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観測にまつわる問題

政治ブログです。「保険」「相続」「国民年金」「AIロボット」「運輸エンタメ長時間労働」「GX」を考察予定。

憲法9条改正(2項削除の思考実験・9条解釈の明記)

2019-03-17 21:52:46 | 外交安全保障
前回記事「憲法改正(9条改正と自衛の定義)」でいろいろ考えたのですが、安全保障論を考えれれば考えるほど面倒くさいな!と思うようになりました。これまでの考察を元にいっそのこと2項削除を真剣に考えてみたらどうなるのか。

第9条
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

要は戦力不保持と交戦権の否定に政策的な拒否感がある人が多いのでしょう。あまり否定論がない1項は自衛を旨とする自衛隊の肯定と見ます。そう考えると交戦権の否定はついでに過ぎず(自衛はできます。自衛隊が明記されたら交戦権の否定はなお関係ありません)、問題の核心は戦力不保持と書いているから、持てない装備があるということに尽きるのかもしれません。

前回調べで持てない装備とは「大陸間弾道ミサイル(ICBM)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母」です。特に引っかかるのは攻撃型空母でヘリ空母一択に軍事的合理性があるのかということになります。長距離戦略爆撃機も何で駄目なんだという感じもあります。破壊力がある戦力こそ抑止力があるとも考えられます。まぁNBCといった大量破壊兵器に手を出すのは国際社会で生きられなくなりそうですから、逆効果ですが。ICBMは大量破壊兵器とセットでしょうから、日本がやる意味はないと思いますが、大量破壊兵器をやらないなら、可能性があっても(どうせやらないから)問題はないのかもしれません。・・・どうなんでしょうね。これらの兵器の必要性ってどの程度でしょうか。まぁこれぐらいなら自衛隊明記でいいような気もしますが。

本当のところもっと安全保障論で気になっていることがあって、ニュークリアシェアリングの可能性です。これは完全に自衛の問題です。要は攻撃されたら効率よくミサイル攻撃してしまう訳です。ポイントは核武装国にはならないということだと思います。だとしたら現行憲法でニュークリアシェアリングによる核武装は可能だと考えざるを得ません。戦力と思うかもしれませんが、ニュークリアシェアリングによる核は保持してないってことになるんじゃないでしょうか。誰が保持しているかと言えばアメリカとか。ニュークリアシェアリングで核を保持していると認定されるならば、ドイツは核武装国だったということになります(ですからニュークリアシェアリングを核武装の文脈で語ることが誤りです)。核実験もしてないのに。ただ単に借りていただけという理論構成のような気がします。まぁ2項がない方がつっこまれにくいかもしれませんが、核武装じゃないんだから戦力な訳ありません。

もう一つ以前実は気になっていたのが集団安全保障です。日本がNATOに誘われている感じになっていますが、集団安全保障に参加できないので選択肢が狭まっている感じです。集団安全保障は別に悪いものではないので、これを取っ払っておくに越したことはありません。まぁ大西洋の戦争に日本が参加するというような話は現実的ではありませんが、アジアの防衛で集団安全保障の選択肢がないのは気にならないではありません。別にアメリカがやると思うかもしれませんが、アメリカがアジアでやったら日本も結局巻き込まれるので一緒のような気もするんですよね。なら一緒にやった方が安全性が高まるというか。日本は元々南シナ海で訓練している国でアジアの海を守るのは規定路線のような気もします。アメリカの同盟国は東南アジアに今は存在しないようですが、可能性を確保するに越したことはありません。検討した上で外交安全保障上の理由で要らないのであれば、まぁそれでいいと思いますが、憲法上の制約で害子安全保障上政策上必要なのにやれないのだったら残念だなという気もします。憲法上の根拠ですが、ウィキペディア「集団安全保障」を確認すると、「日本は、集団安全保障への参加について、武力の行使や武力による威嚇を伴う場合は、憲法9条が許容する「必要最小限度の範囲」を超えるため許されないとの解釈を取っている。一方、集団安全保障は「国連加盟国の義務」であり、憲法上は制約されないと総理大臣私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は主張している」ということです。国権の発動はしていませんから、1項と集団安全保障が矛盾している訳ではないのは確かなのかもしれません。

ここまで考えてみると、基本的には現在の加憲案でいいような気もしますね。まぁ着弾してからの反撃も怪しいというような現在の懸念が加憲案で払拭されるならばですが。筆者の解釈は筆者の解釈に過ぎません。

ただひとつだけどうしても気になることがあります。戦力の定義で裁判所に余計な口出しをされないか、国民に分かりやすいかです。これを解釈で処理するのがあんまり(多分)法律論的によろしくないんじゃないかと。ここで現行の加憲案を振り返ってみると・・・

>我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

・・・ですから、この3項に合致する実力部隊の装備は全部戦力ではないと解釈したらどうでしょうか?結局のところ兵器は応用が効きます。自衛のための装備でも侵略に使えることは元より自明です。ですからひとまず自衛をフルスペックで認めて(平和維持のために最大効率で抑止力を認めて)、侵略のための体制整備もしないし訓練もしないしそうした団体に無条件で参加しないとします。実際のところ、(紛争解決のため)先制攻撃をしなければいいのであれば、1項があればそれで事足りますし、相手に手を出させるための挑発も1項を残しておけば禁止されているということになります。1項がありながら、それをやってしまうというなら、もうそんな国は何をやっても駄目だと言わざるを得ません。筆者は日本不信論の反日派でありませんし、誰それが総理大臣ならやりかねない等と疑っていませんから、そういう有り得ない妄想による因縁は反日派の皆さんに任せておこうと思っています。

集団安全保障との絡みをここでもう一度検討すると、やはり湾岸戦争のイメージが強いと思います。ただ結論から言えば、やはりこの類の戦争に参加するという話は現状絶対アウトだと思います。でも3項案を見れば我が国の平和と独立を守りと書いています。じゃあOKなのかと言えば、集団安全保障は結局理論上バーターで何処まででも行ってしまいそうですから、明快に否定しておいた方が良さそうです。集団的自衛権だけなら、中東まで出て行って戦争で前線に立つのようなことは基本的にないと考えられます(既に考察済みですが、アフガニスタン戦争は自衛の定義から対テロ戦争だから参加できないということになります。気になる方は前回記事をお読みください)。まぁ可能性が狭まるのは残念ですが、筆者はやはり(アジアでも)現状で集団安全保障をしないとしておきます。集団的自衛権を認めるというのは事実上の周辺事態条項ではないでしょうか?思考実験だけならアメリカ本土が攻められる事態も考えられますが、誰が攻めるのかという話です。よって攻められそうにもない国・団体と集団的自衛をするのであれば(要はアメリカが入らない枠組みを問題外とすれば)、実際問題戦争に巻き込まれず抑止力を高められるという話になります(しつこいようですが対テロ戦争は除外していますし、集団安全保障も排除しています)。美味い話に見えるかもしれませんが、日本も(日米同盟もありますし)「攻められそうにもない」強い国であるということを忘れてはなりません。いずれにせよその辺は相手がある話なのであって、想定すべきはアメリカだけということになります。

掃海艇の派遣は石油が止るんですから存立危機事態でしょうが、通商破壊戦を仕掛けられたら(海軍はそれが主要な目的のようです)、戦争するのも自衛のひとつとは言えそうです。ただこの辺は自衛の定義(急迫性、違法性、必要性、相当性、均衡性)の範囲内ということですね。海上封鎖への対抗は自衛の範囲内です。某国の問題に関して言えば、集団的安全保障ではない国連の義務という考え方です。少なくとも瀬取り対策は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求していますし、国権を発動していませんし、武力による威嚇又は武力の行使をしている訳ではありません。まぁ誰も問題にしていませんから、別に一々考察しなくていいのかもしれませんが。南シナ海の問題に関して言えば、アメリカも今のところ領土問題に関わろうという話ではありませんね。

後は大量破壊兵器をどう考えるかですが、大量破壊兵器は国際的に禁止の動きが強烈で、これを戦力と解釈すれば良さそうです。「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」なければなりませんしね。これで随分スッキリしました。結局現行案の解釈次第(現状と全く同じでは意味が小さく分かりにくい)ですが、やはり現行案でいいんじゃないかということになります。以下念のため現行案で改憲されると(政府・自民党はそうは言ってないようですが、筆者の考え方では)どうなるかまとめておきます。

①自衛は全て認められる。攻撃されたら間違いなく反撃できる。ただし自衛に要件(急迫性、違法性、必要性、相当性、均衡性)があって自衛の名の下に何でも出来るということにはならない。
②個別的自衛権だけでなく、集団的自衛権も認められる。ただし自衛の要件はここでも守らなければならない。疑えばキリはないが、現実には9条が盾になっており、事前の説明が覆ると考えられない。
③集団安全保障はしない。集団的自衛だけで良い。日本は自衛に深く関わる核の傘という例外を除き、現状で(日米同盟以外の枠組みへの参加がなければ)事実上バーターで援軍に行かない(日本駐留以外の国連軍に巻き込まれる可能性はない。まぁ敵国ですんで)。
④戦力とは大量破壊兵器である。大量破壊兵器を日本が開発し所持することは無い。
⑤以上の解釈を守る限り違憲の疑いは全く無い。

以上です。軍法だけは落とした感じですが、9条に関係ないんでこれは止むを得ません。後、サイバー戦争とか反撃オンリーで大丈夫かという論点も有り得ますが、自衛だけで論争になる現状でここまでがMAXと考えます。

一晩経って追記。9条解釈を明記しておけば、凄くいい気もします。つまり既に明記されている必要性以外(必要に応じて~)も憲法に書き込んでおくと学者や裁判官の勝手な解釈を防げますし、国民も誤解しません(明記してれば、民間などが勝手に研究してくれるオマケつき)。具体的には例えば「急迫性、違法性を踏まえて」「相当性、均衡性を考慮し」を追加。これで自衛を理由に拡大解釈されてきた説を撃退します(広く国民を説得します)。それでも「疑いを払拭できない」とか言われたら何もできません。クレーマーとはなるべく関わらず。

自衛と書いてますから集団的自衛権云々は書きません。当然自衛の定義を満たしていれば全て認められます。シンプルイズベスト。しつこいようですが、力の強いものに言われたら~とか言ったところで実際戦後何もしなかったでしょ。同じく集団安全保障云々も書きません。「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため」が世界平和を守るための戦争参加を否定しているからです。国際社会から見れば何とも情けない話ですが、日本は国連に敵国認定されていますし、久しく自衛のみが仕事でしたから、それでいいんだろうと思います。結局のところG7でアジアの国は日本だけなのであって、アメリカに対抗するモンスターが隣国に現れた現状で世界平和を守る余裕なんて全く無いとも言えます。当面この現状が変わる見込みもありません。前衛に立たなければ、これまで通り治安維持活動による「戦争参加」は有り得ます。正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求しなければなりませんし、国権を発動している訳でもありませんから、参加しないというのが無い話です。戦争は戦争だろうと因縁つけられてきましたが、作戦立案に関わっていませんし、戦争の要件を十分満たしていないというのは確かです。ハッキリ言えば何処からどう見ても全くの治安維持活動です。これは防災で自衛隊派遣するのと同じなのであって、自衛隊が制限されているのは戦争に関わる部分に過ぎません。ただ戦地での治安維持活動は非常に危険を伴うことは確かです。この定義だと治安維持活動の拡大の懸念は出てきます。ただ「軍隊」の本来業務は治安維持活動ではありません。ですから警察に出来ないレベルの治安維持活動は軍隊業務だとして自衛以外は否定しておくことになりそうです。よく考えてみれば海外の国は我が国でもありませんが、緊急事態条項も治安出動を考慮せず防災に絞っているようであり、国内においてもその辺は想定外というか憲法上治安を理由に軍隊を出す国ではないということになります(ナチスの事例で結局治安を口実にしたのが問題です)。じゃあイラクの平和維持活動とは何かと言えば、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し国権の発動ではない」治安維持活動です。レベルとしては警察の機動隊レベルぐらいならOKではないでしょうか。警察がやれるような治安維持活動は軍隊業務ではないということです。じゃあ警察が行けと言われたところで警察は海外で仕事をする組織ではありません。防災にしろ危機管理のプロとして何でも屋をするのは自衛隊の仕事です。自衛隊の装備は機動隊を超えている部分もありますが、戦車や自走砲を持っていって砲撃するのようなことが無ければ誤解は生じないと考えます。装甲車に関して言えば機動隊も持っているようです(特型警備車)。逆に言えば、機動隊がやるような仕事は自衛隊も海外でやれますということにはなります。さすがに自衛隊ほどの組織が機動隊に出来ることも出来ませんとは筆者は言えません。憲法上の根拠は(書き込めば)「相当性、均衡性」になるでしょうか。何かを理由に拡大した業務を行うことはこれに反するということです。海外での治安維持活動を行うために派遣したのに、それが戦争業務の遂行になってはなりません。戦争参加しているに違いないというのは断っておきますが100%の難癖です。その論法を認めれば日本は物資を売り基地を提供したので朝鮮戦争に参加したということになりますし、資金を提供したので湾岸戦争に参加したということになります(感謝されなかった事件とは何だったのでしょうか?)。戦争業務の遂行が戦争参加です。これが普通の定義で他の解釈は有り得ません。繰り返しますが治安維持を口実にした軍隊活動とは治安当局に出来ない仕事をすることです。この例外は海外での治安維持活動ということになります(警察に海外での仕事をする法的根拠が無いのでしょう)。防災(消防が災害対処の実働部隊と言えます)も含め自衛隊は本来業務でない仕事も行える危機管理のプロ組織ですが、本来業務の自衛戦争以外では量的にはともかく質的にプロ以上の仕事をしません。治安を理由に自衛隊がフル活動をすることを想定するなら、緊急事態条項に治安を入れてシッカリ議論しましょうということになります。掃海艇の派遣は自衛隊にしかできない業務ですが、シーレーンの封鎖は我が国の存立危機事態と言え(国及び国民の安全の正に危機です)、「相当性、均衡性を考慮」すれば、機雷除去が自衛隊の任務なのであって、それ以上のこと(首都を叩くのようなこと)はしないと言えるんでしょう。港を叩くのような話がグレーゾーンで何とも言えませんが、海自はヘリ空母を保持しF-35bの導入も決まっており南シナ海でも訓練してきたことは指摘しておかねばなりません。機雷除去の仕事をしながら、機雷をまく船をどうにもしないのはどうでしょうか。

戦力の定義は揉めますんで、現状の3項案に更に加憲して決着を図るべきです。具体案としては「国際社会に禁じられた大量破壊兵器を我が国は所持しない」です。我が国はというのは核(大量破壊兵器)の傘で守られることは排除しないということです。向こうは持っている訳ですから。国際社会に禁じられたの明記が必要なのは、破壊力を基準にしたら裁判所に安全保障政策の実権を与えるのを防ぐためであり、誰も(多くのものが)問題にしていないものを日本だけが問題にするのような戦後レジームの奇観を防ぐためです。実務上は後から禁止されたら不味い新しい兵器の開発は諸外国に任せようということにはなります(皆が持っているレベルを超えず性能が良いという難しい課題があるということにはなります)(よって破壊力の追及は難しいかもしれません)(まぁ防衛装備の機能は破壊力だけではありませんし、他国が開発して受け入れられた装備を買うことも出来ますし、何にせよ(猛追している国がいるようですが)一番強い国が同盟国です)。また実務上は太洋を超えて自衛戦争をするような装備の導入・体制整備もなさそうです(サイバー戦争だけは地球の裏側まで近隣と同様の扱いです)(宇宙戦争は日本の平和的宇宙利用を守る仕事は考えられます。具体的には日本の衛星破壊に対応することは禁じられるべきとは思えません)。安全保障政策上持てる可能性を保持したい人もいらっしゃるかもしれませんが、戦力条項があって現状で持てていません。万難排して何が何でも可能性を確保したところで、日本が今から核実験をしたり生物兵器の開発したり出来るでしょうか?

そういう訳でこうしたことが明記されれば違憲論が教科書に記載されることはなくなり、憲法学者がああだこうだ言ってくることは少なくなっていくんだろうと思います。結果的に国民の理解も広がってくると考えます。

米朝首脳会談(ハノイ)決裂後

2019-03-17 10:19:40 | 外交安全保障
NGC 4414 (NASA-med).jpg(パブリックドメイン ウィキペディア「銀河」より >NGC 4414はかみのけ座にある典型的な渦巻銀河。直径約55,000光年。地球からの距離はおよそ6,000万光年の彼方にある。)(※北朝鮮の人工衛星(地球観測衛星)光明星3号2号機は銀河3号によって打上げられた)

日曜討論「最新分析 北朝鮮問題の行方は」(3月17日)を視聴しました。出演は藤崎一郎,礒崎敦仁,小原雅博,中林美恵子,古川勝久,李相哲

非核化の定義に触れられるところがありましたが、筆者は「①核実験場や研究施設・核爆弾のリストを北朝鮮がつくって提出しアメリカが認めた後にそれらを廃棄する。②IAEAを他の国と同様の条件で受け入れる。原子力の平和利用は認める。」を考えています。

①は隠し持つことは不可能ではないかもしれませんが、持っていると宣言できない以上、脅しに利用出来ません。また北朝鮮との全面戦争を想定した時、あるいは核攻撃の可能性を否定しきれないかもしれませんが、そもそも先軍政治の北朝鮮との戦争はアメリカにしても大変なリスクなのであって、アメリカほどの国でも38度線を越える理由を考えている訳ではないという話だったと記憶しており、実際上の問題は少ないと考えられます。所謂「朝鮮半島の非核化」に関して言えば、韓国は核実験場や核兵器の研究施設を持っている訳ではなく問題ないと考えます。持ちこみの可能性ですが、持っている持ってないを米軍が戦略上明かせない以上、北朝鮮がアメリカと韓国の連携を認めるしかないような気がします。北朝鮮だって核武装国である中国との血の友誼があるのであって、アメリカを始めとした中朝関係をどうこう出来る訳ではありません。少なくとも韓国軍はニュークリアシェアリングも含めて現状で核兵器にタッチしていません。万一北朝鮮が核武装政策に再び舵を切るようなことがあれば、韓国は核武装論が盛んな国ですから、例えばニュークリアシェアリングで対抗のような話が再燃すると考えられます。北と南がイーブンという形で朝鮮半島の非核化は達成できると筆者は見ています。北朝鮮はソウルを人質にとっていますし、一方的に核武装できないのであれば、案外核武装に軍事的合理性はなく、国際社会の制裁は番組で触れられていましたが結構効いているようですから、制裁解除を目的に北朝鮮が非核化に舵を切る可能性は依然十分と考えます。リビアの話はよく言われますが朝鮮半島とは全然状況が違うでしょう。

②は原子力の平和的利用すら認めないのは北朝鮮が受け入れ困難です。韓国も原子力発電をやっている訳ですから、落としどころは条件の平等しかないと考えます。勿論北朝鮮がIAEAと協調できるか予断を許しませんが、恐らく非核化を決断しさえすれば、わざわざ誤魔化すメリットは少ないと考えられます。誤魔化したところで核実験場や核研究施設が廃棄されていれば再開発は困難で、万難排したところで国際社会に再び制裁されるだけです。北朝鮮はウラン産出国という意味でも平和的利用の拒否は交渉を不可能にするだけではないでしょうか?また日本の原子力発電所に対する北朝鮮のテロの可能性が指摘されることがありますが、防衛体制をシッカリすると共に、もっとも効率の良い対策は北朝鮮の原子力発電所を(報復で)何時でも破壊できる体制を日本が整備することだと考えています。

以上ですがもうひとつ考えなければならないのは研究者の処遇です。核兵器開発を断念したら自然に他の兵器開発や原子力の平和利用に移ることを考えるはずですし、廃棄・廃炉にあたる人材も必要なはずですが、気になるのは核拡散の可能性です。もっとも効率がいいのは引き続き核兵器の研究をすることですから、他国のヒキがある可能性がないとも言えません。研究に関わった人員のリスト提出も考えられますが、北朝鮮の外交関係に注目して怪しい国の監視も重要だと思います。

化学兵器や生物兵器といった他の大量破壊兵器も韓国と同じ扱いを求めることは重要だと思います(サイバー攻撃なんかは今回の話には乗せることは難しそうです)。

次に運搬手段のミサイルですが、ICBMはアウトを北朝鮮は約束するしかないと思います。ICBMだけでは抑止力が少なく研究を続けること=核兵器・大量破壊兵器全廃の意志なしと見るしかないと考えられます。例えば一発でも持っていたら何かの拍子に「持ってました」でワシントンを攻撃するよと言い出す可能性があります。まぁ一発だけならミサイル防衛でどうとでもなりそうで、そこまで固執する話ではないと思いますが、日本としてもアメリカの核の傘を守ることは重要なのであって、とにかく北朝鮮は(米本土を攻撃できる体制整備を進める)ICBM開発は諦めねばなりません。北朝鮮の防衛はどうなるかという話ですが、安全保障政策に完全はないのであって、北朝鮮はアメリカが同盟国を滅亡させるリスク(北朝鮮はそれを試みることが出来る戦力があります)を犯さない(北朝鮮が米本土を攻撃する体制整備をしないのであれば)と考えるしかありません。それでも気になるのであれば、例えば北朝鮮自身が血の友誼を深めていくことが考えられます。既に持っている短中距離ミサイルに関して言えば、日本は射程範囲ですがこれの全廃は難しいというか無理ですし(北朝鮮の主要産業にミサイル輸出があります)、廃棄を迫るより日本が抑止力を整備した方がコスト安で効率的と考えます。大量破壊兵器さえ米朝交渉で問題なしまで追い込んだら、運搬手段が残っていても飛躍的に日本の安全は高まります。後は日本が抑止できる体制を整備するだけです。ひとつだけ重要なのは、ミサイル実験を北朝鮮が挑発に使わないことで、日本も例えば北朝鮮のミサイル開発を認めるなりして通告を約束させることが重要ではないかと考えます。北朝鮮は国際社会の制止を振り切ってミサイル開発してきましたが、これからは国際社会との緊張を高めない安全保障政策が重要ではないでしょうか。

宇宙の平和利用はミサイル開発の口実になってきましたが、韓国も衛星をやっていますし、これも平和利用したいというなら認めるしかなさそうです。(例えばかつて中国の衛星破壊実験などの話題がありましたが)軍事利用も含めて既存の枠組みや文脈を踏まえて同列に扱うしかないんじゃないでしょうか。日本も北朝鮮の宇宙利用の監視を含めて宇宙政策に関心を持つことが重要だと考えられます。ミサイルに関して既に触れましたが、もう開発されたものは致し方ないというか、覆水盆に返らずというしかありません。

拉致問題に関して言えば、北朝鮮がこれから緊張を高めるような行動に移れば、あるいはチャンスが大きくなる可能性も考えられます。北朝鮮としては何としても制裁を回避したいでしょうが、核やミサイルで交渉が停滞した時、これまでの(事実上アメを担当してきた)韓国の窓口を動かす訳にはいきません(悪い行動に褒美を与えるようなことで交渉が動くはずがありません)。ただ全て圧力一本槍でいいかというと、米朝交渉決裂から挑発と報復のエスカレーションの軌道に戻る可能性が懸念されるものの、前述の理由で尚更北朝鮮のスポークスマンと言われる文在寅政権に頼る訳にはいかず、そろそろ別の窓口の可能性を考えるべき時だと考えます。核やミサイルといった安全保障の問題は米朝交渉+韓国の枠組みで進めてきましたが、もうひとつ重要なのが拉致問題という対外人道問題です。要は拉致問題で北朝鮮が譲歩することで、核・ミサイル交渉が停滞中に制裁の一部緩和を考えます。文在寅政権はああいう政権ですが当面継続しますし(韓国ファクターは当面変わる見込みがありません)、交渉に時間がかかり過ぎると、制裁が効き過ぎて(瀬取り対策は今後もドンドン進める予定です)北朝鮮が追い込まれすぎる危険性があります。追い込んだほうが譲歩すると安直に考える向きもあるかもしれませんが、北朝鮮とて体制の継続は譲れない一線ですから、追い込む一本槍が譲れない一線を越える可能性は否定しきれません。交渉を成立させるためにはどうしても北朝鮮の首を縦にふらせる必要があるのであって、日本が制裁を一部緩和する可能性を示唆することは選択肢を広げる効果があります。拉致事件が起こって既に久しく被害者の高齢化が心配されるところでもあり、交渉が早くスタートするに越したことはありません(核もそうですが、1ミリの疑念もなく疑惑を払拭することは現実的には難しく、北朝鮮に解決の意志が見られる場合、話し合いを進めない理由が無いと考えます)

具体的には例えば万景峰号の復活(日本海交易の一部復活)は制裁の緩和になると考えられます。北朝鮮も制裁を回避する必要があるのであって、正規ルートを認めれば瀬取りが少なくなる可能性もありますし、正規ルートなら不法な取引をチェックしやすいとも考えられます。

戦後の日露平和条約交渉に基づく新しいアプローチの検討

2019-03-15 06:28:47 | 外交安全保障
Habomai 01.jpg(ウィキディア)

ロシア軍、北方領土で軍事演習 日本牽制か(産経ニュース 2019.3.12)

>極東地域を管轄するロシア軍の東部軍管区は12日、北方領土の択捉(えとろふ)島と国後(くなしり)島で射撃・砲撃部隊による軍事演習を開始した。

これはやはり現状の日露交渉にロシアが不満だというアピールなのでしょう。改めて北方領土に関して検索してみましたが、米中露日の国際関係やプーチン支配体制の性格から、このままだと交渉が延々と続くだけで3年あっても交渉は妥結しない可能性が高いようにも思われます。第二次世界大戦の戦後処理を済ませないというのも異常事態ですので、検索で見つけた名越健郎氏の記事を元に改めて考察し直してみます。

プーチンが密かに狙う北方領土「1島返還」(フォーサイト-新潮社ニュースマガジン 2018年10月)

>「中国人には忍耐力がある。中国の経済力なら、貿易戦争に耐えることができる。中国の経済規模は人口を勘案すれば米国をしのぐ勢いだ。経済政策を修正したとはいえ、成長率は依然高い。世界も世界経済もいずれ変化していく」などと語った。米中貿易戦争で中国に加担する発言であり、近年の中国傾斜外交を見せ付けた。本音では、ロシアは米中が貿易戦争でともに消耗することを望んでいるかもしれない。

>ロシアの安保政策を担うニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は、「ロシアは中国のような非欧米の新興大国と同盟を構築していく必要がある」と述べており、政権内で中露同盟論が議論されている模様だ。米国の対中、対露政策が、中露をますます接近させている。

>日本人の質問に「面白くない」と投げやりだった大統領は、中国人の質問には、「尊敬する友人であり仲間」と敬意を表しており、中国志向、日本離れを態度で示していた。

日米同盟基軸で中国の伸張に対応するという現行の日本の体制は妥当だと思いますが、必然的にアメリカと関係の悪い国に兵器を輸出するなどアメリカとの対抗を基調とする国であるロシアを中国側に追いやっているところはあるんでしょう。これを逆転させることは非常に困難ですし、そうまでする意味があるとは思えません。まぁ昔はここまでとは思いませんでしたが、最初からこういう構図だったのは認めざるを得ません。

ただロシアとしてはアメリカに経済で対抗できる中国がどうしても必要だとは言え、中国の膨張は最終的に北方に向かう可能性も結構ありますし、中国の下風に立とうと思ってはないんだろうとは思います。欧米列強の一角だったロシア帝国は清と愛琿条約、北京条約を締結し極東地域を獲得しました。アヘン戦争後に英国領になった香港同様、清にとって屈辱的な不平等条約と言え、中国のインターネット上には「ロシアに奪われた未回復の領土」といったコメントが頻出するようです。中国とて愛国主義的な人民の意見を完全に無視できる国でもありません(【世界を読む】「奪われた領土」極東ロシアに流れ込む中国人…“スーツケースで侵略”は危険な火ダネ 2016.10.4)。中国の人口や移民拡張政策も共通の脅威の面もあり、武器輸出で中国がロシアに対抗してきているところもあって、引き続き中露関係を注視する必要は依然あろうかと思います。ソ連は計算高く火事場でどういう動きをするか分からない国でもあります(既に中国についているロシアがおかしな動きをする時は裏切る時です)。

日本としては日米同盟を基軸として価値観を同じくするヨーロッパ諸国とも関係を深めていくことが重要だと思っていますが、ドイツやイタリアの煮え切らない態度はあるものの、ロシアも非欧米と名指ししているように、基本的にはヨ-ロッパは依然こちら側と考えていいんだろうと思いますEU、中国は「競合相手」 関係見直しへ10項目(日経新聞 2019/3/14)。欧露の対立関係はアジアから何となく見るよりは深いのかもしれません。

アジアに関して言えば、中国の伸張を警戒して当然ですし、関係を深めることは十分可能ですし、日中関係・米中関係共に互いに破局を望んでいる訳ではなく、いずれ落ち着くべきところに落ち着くと考えられます。

いずれにせよ、日露関係を安定させておくことは重要ですし、それなりに話し合えるチャンネルは維持すべきだと考えますし、長期的な視野で特に極東ロシア地域・アジアのロシアとの関係を深めるべきだと筆者は考えています。何故なら中国の国家主義的(当面の)本音はアジアの支配にあって、ロシアもその対象であり、国力が伸張しているのは明らかだからです。大体台頭する国が要求を強めて既存の体制に対し問題を起こす歴史があって、日本は中国の台頭の脅威に晒される面もある既存の体制側ですが、アジアにおいてはロシアと潜在的に利害が一致しているところがあります。

隣国との経済関係は常に重要ですし、ロシアは現時点で敵対的ではないかと言われるかもしれませんが、人口も少なくヨーロッパ正面の国が大きな脅威とまで言えるか疑問です。そういう訳で平和条約を結ぶ意義は変わらないだろうと思っています。日露同盟を結ぶ話でもなし(あくまで第二次世界大戦を終わらせる話です)、問題はその価値の大きさをどう見るかに過ぎません。

>色丹島にはロシア人が3000人近く居住し、千島社会経済発展計画に沿ってインフラ整備も強化している。返還の場合、補償や手続きが面倒なのに対し、歯舞には国境警備隊が駐留するだけで、引き渡しは容易だ。

演習をしている択捉・国後は絶対に返す気もないでしょうが、色丹もこれまで返したくないと散々サインを送ってきていることは確かです。仮に色丹島が返ってきたとしてロシア人3000人をどうするかという問題は確実にあるんでしょう。

>クナーゼ氏と言えば、ソ連崩壊直後の1992年3月、国後、択捉の帰属協議と歯舞、色丹の返還協議を同時並行で進め、合意したら平和条約を締結するとの秘密提案を日本側に打診したことがある。しかし、4島返還を当然視した日本政府・外務省はクナーゼ提案を時間稼ぎとみなして無視した。クナーゼ提案を基に本格交渉を行っていれば、当時の日露の圧倒的な国力格差から見て、歯舞、色丹は確実に日本領となり、国後、択捉は結局は分割され、「3島プラスアルファ」のような解決策が有力だっただろう。

>2001年のイルクーツク会談では、今度は森喜朗首相がクナーゼ提案と瓜二つの並行協議案をプーチン大統領に提案したが、ロシアが無視した。

>1992年のクナーゼ提案は、一握りの外務省幹部が拒否を決め、官邸にもほとんど報告していなかったと言われる。ソ連崩壊から27年も経て、北方領土問題がますます後退している責任は、92年に千載一遇の機会をみすみす座視した当時の外務省幹部にある。失敗を繰り返さないためにも、外務省は文書公開を通じて当時の責任の所在を明確にしておくべきだろう。

クナーゼ提案が真剣に検討されなかったことは、戦後日本外交最大の失敗のひとつかもしれません(外交文書の公開に期待したいですが、廃棄でもされてないか心配はあります)。ロシアの体制も今は落ち着いているでしょうし、当面こういう千載一遇のチャンスが訪れることもないと考えられます。また、エリツィン体制に比べて強権的なプーチン体制は期待薄でしょうし、今後ロシアが穏健な国に変貌する見込みもないと思います。もう取り返しがつかない「歴史」ではありますが、今後のためにも反省すべきは反省すべきではないかと考えます。クナーゼ提案にも反対の人は多いんでしょうが、互いに強硬一本槍で話し合いがまとまる可能性は皆無ですし、ロシアと無闇に戦争できるはずもありません。プラグマティズムに基づく外交安全保障が必要だと筆者は考えています。

とりあえず今回の日露交渉の振り返りは以上ですが、以下そうした考えを元に今後どうしていくかを考えてみます。基礎とするのは1956年に発効した条約であるところの日ソ共同宣言と1993年の東京宣言です。これらは2001年のイルクーツク声明でプーチン大統領とも合意しています。

日ソ共同宣言では「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡し(譲渡)する。」

東京宣言では「領土問題を、北方四島の帰属に関する問題であると位置付け、(ロ)四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化するとの手順を明確化し、(ハ)領土問題を、1)歴史的・法的事実に立脚し、2)両国の間で合意の上作成された諸文書、及び、3)法と正義の原則を基礎として解決する、との明確な交渉指針を示した。」

これをベースに色丹島を返すぐらいなら平和条約は必要でないと言わんばかりのロシアとの交渉をどう妥結させるか考えなければなりません(勿論話し合いが決裂する可能性はあります)。

まず色丹島は「譲渡」されなければなりません。これは確定条件ですが、期間が書かれていません。中国みたいで残念ですが、香港やマカオみたいに日本と帰属を決めて○年後に引き渡すという条約を結べる可能性はあると思います。引き渡しは条約締結後ではありますが、「譲渡」は条約締結とセットで当然日本に返ってくることは約束されねばなりません。ロシア人が3000人いる領土というのも返ってくれば大変で、絶対立ち去らないという人が多かったらどうなるか、どう経営するか意外と負担になる面もあると思います。○年後と期限を決めて返ってくるなら、時期が近づけば自然と動きがありますし、準備も実務家が進めていくものだと思います。結局そちらの方がコストは少ないかもしれません。いずれにせよ、これは新しいアプローチとは言えます。

東京宣言で四島の帰属の問題を解決してから平和条約を締結するということですが、これはどちら領か決めなければならないということに他なりません。問題は日露で歴史的・法的事実の主張が異なるということです。どこまですりあわせられるかですが、日本で一般に流布されている日露和親条約が最初に締結された条約だから択捉-ウルップ間が法的に絶対というかのような主張が法的に成り立っている訳ではないことは明らかです。国境は後の約束で如何ようにも変わるところがあります。歴史的に最初に日本だったはロシアも合意するかもしれませんが、その後戦争でロシア領になったとも主張してくるでしょう。勿論日本に有利な話もありますが、1ミリでも譲ったら売国奴であるかのような主張は歴史的・法的に全く成立の余地はありません。

両国間の合意に基づくのは幾度と無く確認されていますが、法と正義の原則を基礎とするのも互いに合意はできるんだろうと思います。ソ連が日ソ中立条約侵犯を明言して認めるようには思えませんが(ソ連は破棄を宣告しましたが、期間のある条約ですから相手側(日本)の同意がない限り明らかに無効で、法と正義の原則が戦争に敗れたと言わざるを得ません)、平和条約を締結できれば日ソ中立条約侵犯の問題も一応ケジメがついたということになります。

日本の主張は北方四島は固有の領土で全て日本領というものです。それ自体正しいとは思いますが、過ちを訂正する可能性は何時でもあります。日本はサンフランシスコ講和条約で(ロシアと約束してませんがロシアから見て一方的に)千島列島を放棄しており、この講和条約が有効である限り、千島列島の領土要求が法的に出来ないことは言うまでもありません(共産党は非合法的な党だから千島全島の領土要求ができるという訳です)。つまり北方領土問題で千島列島の範囲は死活的に重要です。

国後・択捉ですが、例えばクナシリ・メナシの戦いがありましたし、国後場所もあって両島(特に国後)が北海道と一体的な属島であったことは明らかだと思います。樺太やウルップ以北の島々と違って国後・択捉が明治以後に日本でなかったこともありません(江戸時代も同じですが、ウルップ警固地・得撫郡は失われています)。歯舞・色丹は根室国でスタートしており、地形的に全く千島列島に連ならないのですが、択捉・国後が千島であるというロシアの主張を歴史的・法的に完全に否定しきるのは難しいところはあって、北方領土の範囲で日露が合意するのは理論的には可能なように思います(絶対反対は感情論に過ぎません)。筆者としては根室湾に浮かぶ国後島が特に目障りで100年後でもいいので返ってこないかなと思っているところはあります。少なくとも地形的・歴史的に奥尻・礼文・利尻以上に属島然としているのは間違いないんじゃないでしょうか。択捉島もずっと日本の領土としての歴史があるのは間違いありませんが、占領後に北方領土最大手の建設・水産企業のギドロストロイの企業城下町になっており、戦争が起こってしまうと勝ったものが正義で法も歴史も消し飛ぶところがあるのは否めません。千島の放棄を宣言したサンフランシスコ講和条約が発効したのは1952年、1956年の領土問題でも触れた日ソ共同宣言とソ連との国交回復を踏まえて日本は国際連合に加盟し国際社会に復帰しました。これが戦前の秩序とは多いに異なり、戦争の結果であることは否定できません。

帰属の問題に関連して両属の可能性ですが、ロシアが現実に支配を及ぼしている以上、如何なる妥協もロシアの後退になりますし、あまり現実的であるように思いません。例えば世界の何処に2つの国が警察を置いている地域があるでしょうか?2つの国が主権を及ぼすというのは実際問題無理で、少なくとも筆者には考えにくいところがあります。日米同盟体制下で小さな日露同盟(ロシア軍の駐留を引き続き認める)を構築するのようなことも全く現実的と思われません(拒否権をもたれるなどしたら単に日米同盟が機能不全に陥ります)。互いに軍隊を置かず(中国大陸でかつてあったような)租界にするのような合意が不可能とも言えませんが、特別それをするべき理由はなく(経済関係など領事館で十分でしょう)、互いの面子を削って面子を守るのような合意に意味があるようには思えません。どちらかと言えば(島でそれほど大きく開発できるように思えない)北方領土よりは(領事館を置いた)ユジノサハリンスク(かつて樺太庁がありましたし、油田に関して言えば、パイプラインの敷設は平和条約締結後に考えられるのではないかと思っています)の機能強化の方が面白いかもしれません。いずれにせよ、両属とは歴史的には「独立国」が二股をかけているような状態を言うのであって、現在ロシアが支配している北方領土を両属状態にすることに大きな意味があるように思えません。

また例えば日本に帰属するとして、返還の期限を決め、段階的に日本が関与するという意味で租界にするのような話なら考えてみる価値はあるかもしれませんが、ロシアに帰属すると決めてしまうと、平和条約を締結して外国であるロシアの土地に拠点を設ける以上の展開はないように思えますが、中国大陸における歴史を考えると、ロシアの主権下で日本がどのように開発に関与できるか頭の体操をしてみる価値はあるかもしれません。中国分割(世界史の窓)を参照すると欧米列強は、港を建設したり、軍隊を駐留させたり、鉄道を引いたり、鉱山を開発したりしています。ただ、これをロシアの主権下でやると開発した後でどんなことになるか恐ろしいものはありますが、サハリンプロジェクトでも結局後だしで日本が後退しているところはあるので、後から手のひら返しされないように考えなければならないことは多そうです。そう考えるとロシアの主権下で普通に開発に参与して交渉すべきを交渉した方が話は早いような気もします。

経済関係だけならそんな感じですが、歴史的な関係の深さを考えると、何らかの共同関係はあった方がいいのかもしれません。例えば筆者はアイヌや古アジア民族・ツングース・モンゴル・トルコ・ウラル・スキタイといった諸民族や草原の道に関して日本史・東アジア史の観点から関心があります。これは単純な学術的な興味に止まらず、「アジアのロシア」はそもそも独自に発展した地域であって、特に漢民族の土地ではないという歴史的事実から来る関心と言えます。アジアが中国に塗りつぶされる未来を見たくないんですよね。シベリア出兵も満州国も結局失敗していますし、勿論ロシアと戦争したいということではなく、またこれらの少数民族を独立させようということでもなく、北回りで中国に来られては適わないという感じです。(モンゴルですが)元軍とアイヌがかつて交戦した事実もあって、あまり過剰な心配をするつもりもありませんが、あらゆる事態は想定すべきであって、日本の北に広がる外国に関心がなくていいということにはなりません。少数民族の問題で言えば、例えばこれまで同系とされてきたカムチャッカ半島のイテリメンとコリャーク人・チュクチ人が同系ではないという有力な説「イテリメン問題」があって(イテリメン語は孤立語だった)、どうもイテリメンがアイヌやニヴフ同様の孤立した土着のカムチャッカ民族で、コリャーク・チュクチがトナカイ遊牧を生業としたより北方の大陸民でないかという気がします。そう考えると気になるのは千島列島におけるイテリメンと(千島)アイヌ・オホーツク文化(ニヴフとも言われます)の関係です。カムチャッカにはアイヌ語地名も残ると言われます。だからどうという訳ではありませんが、学術的興味で人的交流や観光も考えられます。イテリメンは消滅の危機にあるとも言いますが、再興の動きもあるとか。コリャーク・チュクチで言えば、トナカイ放牧の起源と伝播もユーラシア大陸に広がる壮大な話題で面白いんじゃないかと思います。旧満州・樺太含む極東ロシアに広範囲に広がるツングース(満州系)に関して言えば、農耕不適な気候で狩猟採集民なのでしょうが、特にアムール川と漁労が気になります。一部トナカイ遊牧民もいるようで、生産手段・文化の伝播が伺えますが、広範囲に同じ民族がいるということは拡散と交流があったはずで、タイガという環境が同じ文化を共有させたかもしれませんが、移動手段としては川が非常に怪しいような気はします。上京龍泉府など日本との交流が深かった渤海国の都市は川沿いか海沿いにあるようです。シベリアは凍土地帯であって、シベリアの春は泥の春とも言うようで移動が困難な時期もあるようです。それが開発を難しくさせ現代まで森を残したのではないでしょうか。とするとやはり川が怪しい。アイヌと琉球の比較で言えば、日本史との関係で大体同時期に現れると思いますが、島ということもあるか、琉球の方が言語が分化し地方色がある気がします。広大な北海道でアイヌ同士の交流が(琉球以上に)深かったように思えるのですが、琉球王国ほど経済発展してはいなかったでしょうから(陸の交通がどれだけ発達していたか怪しいでしょう)、これも川沿いに船で交流・交易が盛んだったのではないかと思えます。樺太アイヌは余市アイヌとの関係が示唆されるようですが、アイヌ語地名から元々東北にいたアイヌと渡島半島の関係などとの比較なんかも面白いのかもしれません。シャクシャインの戦いのきっかけの一方である胆振から日高北部にかけての太平洋沿岸地域に居住するアイヌ民族集団「シュムクル」(ウィキペディア)は「「祖先は本州から移住してきた」という他のどのアイヌも持たない独自の始祖伝承を有しており、本州から移住してきた奥羽アイヌを核として成立した集団ではないかと考えられている」のだそうです(大井晴男「シャクシャインの乱(寛文九年蝦夷の乱)の再検討」『北方文化研究』22号 1995年 101-102頁)。きっかけのもう一方が静内以東の太平洋沿岸地域などに居住するアイヌ民族集団「メナシクル」(ウィキペディア)で、1789年に北海道東端・国後島に居住する「メナシクル」がクナシリ・メナシの戦いを起こし、松前藩が鎮圧しました。「また、考古学的には「メナシクル」の領域にのみ「砦」としての性格を持つチャシが発見されている」のだそうです。だとしたら国後島にメナシクルの砦が今も眠るかもしれません。アイヌ新法が今国会に提出されているようですが、未開拓のフロンティアにも思えるアイヌ史・北海道史にはまだまだ可能性がありそうです。

見出し画像の歯舞群島(ウィキペディア)ですが、「昭和20年(1945年)の第二次世界大戦終結時の総人口は約4,500名で、漁業人口は95%であった」ということです。返ってくれば北海道漁業にプラスは間違いなさそうです。奇しくも女子プロテニス界で大活躍している大坂なおみ選手の母方の祖父の出身地のようですし(ロシアの女子テニス選手もシャラポワ選手で強い印象はあります)、これまでの交渉を後退させない形なら返ってくるものは返ってきた方がいいはずです。

また知床半島は世界遺産ですが、国後島(ウィキペディア)の自然も「2005年に知床半島が世界遺産に登録された際には、国際自然保護連合 (IUCN)から、国後島と知床半島をあわせ、「保全の促進を(日露)両国で同意することが可能であれば、広範な『世界遺産平和公園(World Heritage Peace Park)』として発展させる」という提言が行われた」ようで、世界遺産の拡張・共同登録も含めて先の展開は考えられると思います。「島の60%はロシア国立クリリスキー自然保護区に指定されており、民間人の立ち入りが規制されている。このため、原初的自然がよく保全されている」とも。羅臼国後展望塔から根室海峡のクジラ・シャチが見えるとも言いますし、この辺の観光開発は北海道開発とあわせて結構なポテンシャルがありそうなんですよね。日本がロシアに貢ぐとか屈服するとかそういう形ではなく、win-winの関係で共存関係できればよいと思っています(ロシアには申し訳ないですけど、日本の立場としてロシアから大きな安全保障上の脅威があると思っておらず、寧ろ中国に比べて長期的な観点から弱体を心配しています)。

竹島問題(太政官指令考)

2019-02-24 20:58:40 | 外交安全保障
官撰『大韓地誌』(1899年)「大韓全図」(部分)DaehanJeondo.jpg(ヒョンチェ(玄采)ウィキペディア パブリックドメイン)

山田宏参議院議員のツイート参照ですが、「日露戦争以前の1899年に大韓帝国が発行していた地理教科書「大韓地誌」には、大韓帝国の東端を東経130度35分と記しており、竹島(東経131度52分)は含まれていなかったし、また「日本海」と単独表記していた」ようです。韓国の領土主張の核心部分は日本の竹島編入(1905年)に先立つ大韓帝国勅令第41号(1900年10月25日)だと思いますが、勅令に言う「鬱陵全島と竹島石島」の石島とは観音島ではないのか?というのが日本の主張です。それに先立つ1899年の大韓地誌で明快に竹島が領土に含まれておらず、地図を見れば鬱陵島周辺に付属の小島が幾つか記載されていますが、その大きさを見ると異論のない(韓国)竹島の次の石島は観音島でしか有り得ないじゃないのかという感じですし、実際にその姿は石島そのものな訳です。

少し遅れましたが、竹島の日(2月22日)に関連して、韓国が意外と領土主張に自信を持っているようなので、この際シッカリ理論武装しようと太政官指令を考察しています。上の見解は過去の主張の焼き直しではありますが、太政官指令とセットで理解するのがいいんじゃないかと思っています。出典が韓国人なのは(鬱陵郡が)韓国の島だからいいんじゃないかと(多分独島領有証拠のつもりじゃないかと思いますが、どう見ても観音島でしかありません)。パブリックドメインですしね。ウィキペディア「竹島」の写真は韓国人が独島としてアップしていたので、避けておきました。竹島資料ポータルサイト(内閣官房)で使っていい資料や写真はいろいろあるようです。

太政官指令「竹島外一嶋之義本邦関係無之義ト可相心得事」は外一嶋が付属の地図によると竹島(竹島が松島(鬱陵島)。分からない人は勉強を)だという指摘があってそこが注意点ですが、太政官がたまたまそう言っただけというのが事実だと思います(ルーズベルトの「私的な文書」みたいなものです)。日本の領有権主張は江戸時代に淵源があって、1905年に編入したという主張を妨げるものではありません。それを踏まえて外一嶋は地理が不明な当時の存在しない島アルゴノート島と太政官が勘違いした説があるようです。少なくとも竹島一件で(現在の)竹島は江戸時代に明快に放棄されていません(名前がいろいろ入れ替わっていて、一見して分かり難いのが竹島問題の特徴です)。この見解は太政官指令「竹島外一島」が示していたもの(著者 茶阿弥(ブログ「日韓近代史資料集」管理人、九州在住)『iRONNA編集部』 2015/01/02)の主張他、茶阿弥氏の幾つかの記事を自分なりに解釈したものです。気になる人は氏の主張を自身でお読みください。

1900年から遡ること200年、1699年及び1701年、鬱陵島を監督していた鬱陵島捜討官が製作した「鬱陵島外圖」に、その位置関係から竹島に比定される大于島と、観音島に比定される小于島が描かれているらしい(ウィキペディア「竹島 (鬱陵郡)」参照で未確認)ことも鬱陵島の比較的大きな付属島が古来認識されてきたことを証明すると思います(名称が一定でありません)。韓国が主張する于山島や于山国は鬱陵島であったり、鬱陵島付属の韓国竹島であったり、観音島であったり、存在しない空想の島だったりするようですが、地図に書かれている姿はどう見ても韓国竹島なことが多いようです。少なくとも双子島で鬱陵島から距離がある竹島であるのを見たことが一度もありません。対して日本の地図は詳細で明らかに竹島を江戸時代以降、利用・認識していたことが明白です。当時無人島だった鬱陵島にまで出かけて操業するくらい当時の日本の海運や漁業・商業は発達していました。北前船は有名ですよね。

ところが鬱陵島が朝鮮半島から見える付属の島で古来、歴史記録もあったため、鬱陵島は結局放棄することになりました。それが竹島一件です。その(竹島の)先の操業がなくなり、利用すること少なくなった「忘れられた島」を明確に回収することになったのが日露戦争の頃だということになります。日露戦争においては海戦も発生しており、日本海の無人島の所属をハッキリさせておく必要があったと思います。同時期に韓国支配が強まったのは、日露戦争自体、ロシアの満州支配を受けての戦争だからだと考えられます。半島支配抜きで、満州からロシアを日本が追い出す訳にはいきません。歴史をよく見ると日清戦争後に日本は必ずしも朝鮮支配できてなく、ロシアが満州に転じてから日露戦争が起こっています。いずれにせよ、当時は帝国主義の時代なのであって、一連の日韓併合に違法性はなく全て有効です。

極東国際軍事裁判

2019-02-19 06:59:59 | 外交安全保障
極東国際軍事裁判(東京裁判)とは第二次世界大戦後に連合国が日本を裁いた軍事裁判。インドのパール判事の東京裁判批判はよく知られるところですが、筆者は軍事裁判なので通常の裁判と同列に考えるような見方はどうかと思っています。日本はサンフランシスコ講和条約を締結・批准しており、第11条に「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した1又は2以上の政府の決定及び日本国の勧告に基くの外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基くの外、行使することができない。」とあります。第11条のthe judgmentsに関して政府は裁判と訳し、読み上げられた判決内容全般の受諾と考える立場のようですが、諸判決と訳し判決主文に基づいた刑執行の受諾と考える立場の方が日本語の読みとして自然ですし、外務省の誤訳ではないかと思います。どう考えても判決を受け入れ(認め)(刑を)執行するという約束でしょう。軍事裁判は軍事裁判なのであって、歴史観を定める役割は基本的に無いと考えます。ですから判決内容全般の受諾と考えるのはおかしい訳です。歴史観を受け入れたとして刑を執行して終わりになるでしょうか?判決を受け入れ刑を執行したらその刑に関しては終わりですが、歴史観を受け入れてしまうと刑を執行した後も何らかの措置をずっととらなければならないはずですが、そんなことは書いていない(意図していない)訳で、意図的なものか勘違いか分かりませんが、これを裁判と解釈できるはずがないと思います。歴史の詳細を踏まえるには、あまりにいい加減に過ぎますし、受け入れて条約を結んでしまうと後で訂正の余地もありません。時代の変化にも対応できません。こう書くと、日本は歴史を反省しないのか?という批判もありそうですが、歴史は歴史で反省すればいい訳ですし、連合国の代表であるアメリカとは日米同盟もあって、何の契約関係も繋がりもない訳では勿論ありません。また後に日本は連合国(国際連合)に加入もしています(敵国条項つきですから、東京裁判の解釈に関わらず、未だに我々は敵国だと認定されていますから、心配無用だというか、妙な超解釈で余計なことを考える必要は無いと思います)。United Nationsの誤訳も酷いことで有名ですが、あるいはわざとでしょうか(国民感情に配慮した?)。いずれにせよ、筆者はサンフランシスコ講和条約第11条の曲解はおかしいですから、基本的には刑の執行をもって極東軍事裁判の話は終わっていると考えています。これは通常どんな裁判でも同じのはずです。勿論必要な反省はせねばなりませんが、それはそれで相応しい場があります。軍事裁判という非常時の裁判を根拠に何か後々まで拘束されるのではないかというような考え方が極東国際軍事裁判の否定的な見方に繋がっているような気がしてなりません。何時までもWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)の洗脳が解けないかのような日本らしいと言えば日本らしい解釈とは言えるのかもしれませんが、戦後一世代経て生まれた筆者には違和感しかありません。歴史は歴史できちんと踏まえて反省すべきは反省するにせよ、今の国際環境を見て今の声を聞くことが日本に必要なことのはずです。

井上馨氏が日本の裁判の蛇足判決を批判しましたが、頷けるものがあります。裁判官が何かお説教をしたがる訳ですが、裁判とはそういうものではなく、教育は刑務所でやるものだと思います。こちらはあってもなくてもいいと言えばそうなのかもしれませんが、外交安全保障に関わる極東国際軍事裁判に関して言えば、寧ろ金科玉条にされると有害とすら言えると思います。日本が歴史の反省を強く意識するのは良いと思いますが、極東国際軍事裁判は本来そういう場ではないと考えます(嫌でも対米関係・国際関係で意識させられるでしょうし、歴史観はシッカリ検証して教科書ででも教えるなどすればいいはずです)。何か極東国際軍事裁判の不備を指摘する声があるのも承知していますが、軍事裁判とはそもそもそういうものでそれが戦争に負けるということだと思っており、それを何時までも言うことに違和感があります。逆に何時までも金科玉条に戦犯国ガーのような非難も必要な反省は続けるにせよ、何も考えずにただ日本という国・日本人を悪認定し続けるようで強い違和感があります。日本自身が日本の味方でなくて誰が日本の味方をするんでしょうか?(そういうことを言う人は日本人意識がない人でしょうか?)いずれにせよ、簡単な裁判で後々子々孫々まで何かレッテルを貼ってしまうの如き考え方は寧ろ歴史を真剣に考えることを阻害する働きがあって有害ですし、その有害を否定するために極東国際軍事裁判そのものを否定するというのも同じく歴史を真剣に考えることを阻害しており、結局のところ今の問題を今の状況で考えることを阻害していると見ています。

中々憲法9条改正の気運が高まらず残念ですが、その遠因に極東国際軍事裁判もあるんじゃないでしょうか。少なくとも結構構図は似ています。前文のような極端な「平和主義」を金科玉条にする左翼勢が極東軍事裁判を盾に日本を永遠に戦犯にしたい派で護憲。(筆者もそうですが)(戦後長らく改正されていない憲法について真剣に議論する)改憲派はそれ自体正しいと思いますが(逆に言えば理由を考えて話し合い自体を拒否してしまう護憲派とその仲間達はその時点で正しくない(道徳が無い)ということになります)、保守派を自認する方々には反米で極端に歴史的事実を全否定したい人が含まれているような気がします。極論は分かりやすいですが、それで分かった気になって思考停止してしまうと新しいことは何も出来ないということになります。時計の針は今も動いているのに。

さて所謂A級戦犯「平和に対する罪」=「侵略戦争または国際条約・協定・保障に違反する戦争の計画・準備・開始および遂行、もしくはこれらの行為を達成するための共同の計画や謀議に参画した行為」で裁かれた方々ですが、死刑が多く執行されています。この罪は事後法で国際法違反という指摘もありますが、日本は判決を受け入れ刑を執行しているのですから、これは有効だと考えざるを得ません。基本的に戦争を開始した責任者がこのA級戦犯だと連合国が考え、刑の執行をもって戦争責任にひとつの区切りがついたということだと思います。歴史的事実は歴史的事実で検証してもいいと筆者は思いますが、当事者は感情的なしこりが強く冷静な検証を阻害するでしょうし、連合国における敵国条項が削除される訳でもなく、戦後の歴史の積み重ねで日米同盟抜きの独立した安全保障が完全にできる訳でもありません。また、誰が開始したかですが、欧米に関する開戦の経緯は日本の先制攻撃でハッキリしているにせよ(挑発的な外交に問題はあると思いますが、文脈を短く切ることも出来ません)、中国に関しては第二次世界大戦(支那事変・日中戦争)(いったん停戦を挟んでいますし、満州国事変まで戦争開始を遡るのは無理だというか、政治的な見方に過ぎません)において、中国の先制攻撃を誤魔化している部分があるように思います(ただし、中国には中国の言い分があって日本を追い出すためだったでしょう。この中国の言い分をぼかすために(議論しないために)開戦の経緯は言わないでおいたような気がします)。あえて一言でいうと遅れてきた帝国主義の敗北なのだと思いますが、副産物として植民地の独立を誘発させたところはあったかもしれません。いずれにせよ、欧米を中心とした連合国は(敵国条項は残るものの)現在第二次世界大戦の「歴史的罪」を糾弾していませんし、基本的に大きな問題はないんじゃないかと思います。反日国のプロパガンダに対しては正確な事実をもって反論し誤魔化さないことが重要だと思います。それが結果的に敵国条項に削除に繋がるかもしれません。

「戦犯問題」に関連して、戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議(1953年8月3日)ですが、(旧社会党、共産党を含む)全会一致で可決されているようです。この時日本は既に占領が終っており、日本は主権を回復すしている状態、朝鮮戦争が休戦した(1953年7月27日に休戦協定)直後の時期でした。勿論サンフランシスコ講和条約は既に発効しており、大日本帝国の旧領の処理に関連して一通りの目処がついたという意味で行われたのかもしれません。勿論現行の恩赦制度「恩赦が行なわれたその時から将来に向かって生ずるものであって,過去にさかのぼって,既成の効果を消滅させることはない」(昭和40年版 犯罪白書 第二編/第三章/三/1 恩赦 )と同じく、極東国際軍事裁判を無効化させるものではなく、この決議が行われた時点以降に、名誉回復で国民皆が団結して前に進もうということだったという理解でいいんじゃないかと思います(そういう決議でなければ、中々過去の経緯を無視して総論賛成全会一致出来ないでしょう)(複雑な過去の経緯をもって総論賛成全会一致すべきことに徹底反対している某政党とその仲間達は少なくとも1953年時点より退化しているように見えます)。無効にしたところで死刑になった方々は生き返りませんが、無効になった訳ではないことに注意が必要だと思います。決議の意味は戦犯だから~(差別する)というような話を終わりにしようという意味でしょう。後述しますが、日本は人道に対する罪(C級)の適用はほとんど受けていないようです。サンフランシスコ講和条約ですが、(アメリカとの)単独講和論と(ソ連・中国を含む)全面講和論の対立があって、この時社会党や共産党は(共産主義国との講和を含む)全面講和論を採ったようです。世論は単独講和論多数でした。結局単独講和論でサンフランシスコ講和条約が結ばれ、名誉回復決議は全会一致で可決できたということになります。戦前を生きた議員の方々は社会党や共産党であっても、この時点では愛国心があった(日本のための仕事で合意できた)(筆者は憲法議論自体に反対する国会議員の方々は日本のために仕事が出来ない愛国心がない方々・職業倫理意識もない方々だと思っています)ようにも思えます。

靖国神社のA級戦犯合祀問題ですが、既に赦免されていることに注意が必要だと思います。これは先に指摘しましたが、判決が無効になったという意味ではなく、決議が行われた時点以降、罪を問わないというか追及しないようにしようということだと思います(つまり冷静な戦争の経緯の検証を妨げるものではありません)。国会の議決で(個人の)罪を追及しないことになっているんでしょうから、民間の神社が祀ることに不都合も無いと思います。そもそも日本文化に怨霊信仰があって、(死んだ)「罪人」を祀って神にするところがあります。殺された方はどうなのと思わなくもないですが、生きている人が祟りを恐れるところがあったんでしょう。それはともかく、A級戦犯で死刑になった方々の無念を考えると、日本文化の観点で言えば祀るのは自然だとも言えます(国際的には特に反日国の誤解を招く可能性はありますが、少なくとも理論上は開戦経緯の「罪」を無効化したと解釈する必要はないように思います)。

以前の記事「防衛省慰霊碑地区と靖国神社考」で触れましたが、靖国神社と今上陛下の御親拝の問題に関して言えば、時期的に先帝陛下がまずA級戦犯の合祀について不快感があったような気がします。BC級戦犯の合祀は既に久しく、そこは問題では無かったようです。あるいはA級戦犯の罪を無効化する動きと考えられた可能性はあると思います。そういうふうな歴史解釈が罷り通ると、じゃあ戦争責任は誰にあったのかということに繋がりかねません。先帝陛下は戦争責任は全て自身にあるとマッカーサー元帥に語ったようですが、実際のところは極東軍事裁判で裁かれた訳ではありません。これは筆者は戦前においても天皇の政治の実権はそう大きなものではなく、法的な責任は無いという意味だと理解します。勿論先帝陛下が心にも無いことを言ったと思えず、道義的な責任が自身にあると表明されたのでしょう。民間の神社の歴史観にどうこう言えませんが、受諾した判決を無効化するような歴史観があるとすれば筆者は疑問があります。戦前の日本も国ですから政治の実権は何処かにあったはずです。全て正確な裁判が行われたか疑問があるにせよ(冷静な検証は否定されないにせよ)、法的な責任を全て回避できると思えませんし、そうすべきであるとも思えません。罪は刑の執行をもって償われたと見ることも出来ますし、名誉回復決議も行われています。

注意すべきは靖国神社は戊辰戦争の幕府軍や西南戦争の薩軍を祀ってはいないことだと思います。ですから、「平和の罪」を犯した「罪人」を祀る神社として相応しくないと見ることは出来るのかもしれません(西南戦争はともかく戊辰戦争は反乱軍=侵略軍が勝った訳ですが)。ただ日本という国で見るとA級戦犯は反乱軍ではありません。いろいろな見方はあると思いますし、これ以上この点に触れることはしませんが、先帝陛下に複雑な思いがあって(極東国際軍事裁判の起訴状の提出は1946年4月29日(4月29日は昭和天皇の誕生日)に行われたそうです)、靖国神社御親拝を中止されることにしたのだろうと思います(例大祭の勅使参向と内廷以外の皇族の参拝は行われているとのこと)。

今上陛下も御親拝されていませんが、基本的にはこうした経緯を引き継いでいるのだと思います。ひとつだけ指摘するならば、極東国際軍事裁判のA級戦犯7人の死刑執行日は当時皇太子だった継宮明仁親王(今上天皇)の15歳の誕生日(現天皇誕生日)であったそうです。皇室は法的な責任を問われなかったかもしれませんが、道義的な責任を問われなかった訳ではないのかもしれません。

最後にBC級戦犯に触れますが、日本においては犯罪類型B項の罪「通例の戦争犯罪」に問われた方が多いようです。これは、戦時国際法に違反する罪のことで交戦法規違反です。極東国際軍事裁判における法的根拠は不勉強で分かりませんが、捕虜の虐待を禁じた「ジュネーブ条約」や、非人道的兵器の使用を禁じた「ハーグ陸戦条約」が国際法として存在します。ただ英米は慣習法の国であって、大陸法の国ではないことに注意が必要な可能性もあります。

C項は人道に対する罪でドイツにおいてはホロコーストがこれに当たるようで、A項の罪より目立ったようです。一般に第二次世界大戦の戦争犯罪とはC項の罪が一番言われるような気がしますが、日本はこのC項の罪はあまり問われなかったようです(単純にそうした事実が少なかったと考えられます)。ですから単純に日本とドイツを同一視するのも誤りです。某半島国は徴用や戦時売春婦を人道に対する罪だと主張しているようですが、そんなことは問われませんでしたし(要はその時点でそうした罪に問われるようなことをしたと見做されていません)、今更過去の歴史を現代の視点で見て罪を新設し裁くのような考え方(超遡及法)が通用すると思えません。

唯一の合法的な政府とは(拉致問題と日朝平壌宣言)

2019-02-17 23:36:49 | 外交安全保障
ブルーリボンバッジの.jpg(ウィキペディア 吉田宅浪)

「拉致問題の解決なくして国交正常化はありえない」が日本政府の立場ですが、日朝平壌宣言(首相官邸 2002)では国交正常化の後、経済協力を実施することとなっています。これは「双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した」とありますから、日本政府が北朝鮮に対して信頼関係を認定できなければ(理論上は逆も然りですが、基本的に北朝鮮が日本に経済協力することは出来ません)、国交正常化は出来ないということになりますから、この順番(最後に経済協力)で問題ありません。また、「朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。」とありますから、本来は北朝鮮によるミサイル乱発で北朝鮮との信頼関係が無くなったと言うことも可能です。

それはいいとして、意外な問題が日韓基本条約第3条「韓国は国連総会決議195号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される」にありました。唯一の合法でない非合法の政府と国交正常化するんでしょうか?

国連総会決議第195号(Ⅲ)和訳(アナザービュー)というページがあったので、国連総会決議195条(1948年12月12日)を確認してみましょう。やはり合法的政府(大韓民国政府)だとか、この政府は朝鮮における唯一政府であることを宣言するだとか書かれています。朝鮮の統一を斡旋するとも書かれていますが、普通に読んだら唯一合法の韓国が北朝鮮を吸収する前提です。朝鮮戦争(1950年6月25日 - 1953年7月27日)において韓国に国連軍が加勢したのも、こうした規定に基づくでしょう。ちなみにサンフランシスコ講和条約(1951年)で韓国は参加を拒否されています(日本の一部だったからです。所謂徴用工問題も結局法的には日本国内部の問題で、敗戦の結果独立した韓国と日韓基本条約で完全かつ最終的な解決をしたということになると思います。関連して慰安婦問題は慰安婦合意で最終的かつ不可逆的な解決)。

しかし、韓国・北朝鮮が1991年9月17日に国連に加盟しています。日本にしてみれば北朝鮮は非合法政府になりそうでいいの?ですが、とにかく国連自身が北朝鮮を認めているということになりそうです。

・・・何か理屈がないか考えましたが、国土統一院を新設したのが1969年8月1日。1990年12月27日に統一院に改変しています(更に1998年2月28日に統一部に改変)。一緒に加盟しているし、既に統一しているということか?

英語で韓国がRepublic of Koreaで北朝鮮がDemocratic People's Republic of Koreaですから、どちらも唯一朝鮮の合法政府Republic of Koreaで民主主義人民はお飾りに過ぎないと考えれば、別にどっちでも成り立つということなのかもしれません(国連総会決議195条を英語で確認した訳ではありません)。トンチ問答みたいですが。

この辺が理屈だとしたら、朝鮮と韓国を使い分けている日本(中国も同じ?)はややこしい感じで、国際的な普通の見方よりどっちが合法?が気になってしまうのかもしれません。

1991年の南北基本合意書に「相手方の体制を認定し尊重する」(第1条)との規定はあるようですが、共に大して尊重はしていないようです(特に北朝鮮)。

・・・まぁ国連総会決議に基づく条文は国連の認定でどうとでもなるというか上書きされたいうことで気にしないのが一番いいのかもしれませんね(多分これだ!)。完全かつ最終的に解決されたのは請求権の問題です。

朝鮮戦争休戦協定(1953年)も気になってチェックしましたが、あくまで休戦のための協定なのであって、相手国がどうこうという規定がなく(法的な地位に関して言及がないようで)、日朝平壌宣言に直接的には関係ないようです。ただ、北朝鮮は6回に渡り休戦協定に束縛されないと表明しています。何か気に入らないことがあったのかもしれませんが(というか砲撃とかしてきたような気もしますが)、休戦中ってことにしておかないと、国交正常化のための信頼関係も何もないことは確かだと思います。

INF条約失効関連

2019-02-14 12:12:35 | 外交安全保障
安倍晋三総理(ウィキペディア)(恐れ多いですが使っていいらしい。ただの党員で支持者に過ぎませんが)

2月10日の日曜討論でINF条約失効に関する話題があって、核問題は北朝鮮問題や中国の問題に直結する問題でもあり注目しています。

NATO国防相、INF条約の失効後を協議 ロシアに条約復帰も要請

>「欧州に新たな地上配備型の核ミサイルを配備するつもりはない」と強調。ロシア側との新たな軍備拡大競争を避けるため、あくまで「防衛的」な姿勢で臨むとした。
>INF条約を巡っては、ロシアが条約に違反してミサイル開発を進めてきたとして、米国が1日に条約破棄を表明。ロシア側も対抗して破棄を表明した。8月まで6カ月間の猶予期間中に歩み寄りがなければ失効する。
>NATOは1日、米国の判断を「完全に支持する」との声明を公表した一方で、ロシア側に再考も促している。ストルテンベルグ氏は13日、「まだロシアが戻ってくるチャンスはある。すべてのNATO加盟国はロシアとさらに向き合う用意がある」と述べ、失効回避へ協議を呼び掛けた。ストルテンベルグ氏は15~17日に開くミュンヘン安全保障会議の場で、ロシアのラブロフ外相と会談する予定だ。

INF条約とは中距離核戦力全廃条約で2010年代にロシアが巡航ミサイルの開発を進めたことで、アメリカが条約違反を指摘し米露が対立。この条約に参加していない中国のミサイル開発を懸念してきたアメリカのトランプ大統領が2018年10月20日、本条約を破棄すると表明。2019年2月1日アメリカはロシア連邦に対し条約破棄を通告したと発表し、翌2日からの義務履行停止も同時に表明。ロシア連邦もこれを受けて条約の定める義務履行を2日に停止したという流れのようです。

基本的には軍拡競争は共倒れになりかねず、中国が漁夫の利を得る可能性もあって、米露共にその懸念はあると思いますが、ロシアとしてはずっとアメリカのミサイル防衛計画こそバランスを崩しているという考えのようです(日本に対しても度々その懸念を表明しています)。ロシアの見解を支持する訳ではありませんが、ロシアはアメリカのミサイル防衛を高く評価しており、何もしなければ自身の核武装が無効化されるだろうと予測し、それを突破するには新しい巡航ミサイルを開発するしかないと考えたのではないかと思います。ミサイル防衛は効果が高いものだと思いますが、矛の強化(ロシア、極超音速ミサイルを来年配備へ 迎撃不可能と主張 CNN2018.12.27)で突破できるという考えのようです。



日曜討論でも指摘されていましたが、中国というファクターも考える必要があり、米露中の話し合いを期待する向きもあるようです。米露だけ軍拡競争を防いだところで、中国が軍拡しまくって世界を中国が支配するのようなことになっては適いません。米中貿易戦争もあって中国が弱っているとも言いますが、中国はずっとアメリカをも凌ぐ(少なくとも日欧とは比較にならない)高い成長を続けており、崩壊予測はこれまでのところ、崩壊するする詐欺と化しています(同様の事例に北朝鮮崩壊するする詐欺)(勿論絶対はないですが、予測が外れ続けていることに注意すべきでしょう)(口が悪い「正直者」トランプ大統領が中朝指導者を高く評価しているのは、それがディールに値する相手だと見ているのだと思います)。

中国という国は不透明でどんな隠し事をしているかも分かりませんし、それを指摘したところで(どんなに間違っていても)認めないものは認めない国です。ロシアも不透明ではあるのですが、これまで(近年上述の理由で怪しいものの)核軍縮に成功してきた実績もありますし、実効的な条約を結んで互いに守る気があれば、どうにかなる範囲の問題ではあるのでしょう。

日本も中国の軍拡が進めばロクなことになりませんから、米露もそうですが、米中の話し合いが進むことに期待もあります(枠組みは米露中や米露中欧日等も考えられるかもしれません)。中国の核戦力に一定の透明性が確保され制約が設けられれば、米朝の話し合いに好影響も考えられ、日朝の話し合いの気運が出てくるかもしれません。台湾を巡るニュース「台湾独立」めぐる国民投票の実施、米国は不支持を表明(フォーカス台湾)もこうした動きに関連する可能性もあります。

米露間の話し合いの成功の鍵は筆者としてはミサイル防衛がテーブルに乗るかどうかだと予測しておきます。勿論これも日露交渉と無関係ではありません。ロシアは北方領土交渉に絡んで在日米軍の基地建設の懸念を強く主張してきましたし、オホーツク海に潜むロシア太平洋艦隊所属の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦と国際海峡の問題もあって、ミサイル防衛は日本も参加しています。北海道の発展を考えると、極東ロシアとの関係も重要だと思いますが、こうした国際社会の外交安全保障の大きな流れも関係しているという訳です。

韓国軍による火器管制レーダー照射問題(脱北者というあまり指摘されなかったファクター)

2019-02-03 10:06:50 | 外交安全保障
哨戒機「P-1」(出典:海上自衛隊ホームページ)

本日の坂東忠信氏のツイッターがリツイートで流れてきてようやく気付いたのですが、レーダー照射も近年の北朝鮮船漂流事案も脱北者絡みなのかもしれません。

氏の指摘によると(気になる方はツイッターでご確認ください)、北の船と南の艦は協力的には映らず、工作や瀬取りの可能性は無いと指摘されています。そもそもオンボロの木造船ですし、漁業絡みかとは思っていましたが(ネットでは工作説が多いのですが、北朝鮮が漁業をやらせていることは間違いありません)、漁場(大和堆)から離れている謎はありました。最初、脱北者を捕まえるなら韓国近海だろうと思っていたのですが、後で漁場に行ってから離脱した可能性もあると思いなおしました。

北朝鮮が漁業をやらせているのは間違いないと思いますが、漁業のふりしてそのまま脱北する人が混じっていると考えることが出来ます。脱北がバレると家族が危ないですが、沈没と脱北の区別は脱北先が情報を出さなければ、基本的には区別がつきません。それで近年よく日本に木造船が流れ着くと。漁船主体の紛れで脱北者という訳です。ウィキペディア「脱北者」(2019/1/10)を確認したのですが、「脱北者の私、ブログなら話せた 初めて日本の大学を卒業”朝日新聞 2013年2月9日」というソースがあって、2013年2月時点で200人脱北者が来たと考えられているとか。日本に流れ着いてどう生活するのかが分かり難いですが、政府が保護して情報を得ているんでしょうか。

韓国が脱北者を捕まえているとしたら、やはり北に送還していると考えることは出来ます。どうも日本は北朝鮮に送還していないようですから、韓国が送還しないなら、途中で「救助」する必要がありません。それを日本に見つかりレーダー照射と相成ったのでしょうか。

平時のプロスパイの仕事は立派な船でやはりやるんでしょう。木造船で兵士が送られるとしたらもう即仕事で戦時なのだと思います。つまり日本に流れ着く木造北朝鮮船とは遭難漁船(魚を積んでいるでしょう)か、漁船に紛れた脱北者の船と考えることが出来ます。

以上、2019-01-11 00:03:50記事。

韓国軍による火器管制レーダー照射問題を考察するコメントを追加、改題して再投稿しました(2019-01-19 13:07:23)。

事件があった場所を間違っており、これを訂正するコメントを出すと共に現場を能登半島近海とする誤った情報(コメント)を削除して再投稿します。こうやって公表していますから誤りを特に隠す意図は無く、誤情報の更なる拡散を防ぐためが理由です。間違った原因は休憩時間の短い時間に引用ツイートの分かり易い地図を見て反応したことです(ソースとして記載した引用先ブログはその時に見たものではなく、SNS(ツイッター)に拡散していた誤情報を見て反応し、後から検索して(ツイッターはあまり引っかかりません)地図があったのでよく確認せず引用した次第です)。本当だろうかと頭をよぎりはしたのですが、家に帰って確認してから反応すべきでした。ツイートしてしまったことで何となく事実として自分の中で固定されてしまいました。

この誤りに気付いたのは正論3月号荒木和博氏の記事によります。その他保守系月刊誌にレーダー照射問題に関する識者の記事が記載されており、今回は正論3月号の記事を自分なりに読んでコメントを追加しておきます(WillとかHanadaも面白いと思いますが、今回は時間の問題もあり、正論に限っておきます)。

意外に因縁浅からぬアジアの国ロシア

2019-01-20 14:35:29 | 外交安全保障
北方領土問題ですが、平和条約は第二次大戦後に結んで当然で、特に冷戦終結後も放置されてきたのが問題と言えるだろうと思います。何故結ばないといけないのか?というより何故結ばないのか?です。まぁ、対中で積極的意味も考えられますが。極東ロシアは人口希薄で北方領土に展開するロシアの部隊が日本を占領するリスクはかなり低く、日本とロシアが経済協力を行うことは、日本に大きな危険があるとは言えません。特に東においてはです。中露の協力が無くなる事態は考えにくいですが、これまで(ここまで大きくなるまで)中国と経済協力してきた訳で必ずしもロシアとの経済協力の選択肢を排除する必要も無く、中国の脅威をロシアも感じている部分もあって、北辺西辺で接するのはロシア及びその勢力圏になります。チャンネルがあるに越したことはありません。

これまで戦後日露交渉はずっとあって、それをベースに考えることは重要です。今更積み重ねがゼロなら協議をする意味もありません。北方領土におけるロシア側のメリットに距離が近くこの地域では経済力がある北海道との連携があって、北海道にとっても行き止まりになるより平和条約を結んで大手をふるっての協力した方がいいですから、これがwin-winの関係です。この互いに重要な協力関係を生み出すことが出来るのは日露だけです。ただ、第二次世界大戦中に協力する訳にはいかないというだけの話です。

国後・択捉の開発なら漁業は重要だと思います。北洋漁場はそもそも良い漁場で、根室や釧路といった拠点が日本にあります。ギドロストロイとの競合が残る可能性は否定できませんが、平和条約を結べば、ロシアの領域はロシアに決定権が残ります。その場合、比較的人口稠密な北海道との連携が強まることは、在ロシアの企業にとっても都合がいい訳です。オホーツク海は冬に流氷でいっぱいになりますし、千島は大都市から遠く、例えば北海道の病院の利用なんかも考えられますし、食材の供給も考えられます。鉱山等の資源エネルギーにしても日本企業の選択肢が増えて損はありません。観光も知床世界遺産と(仮にロシア領になるとしても)国後との連携等考えられます。

樺太の開発で言えば、資源エネルギーの他に農業・牧畜の可能性はあると思います。北海道は日本の農業の一大ブランドでノウハウもありますし、気候が厳しいといっても、満州(東北三省)や北欧・カナダの農業だって強いですし、ロシア自身にもノウハウがあります。日本を含むアジアは食料自給率が低い難があって、樺太農業に可能性はあるでしょう。

これは沿海州・極東ロシアも一緒ですし、大陸は特に林業が依然重要です。縄文土器は世界最古級とも言われますが、アムール川下流も相当古いらしく興味深いところです(アムール下流域における土器出現期の研究 (1))。

世界遺産バイカル湖(阪急交通社)の開発はかなりポテンシャルがありそうです。その自然環境は勿論魅力なのですが、どうも黄色人種(新モンゴロイド)が生まれ育った地である気配があります。新モンゴロイドは寒冷地適応を経ていることからシベリアで生まれたと言われますが、シベリアの何処かと言われれば、バイカル湖かなと。そもそもバイカル湖周辺はマンモスと関連して荒屋型彫器を生んだ旧石器時代の中心地とも考えられているようです(北方系の石器・・・ 遥かシベリアにル-ツを持つ石器 加須インターネット博物館)。動物は水を飲まねばならず、大型なら尚更です。マンモスは絶滅していますが、ヘラジカなんかも当然水場を好んでいるようです(ヘラジカ National Geographic >氷が解けると、ヘラジカはよく湖や川、湿地に集まり、水面および水中の水草を食べる。水辺をすみかとしており、巨体にもかかわらず泳ぎが得意で、数キロも泳ぐことができ、約5メートルの深さまで30秒間ほど潜ることができる)。マンモスだったら尚更水を飲む必要はあったはずです。バイカル湖は冬に凍結するようですが、その場合は雪でも食べたのかもしれません。そういう訳でバイカル湖周辺にマンモス(やヘラジカ等)が多かったとすれば、マンモス狩りをする人間も多かったはずで、ここで定着した形質(寒冷地適応)は数が多いことから周辺によく拡散したと考えられます。旧石器時代は先土器時代の狩猟採集社会ですが、大型動物がまだ滅ばず残っていた時期が長いです。人口が集中するところに得てして文化があります。人類は結構長く肉食で育った可能性もあって、少なくとも農業依存はわりに最近の現象だということは、人間を考える時、押さえていいのかもしれません。

バイカル湖周辺にはブリヤート人=モンゴル人が住みます。モンゴル人は相撲でお馴染みですが、典型的な新モンゴロイドです。モンゴル人は現在主にバイカル湖周辺等ロシア、モンゴル、内モンゴル自治区(中国)に分かれて住みますが、内モンゴルのモンゴル人は漢族移民の脅威に晒されているともいいます(既に漢民族が80%以上とも)。これまでの例から、次はモンゴルでその次はロシアといったふうに脅威が拡散していくとも考えられる訳です。ただ、モンゴルという国はソ連の衛星国であり、親中というより親ソ・親露だと思います。中国は明らかに自らを圧迫しますが、ロシアはそうした人口圧による拡張の脅威が事実として少ない訳です。モンゴル人が歴史に登場するのは7世紀であり、大興安嶺山脈の北、アルグン川渓谷に住んでいたという記録があるようですが、必ずしも言語の分布と人種の分布が一致する必要もありませんし、記録が何処まで正確かもわかりませんから、ずっとバイカル湖と関係あった可能性もあると思いますが、それはさておき、とにかくモンゴル高原以北の北方にモンゴル人が住んでいたことは間違いないようです。このようにロシアとモンゴルは深い関係もあるんですよね。モンゴルは親日的とも言いますし、資源も眠っており、シベリア鉄道で搬出することもできるのかもしれません。モンゴル人の宗教はチベット仏教だったりもします。いずれにせよ、周辺諸国は中国の膨張の脅威に晒されているところがあります。

ロシアやロシア圏の遊牧系民族にトルコ系がいて、その一派であるカザフ人はウイグルやキルギスとも話が通じるらしいです(気高きアルタイ山脈に住む誇り高き民族 カザフ民族とバヤンウルギー 風の旅行社)。トルコ系の起源もよく分かりませんが、中央アジアの一大勢力であることは間違いありません。

平和条約を結ぶことで北方領土と北海道の結びつきが強まっていくと考えられる訳ですが、日露が象徴的に関係改善することで、北のアジアとの関係を深め、中国拡張の脅威に対処していくことも可能になってくるんだろうと思います。中央アジアの南にアフガニスタン/パキスタン/イランといったホットな地域も控えてはいる訳です。

ベンガル地方とインド文明、天竺・震旦・本朝の歴史比較、北東州と稲作・西南シルクロードの可能性

2019-01-08 09:02:06 | 外交安全保障
ナーランダの遺跡(ナーランダ大学)※ナーランダー僧院(世界史の窓)>5世紀頃、グプタ朝の王の保護のもとに建てられた仏教の教学を学ぶ学院で、7世紀のヴァルダナ朝でも栄え、唐から訪れた玄奘と義浄もこの学院で学んだ。ガンジス川流域のビハール州南部、マガダ国の古都ラージャグリハに創建され、現在は遺跡が残っている。

バングラデシュ総選挙について(外務報道官談話)(外務省)

>1 昨年12月30日,バングラデシュで第11次総選挙が実施され,翌31日にバングラデシュ選挙管理委員会が開票結果を発表しました。
>2 日本はバングラデシュ総選挙が,関係者の努力により主要野党の参加を得て実施されたことを歓迎します。一方で,政党関係者に多くの死傷者が発生したこと等,この選挙プロセスにおいて発生した様々な点について残念に思います。
>3 日本は,バングラデシュ独立以来の伝統的友好国として,バングラデシュが民主的発展の道のりを歩み続けることを望み,今後も発展と繁栄に向けた取組を引き続き支援し,二国間関係を更に発展させていく考えです。

288議席中、アワミ連盟が259議席。中道左派的で親インド的な政党なのだそうです。残念ながら投票日に12人死亡する混乱があり、選挙プロセスに問題あったとも指摘されるようですが、アワミ連盟(のような政党)に圧倒的な支持があったのもまた事実ではあるんでしょう。

さて、インド大陸のベンガル地方はインドとバングラデシュに分断されていますが、インドの母とも言われるガンジス川下流で、バングラデシュとインドとの連携は極めて重要だと考えられます。インドの歴史原初にガンジス川流域で発展した文明がベンガル湾から東南アジアに向かったのではないかと筆者は想像しています(古代にはサンスクリットが東南アジアで使用されていたようです)。

十六大国の時代(前6~前5世紀)ですが、これが中国で言えば春秋戦国時代(前8~前3世紀)にあたるような気もします。民族系統が違うのは大きな違いですが、恐らくインダス文明と殷周が似たポジションなんでしょうね。ヒンドゥー教の聖典ヴェーダが紀元前1000年頃~紀元前500年頃に成立。インドの二大叙事詩マハーバーラタが前4世紀~4世紀。ラーマーヤナも同じくらいのようです。中国文字文明は殷が起源ですが、埋もれてしまった経緯があって、根本テキストが成立したのは諸子百家が現れた春秋戦国時代及び続く秦漢時代です。インドにおいてはマガダ国が秦にあたるのでしょう。このマガダ国がベンガル地方にありました。そして漢にあたるのが二大叙事詩が完成したグプタ朝なんでしょう(クシャーナ朝は匈奴?)。サンスクリットのインド文明は仏教を通じて日本にも影響を与えていますが、東南アジアの文明化にも寄与しており、興味深いテーマだと思います。

特定地域に広がった民族が互いに相争い統一する過程で文明文化が生まれるところがあるように思います。そして続く最初(か次くらいまで)の統一王朝で結構基礎が固まったりもします。最初のテキストってやはり尊重されるものだと思うんですよね。日本においては、文字こそ無かったのですが、十六大国や春秋戦国にあたる騒乱・統一の時代が弥生時代なんだろうと思っています。日本の場合は特異なことに古墳時代の皇室がそのまま現代に続いています。グプタ朝や漢の王家が現代に残っているようなものなのでしょう。中国の正史の第一「史記」は前漢の司馬遷によって編纂されましたが、周代の記録係である司馬氏の子孫だったようです。日本書記の成立は奈良時代ですが、そう考えると、日本の皇室は漢の王家にあたると共に共に周の役割をも兼ねていたと言えると思います。

また、文字がありませんが、殷にあたるのが北九州の倭国(奴国等)なんだろうと思いますが、文字がないだけでに中国の史書の記述を見るより他なく、詳細は永遠の謎になるのかもしれません。インドの場合は、よく分からなくなっている最初の文明は異民族のインダス文明のようですが、これはメソポタミアの状況(最初の文明が異民族のシュメール文明)に似るように思います。インダス文明はドラヴィダ人説も有力のようですが、インダス文字がドラヴィダ語で解読できないなら、これは誤りの可能性が高いのかもしれません。

縄文時代は重要ですが、殷周以前とかインダス以前ぐらいのイメージで、弥生以前のその文化をテキスト・言語で辿ることはほとんど不可能なんだろうと思いますが、北辺の縄文文化に限って言えば、アイヌ文化として残っているとも言えるのですが、アイヌは日本人と言語系統を異にする先住民です。ここに弥生人=渡来人説が入り込む余地があるんでしょうが、これはおかしな話で、弥生人は普通に日本人であり、縄文時代が単一民族で成立していなかったというだけの話なんだろうと思います。朝鮮人もツングースでなく朝鮮人。ツングース(満州人)は、どうもより北より南下したようです。

話が大きく逸れましたが、ベンガル地方は今に続くインド最初の文明を揺籃した地でもあり、東南アジアへの影響も考えられる重要な地だと思います。インドとの友好路線は重要でしょう。また、ブラマプトラ川はチベットに発し、上流は中印国境の割合ホットな地域です。

第10回日印外相間戦略対話の開催(外務省)

>(5)連結性強化
>河野大臣から,日印双方の自由で開かれたインド太平洋に向けたヴィジョンの実現に向け,第三国やインド北東州での協力の重要性について確認し,特にアクト・イースト・フォーラムを通じた協力の具体化を引き続き行っていくことで一致しました。

インド北東州での協力が挙げられていますが、多雨で少数民族が多い低生産性の稲作地域のようです。アッサムの紅茶は有名。日本も島国で多雨で歴史的に稲作主体でしたから、日本の経験が役に立つかもしれません。

低生産性の農業の生産性を上げることは出来るでしょうが、失業者が出たら問題でしょうね。副業をやるとか、出稼ぎに出るとか考えられますが、後者は言葉・習慣の壁もややあるかもしれません。資金の問題は例えばグラミン銀行が挙げられます。

日本では過去のものとなった近代以前の稲作。品種も多く使い分けもいろいろのようですね。何だかいろいろ細かそうなことに近しいものを感じます。稲作の起源と伝播は日本の歴史においても重要な問題です。稲作文化や儀礼なんかの比較も面白いのかもしれません(インド・アッサム州、ブラマプトラ川氾濫原の稲作 浅田晴久 2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会)。

最後に蛇足ですが、個人的には西南シルクロードが気になっています。「西南シルクロードは密林に消える」の高野秀行氏は反政府ゲリラに関連してインド入国禁止になっていますが、筆者に他意がある訳ではありません。単なる好奇心です。というのも四川の三星堆文明の年代が古く、何故四川で早くに文明が生まれ、そして目立たなくなったのかという疑問があるからです。五尺道(『西南シルクロード紀行』 -第4章)は秦の時代のようですが、蜀の桟道は中国古代史で意外に有名です。何ゆえ蜀で早期の古代文明かサッパリ。後の時代の歴史からは考えられません。創作じゃないんでしょうね。