国にすることに同意しないと状況を掻き乱してくる恐れがあります。最終的には旧ソ連(中央アジア)にロシアが進出して、北朝鮮には中国でいいと思いますが、後ろ盾が2つあると天秤をかけて北朝鮮が自身に有利な立ち回りをしようとして話が進まない恐れがあると思います。順当にロシアに手を引いてもらえるようロシアに対して働きかけたり、必要なら仲介するなど中国とロシアの手打ちを促す必要があるのではないかと思います。まぁあの二国が結託して北朝鮮を支えるという最悪のケースも考えられます。そうなった場合もどうすべきか考えなければなりません。

中国自身の人権状況が悪いですから、あんまり拉致問題が進展しそうな案ではありませんが、兎にも角にも北朝鮮が核を放棄して話し合う環境ができれば、ある程度は何とかなる可能性もあります。それでも何も進まないよりマシと考えるより他ないのではないでしょうか?


中国の会社法19条(中国で活動する外資の経営権と中国共産党の指導の問題)

2017-12-09 12:46:23 | 注目情報
11月24日に在中国ドイツ商工会議所が「中国共産党が今後外資系企業の経営に介入しようとするのであれば、中国市場からの撤退も辞さない」と抗議声明を出したニュースがありました(筆者もfacebookかツイッターで反応しました)が、法的にはこれは中国の会社法19条が大元の原因であるようです。Newsweek(シャーロット・ガオ)12月12日号によると、「いかなる企業にも中国共産党の組織が設立され、党の規約に従って、党活動を行えるようにしなければならない。またどの企業も党組織の活動に必要な条件を整えるものとする」となっているようです。JETROの文書によると(改正前の2008年7月の文書ですが、簡単に検索した結果19条は改正されていないようです)、「中国共産党規約の規定に基づき、会社内に中国共産党の組織を設立し、党の活動を行うものとする。会社は党組織の活動のために必要な条件を提供しなければならない。」です。中国語は分かりませんし、どちらの訳が正確か分かりませんが、JETRO訳の方がキツイ感じですね。「党の活動を行うものとする」ですから、党活動が前提になっており、党活動がないという結果が問題になる可能性があります。「行えるようにしなければならない」だったら、党活動が可能であれば、党活動が無くても構わないと解釈できます。

このNewsweekの記事にあるロイター通信の報道とは8月30日のアングルであるようです。

アングル:中国の外国企業、共産党の「内部介入」を懸念(ロイター 2017年8月30日 / 11:30)

>上述の会合に参加した企業に属する上級幹部は、一部の企業では、中国国営企業との合弁事業について、事業運営や投資判断に関する最終的な決定権を党に与えるよう、契約条件の改訂を求める「政治的圧力」を受けている、とロイターに語った。

>同幹部によれば、現地の合弁パートナーから、党の当局者を「事業経営組織に参加」させ、「党組織の諸経費を企業の予算に含める」こと、さらには取締役会長と党書記のポストに同一人物が就くことを義務付ける文言を盛り込むよう合弁契約の修正を求められているという。

>共産党の広報官室を兼ねる国務院新聞弁公室(SCIO)は、合弁事業や外資企業の通常の事業活動に対する党組織からの介入は一切ない、とファックスでロイターに宛てた声明で述べた。

>ただし、「企業内の党組織は一般に、事業経営周辺の活動を担っており、関連する国家指導原理や政策の迅速な理解、あらゆる関係当事者の利害調整、内部紛争の解決、人材の導入や育成、企業文化の指導、そして協調的な労使関係の構築を支援している」と付け加えた。

共産党広報官室は否定しますが、中華人民共和国憲法(ウィキペディア)は、中国共産党の指導を前提としていますから、外資系企業と言えども、党活動を認めてしまうと、中国人従業員に会社としては望まれない指導を行われる可能性が否定できないと思います。中国の外資系企業が嘘をついたと筆者は思いませんが、経営に中国共産党が介入したり、党活動に関する費用を会社持ちにしたりするなど考えにくいところです。

中国共産党の外資経営介入に「撤退もあり得る」 ドイツ商工会議所がけん制(大紀元 2017年11月25日 16時00分)

>ドイツのクラウス駐中国大使は同記者会見で、一部の外資系企業は党支部により大きな経営権を与えるよう求められ、そのための投資契約の改定を迫られていると述べ、「中国市場からの撤退を検討せざるをえない」と中国政府に警鐘をならした。

>ドイツは欧州連合の対中投資総額の半分強を占めている。クラウス大使は、党支部の経営参加は、対中の直接投資に影響をもたらすと示唆し、今年の欧州連合の対中投資はすでに減少したと話した。

中国に対する進出が著しいドイツが中国に対して強く出たことに驚きましたが、経営権を奪う動きがあるとすれば(あると思いますが)納得できます。例えば、賃上げに対する要請など有り得るとしても、決定権は企業が持つべきで、中国企業はどうだか知りませんが、外資企業が中国共産党に経営権を奪われる訳にはいかないと思います。中華人民共和国憲法で中国共産党の中国人民に対する指導が明記され、会社法で(外資系企業に対しても)少なくとも党組織をつくれるようにしていることが問題ですね。党指導部の腹ひとつで法的には経営に介入できるようになっているのではないでしょうか?党の指示と会社の指示がぶつかった時にどちらを優先すべきでしょうか?中国と外資の判断は異なる可能性があると思います。少なくとも、党の指示で経営権を与えるように求めたり、そのために契約の改訂を求めたりすることはできるでしょう。それに応じれば、外資が同意して中国共産党に経営権を渡すということになります。それを拒否できるとしても話し合う時間も馬鹿にならないでしょう。中国で活動するのに中国共産党を無碍にも出来ません。

ヨルダンの政情と水不足

2017-12-09 12:05:18 | 政策関連メモ
Newsweek12月12日号「水なし地獄がヨルダンに迫る」(ピーター・シュワルツスタイン)を読みました。

ヨルダンの水不足の窮状と対策を訴えた記事です。ヨルダンは難民を受け入れてきましたし、国際社会の優等生的なイメージもあります。トランプ政権の決断がどう中東情勢に影響してくるか予断を許しませんが、中東が安定する結果になればいいですね。政治情勢が安定しないとヨルダンの発展も有り得ません。帯水層の枯渇問題を考えると、何もしなければ(グズグズしていれば)、待つのは破滅だけです。

ヨルダンは紅海の水を淡水化して使うことを考えているようです。海水の淡水化技術は日本がトップクラスのようです(世界を救う? 海水の淡水化、日本企業の技術は世界トップ NewSphere 海外紙特集 Sep 6 2014)。ライバルは中国・韓国であるとのこと。これまでの経験から、コスト競争力で日本が負ける事態は注意してし過ぎることはないと思います。日本は雨が降る島国ですが、世界には中東をはじめ、雨があまり降らない地域も多い訳で、海水淡水化技術は将来有望だと思いますね。帯水層の水の利用は何時までもできるものではないようです。

アベノミクスの新しい経済政策パッケージ

2017-12-09 09:36:53 | 政策関連メモ
本日の日経社説「成長と財政両立の姿が見えない新政策」と読売社説「政策パッケージ 理念を具体化する工夫が要る」を読みました。教育無償化に批判的なのは共通で、日経さんは「財政再建路線」が明白ですね。働き方改革など社会問題の類に関しては、筆者もいろいろ書きたいですから(外交安全保障などで書きたいことがあります)、取り組むとしても年明けにしようと思っていますが(これまでやっていないので、スラスラできる訳ではありませんし、本日は兎も角年末は忙しいです)、これまで経済についてもいろいろ書いてきましたし、アベノミクスは支持してきましたので、特に日経さんの強い批判に(勝手に)答えておこうと思います。以下、筆者のfacebook投稿の再録・再編。

>政府が「人づくり革命」と「生産性革命」を内容とする新しい経済政策パッケージを決めた。問題が多い、といわざるを得ない。

>日本経済の最大の課題は潜在成長力の底上げと、先進国で最悪の財政の立て直しの両立だ。その姿が見えず、もちろん「革命」の名に値しない新政策だ。

>人づくり革命では、消費税率を8%から10%に上げて増える税収を、教育や保育の無償化にあてるのが柱だ。

>わたしたちは教育無償化より待機児童対策を優先せよ、と訴えてきた。仕事と子育てを両立しやすくして足元の人手不足を和らげるとともに、子どもを産み育てやすい環境をつくることは少子化対策にもなる。

幼児教育の無償化は筆者は良いと思いますね。何故なら、日本では将来の高所得者層も初任給は安いからです。幼児教育無償化が晩婚化に歯止めをかけられる可能性もあって、そうなれば少子化対策としてかなり有効と言えると思います。若い内からあまり切り詰め過ぎていると収入に見合った消費をする高所得者層をつくらない可能性があります。収入が増えてから子供をつくるとなると、晩婚化ですから高齢出産は避けられませんし、二人目三人目の選択肢が狭まることになります。これまでの延長線上で待機児童の解消だけなら、革命の名に値しないかもしれませんが、保守的な大新聞が反対する思い切った支出は革命でしょう。問題はそれが妥当か否かです。どうせやることになるなら、一気にさっさとやった方がいいかもしれません。消費税増税は規定路線で景気が冷え込む可能性があって、そうなるとデフレの罠に陥る可能性があります。これまでの日本がそうでした。デフレ脱却に功があった金融緩和も曲がり角だとも言われます。先進国で最悪の財政を言いますが、元財務省の高橋洋一氏によると国債発行余力は数百兆円だそうです。どちらが正しいか分かりませんが、財政危機派も財政大丈夫派も国債発行余力について議論して結論をある程度でも出していただければ、論争が解消され政策の方向性が定まり易くなります。なお、デフレ下で財政再建は難しいと思います。財政破綻したらハイパーインフレになりますが、ハイパーインフレになったら財政再建します。インフレの財政再建効果を無視して財政再建を語るべきではないと思います。逆に言えば、デフレ下で財政再建を言うことの矛盾に気付くべきではないでしょうか?金融緩和で出口戦略をとって、近視眼的な財政再建路線をつきすすめば、確実にデフレに逆戻りして、財政再建が失敗する可能性があると思います。財務省もメンツがありますが、必ずしもそのことに気付いてない訳ではないんでしょう。金融緩和の黒田総裁も財務省出身ですし、財務省派と見られる故与謝野氏が経済の舵取りを行った麻生政権でも、金融危機に積極支出しています。

>企業は過去最高水準の収益を上げている割に、賃上げや設備投資の動きは力不足だ。「生産性革命」の名の下で、政府が減税により賃上げや設備投資を下支えしようというのは理解できる。

賃上げが進まない主要因は少子化しかないと思います。将来の売り上げが減るのが分かっているから支出を渋っている訳です。例えば人口がしばらく増える大都市では保育士の給与は地方に比べて高いです。日本でも需要と供給の原則が適用できない訳ではないでしょう。どうすればいいかですが、少子化対策が効果出てくるとしても、即効性がありませんし、他の先進国の例を見ても人口置換水準を保つのは非常に難しい。そう考えると移民になりますが、少なくとも人口を維持するだけの大規模移民を行えば日本という国がどうなるか分からないところがあって、少なくとも日本では政治的に中々難しいところがあります。人口問題は人口問題として取り組むとしても、人口問題に起因する問題を別の手法で解決する必要があると思います。それがインフレ誘導です。先進国がこういう状況になって久しいですが、政府というのも保守的ですから、あまり思い切った政策をこれまで取れてこなかったように思います。特に日本では。大体が今現在の状況の対応策は教科書にありません。かつてなかった事態だからです。インフレが起きて継続されると認識されれば、企業の名目収入が上がることは明白ですから、客数が減っても売り上げを上げるのは可能です。売り上げが上がるなら賃金を上げることもできます。企業にとって必要なところの給与は上げて、あまり生産的でないところを据え置いて企業として力をつけていくことは可能なんですね。逆は真ではありません。賃金の下方硬直性があって、売り上げ減に対して給与下げで対処できないからです。そういう訳でデフレ下で経済は上手くいかないのであって、近年のデフレ日本は伸び悩んできました。経験は重要ですが、これまでにない事態は別のアプローチをとる必要があるのではないでしょうか?デフレ傾向が特に人口が伸びない地方の生産性の上昇を押さえてきたところがあると思います。それでも駄目な企業は破綻させて、新しい産業に人口を移していくことを考えるべきでしょう。企業の自助努力も勿論必要です。穴の開いたバケツに水を入れることは疑問ですから。例えば不採算が分かりきっている店舗を営利企業が何時までも維持すべきでしょうか?地方が寂れている問題はありますが、そういう地方には精査して税投入し激変を緩和していくべきでしょう。こういう改革をやらねば遅かれ早かれ破綻してハイパーインフレという悪しき激変が待っていると思います。そうなれば、助けられるものも助けられません。インフレに反対するのは高齢者かもしれませんが、引退した高齢者こそハイパーインフレの最大の犠牲者になります。経済専門家こそいったん教科書をそのままなぞることを止めて、どうすれば今現在の状況下でインフレを起こして継続すると信じさせることができるか考えるべきだと思います。安倍首相の言うことは中々理解されないことも多いですが、これも国難ではないでしょうか?明らかに現在の日本の事態は過去の経験そのままが通用しない未曽有の事態なのであって、国民のみなさんが協力すべきは協力して事に当たらないと国が破綻し国民が路頭に迷いかねません。

>自動走行や遠隔診療の指針などをつくるというが、具体性に乏しい。

自動走行や遠隔診療の指針に関して言えば、あまり批判するのはどうかと思います。新しい事態の対応が直ぐに上手くいくはずもありません。今後何処までものになるか分かりませんが、とりあえずやってみる、やってみて駄目だったら畳むというプロセスがイノベーションには必要でしょう。国が関係する政策は国がやらないとどうしようもありません。日経さんも例えばどんな指針が有り得るのか提案していただかないと議論のしようもないでしょう。お客さんになって批判しているのは残念です。